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のたり
2025-10-14 12:43:10
1727文字
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hrsz
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世界を漂う
付き合ってるはるしず。
学校からLUMINA FORUMの合宿所に戻ったら、遥ちゃんが顔を横に向けてベッドにうつ伏せになっていた。
「
……
」
そっと近づいて顔を覗きこんでみる。眠っているみたい。そういえばお昼寝は時々するって言っていた。
鞄をベッド脇に置いて、できるだけゆっくりベッドを揺らさないように腰掛ける。あどけない寝顔につい顔が緩む。普段は年下だなんてあまり感じられないけれど、ふとした時こんなふうに可愛いと思う瞬間がある。
「
……
遥ちゃん」
遥ちゃんにさえ聞こえないような声で囁いてみる。聞いてくれなくていい。ただ、口にしたいだけ。
「
……
好きよ、遥ちゃん」
遥ちゃんの寝息に合わせるようにそっと髪を撫でる。サラサラな髪の感触が心地いい。起こさないうちに手を離して、胸に溜まった息を静かに吐き出す。
LUMINAタイムもなさそうだし、愛莉ちゃんとみのりちゃんが来るまで本でも読んでいよう。鞄から読みかけの本を出して、膝の上に置く。本を開いて数ページ進んだところで、遥ちゃんが寝返りを打った。起きたのかしら、とページを捲る手を止めて様子を伺っていたら、こつんと頭が私のお尻にぶつかった。
「
……
ん
……
」
もぞもぞと動きながら私のお腹に腕を回して、落ち着く場所を見つけたようにそのままぴくりとも動かなくなった。
「
……
」
まだ眠っているみたい。顔が見えなくなっちゃったのは少し残念だけれど、それ以上にお尻に伝わるいつもより高めの体温や回された腕の重みに嬉しくなる。ちゃんと私だってわかっていてくれるのかしら。遥ちゃんの手の甲に手を重ねて、読書を再開した。
とても静かで、まるで前にみんなで学校で刺繍をしていたときのよう。人の声は遠く、遥ちゃんの寝息とページを捲る音が身体を通して響く。
しばらくして、本の世界から現実へと私を引き戻したのはノックの音だった。それは夢の世界にいた遥ちゃんも同じだったようで、ん、と小さく呟いて、私の身体に頭を擦り付けてきた。
「
……
雫
……
」
「入るわよ〜」
遥ちゃんの寝ぼけた声と愛莉ちゃんの元気な声が重なる。遥ちゃんがぱちっと目を開けたと思ったら、がばっと起き上がった。
「
……
っ」
「あら、遥、寝てたの?」
ふふっと愛莉ちゃんが笑う。
「悪いわね、起こしちゃって」
「
……
別に、いいよ」
恥ずかしそうな少し拗ねた顔につい笑みが漏れる。
「おはよう、遥ちゃん。よく眠れた?」
「
……
うん。おはよう、雫」
こくりと頷いたあと、遥ちゃんはどこか照れくさそうに微笑んだ。
「みのりは?」
「まだ来てないわ」
「そう。じゃあミーティングはみのりが戻ってきてからね」
先にシャワーを浴びてくると言った愛莉ちゃんを見送って、読書を始めようとしたら、とん、と遥ちゃんが私の肩に顎を乗せてきた。
「遥ちゃん、もう少しお昼寝する?」
ふるふると首を振る。そして私のお腹に腕を回して、立てた膝で私を挟み込んだ。
甘えてくれるのかしら、と心が少し躍る。
「
……
ありがとう、雫」
「何もしていないわ、私」
「雫の夢を見てた」
「え?」
「雫が頭を撫でてくれて、隣にずっといてくれる夢」
「
……
それは、夢じゃないんじゃないかしら」
「ううん、夢だったよ。だって海の中で寝てたから」
「海の中?」
「うん。キラキラして透明な海の中で、ふたりで漂いながら眠ってた」
「それはたしかに現実ではないわね。気持ちよかった?」
「うん。すごく」
遥ちゃんが私のお腹の前で組んでいた手を解いて、私を抱きしめる。私は遥ちゃんの膝に手を置いた。
「本の続き、読んでていいよ」
「そう?」
「うん」
「よかったら読みましょうか?」
「え? 朗読?」
「ええ。発声の練習になるかもしれないしーー
……
」
きょとんとした遥ちゃんがふふっと笑う。
「じゃあお願いしようかな」
「ええ! せっかくだから最初から読むわね!」
「え?」
「短編集だから、私が読んでいた話からにするわ」
「そっか。ありがとう、雫」
遥ちゃんが頬を私の髪に摺り寄せる。私とふたりきりの時にだけ見せてくれる笑顔に胸の奥が暖かくなる。
ーーもう少し。ふたりが戻ってくるまで、私達だけの世界に漂っていましょう、遥ちゃん。
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