moto
2025-10-14 19:52:34
1757文字
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たこ焼きボンバーズ

さまささワンドロワンライお題「火をつける」


チーム名決め合宿だと言って左馬刻宅へ押しかけてきた簓は、泊まらせてくれる礼にお好み焼きを作ると張り切っていた。合宿の名の通り夜通しでチーム名を決めるつもりである。
 お好み焼きは店でしか食べたことのない合歓は、手作りのお好み焼きに興味津々で、簓に付きっきりである。晩飯は簓にまかせて、ベランダで一服していると、お兄ちゃん!ホットプレートってどこにしまったっけ!?と合歓に早々に呼び戻された。
「簓さん、ホットプレートでお好み焼き焼くんだって」
 合歓の目はきらきらと輝いていた。
 ホットプレートを使ったのは遥か昔のことである。確か、合歓と二人で焼肉をした。それっきりしまいこまれていたホットプレートが、まさかお好み焼きで日の目を見ることになるとは。
「おっ、ええやん。ギリ三枚焼けるな」
 ホットプレートから直に熱々のお好み焼きが食べられるというわけだ。
 まな板の上には粗めにざく切りにされたひと玉分のキャベツが山盛りになっている。簓は、ボウルに目分量で入れた薄力粉に、水に顆粒だしを溶かした出し汁を加える。こちらも目分量だったので、左馬刻は思わず口を出してしまった。
「おい、計らねえのかよ」
「うん、大丈夫やで」
 はっきりとした返事に、左馬刻は黙ってしまう。簓は、左馬刻に山芋のすりおろしを頼み、その後もお玉で生地を混ぜながら、粉と出汁を調整する。ようやく満足行く出来になったのか、左馬刻ににかりと笑いかけて、卵を三つ、すりおろした山芋、キャベツを生地に混ぜ込んだ。
「ホットプレートあったまりました!」
「おっけー!ほんなら焼いていくで〜」
 三枚分の生地はプレートの中でくっつくほど大きい。豚バラ肉を乗せて塩コショウを振りかける。いったん蓋をしてホットプレートの熱を弱火にしてじっくりと焼いていく。その間にソースやマヨネーズ、鰹節に青のりを準備する。小皿と箸を持ったまま、誰がどこに座るかと合歓と簓は賑やかに相談している。二人の笑い声を聞きながら、左馬刻は洗い物を済ませている。お兄ちゃんありがとう!二人が声を揃える。テメェの兄貴になった覚えはねえ、と蹴りを入れようとしたが、ひらりとかわされ、簓はホットプレートの蓋をあけた。たっぷりの湯気が収まると、一大イベントのように、簓は仰々しく二つのヘラを構えた。限られたスペースでお好み焼きをひっくり返す手際は素晴らしいものだった。合歓は歓声を上げて拍手をする。
 出来上がったお好み焼きに、三人それぞれ好きなようにソースとマヨネーズをかける。ソースが焼ける匂いが空腹を余計に刺激する。青のりと鰹節も順番に回してかけおわると、揃って、いただきます、と手を合わせた。ホットプレートから直接食べるお好み焼きは熱々で美味かった。簓はちょっと柔らかかったかなあと笑っているが、とろとろとした生地がソースと合わさって、それが美味いと左馬刻は思ったので、ちょうどいーんじゃねえの、と呟くと、簓は照れたように頬を赤くし、ひひひと笑った。よくこんな柔らかい生地を崩さずにひっくり返したものだと感心しながら食べ続ける。
「ホットプレートで食べるとさらに美味しいですね!」
 ほっぺたが落ちそう、と合歓は頬を押さえている。
「な!たこ焼き器も付いとったし、今度はタコパしよか」
「えー!簓さんたこ焼きも焼けるんですか!」
「もちろんやで!学生の頃からたこ焼き焼く時はひっぱりだこやったなぁ」
「たこつながりですか?おもしろい!」
 先回りをしてけらけらと笑う合歓に、え、あ、そうやな!たこだけに!ひっぱりだこ!と簓も笑う。
「家でたこ焼きも食べられるなんてすごいねえ、お兄ちゃん」
「左馬刻も合歓ちゃんもみんなで焼こや」
「わ!楽しそう!」
 三人で賑やかにたこ焼きを焼く光景が、左馬刻には簡単に想像できた。笑い声が絶えず響いている。
「楽しいなあ。なんや燃えてきたわ〜」
 火照った身体を冷やすように簓は冷たいビールをあおり、あ!と声を上げた。
「チーム名思いついた!」
「んだよ」
「なんですか?」
 期待に満ちたまなざしを受けて、簓は堂々と缶ビールを掲げた。
「たこ焼きボンバーズ!」
「ぜってーヤメロ」
「あっははは!」
 チーム名決め合宿の夜は長そうである。