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幸希(ユキ)
2025-10-13 13:42:14
3390文字
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君と数えるこれからの
私と彼の一生涯の約束。それ以上でも以下でもない。永久に繰り返してでも守りたい唯一絶対の約束。
幾度時を巡っても、私はきっと君を愛してる。魂ごとあげるから、だからどうか、次の世でも私を想って。
1
2
3
「主。」
「ん?入っていいよ。」
軽い音を立てて障子戸が開き、むっちゃんが入ってきた。
「もう寝るところやったか?」
「んーん、少しだけ夜更かしするつもり。」
「また身体壊すき、ほどほどにの。」
「寝れないんだよね。変に目が冴えちゃってさ。本読んでたら眠くなるかと思ったけど全然だし。」
「コーヒーでも飲んだかえ。」
「
……
飲んだわさっき。」
「それのせいじゃな。」
やれやれと呆れた仕草をするむっちゃん。
ふと、それまで浮かべていた穏やかな顔が真剣な表情へと変わった。
「主。」
「ん?」
「話がある。」
「
……
なあに。」
正面に座るむっちゃん。
「この間の話の事じゃ。」
「うん。」
「わしなりに考えた。石切丸にも話を聞いてきた。」
「おじじ達のところへ行ってた時だね。」
「戸惑いがあったのは事実じゃ。すぐには飲み込みきれんかった。」
ゆらりとむっちゃんの瞳がぶれる。
「嬉しい気持ちの中で、おまさんを永劫縛ってしまいかねん事への嫌悪や、そがな事が可能なんかと疑う思い、おまさんに何ぞ影響が出たりせんかと心配な気持ち。そういうのが全部入り乱れた。」
ハッ、と自嘲気味に息を吐く。
「けんどのう、」
下がっていた視線が戻り、お互いに目が合う。
「どればあ言い訳や理由付けをして目を反らしてみたところで、結局のところわしもおまさんが欲しい。わしだけのものになってくれたらと数えきれんほど思うた。欲しゅうて欲しゅうて、けんどおまさんの笑顔を曇らせとうなくて、せめて傍におる事だけは譲れんとやってきた。そがな時におまさんからあがな事言われて、戸惑いと、心配と、嬉しいと、それと同じくらい
………
」
声が途切れる。躊躇われるのか何度も口が開いてはつぐまれる。
「いいよ。言って。」
「じゃが
…
」
「遠慮しあって片方が我慢するのは嫌って言った。」
「
……
おぞましい言い方をするかもしれんぞ。」
「でもそれがむっちゃんの本心なんでしょ。聞きたいよ。どんな形だとしても。」
瞬間痛いほど抱き込まれる。
「
……
その魂がようようわしのもんになったと、好きにしてもえいようになったと思うた。おまさんから言い出した事じゃ。わしが了承1つ出せばおまさんの魂は永劫わしのもん。2度と離してやる事も輪廻に返す事もせんでいい。好きに嬲ったところでおまさんはもうどこへも行けん。どこにも還れん。わしの腕の中で愛されるしかない。過ぎるほどの執着で溺れさせちゃろう。
………
そがな事をわしは思うて、心の底から歓喜に湧いた。」
「っ
……
」
あばらがミシリと鳴るのを聞いた。
「
……
ほんでもの、」
腕の力が緩んで解放される。
「おまさんを泣かせとうはないんじゃ。」
壊れ物に触れるように、むっちゃんの手が優しく頬に触れる。
「おまさんの笑った顔が好きじゃ。気に入ったものを見て嬉しそうにしゆうところを見るのが好きじゃ。知らんかった事を知って楽しそうにするおまさんが可愛くてならん。自由に世界を見て、それをわしにも共有しようとするおまさんを、わしはこれからも見ていたい。おまさんが差し出す心を大事にしたい。それは縛ってしもうたら叶わん願いになる。」
だんだん泣きそうな顔になってくるむっちゃん。
(泣かないで。)
同じように頬に手を伸ばしたら、上から包むような形で手が重ねられた。
「主、わしはどうにもならんほどの強欲じゃ。おまさんの全部が欲しい。おまさんにまつわる何もかもを、おまさんと関わる全てが。こがな思いを抱えるわしを、それでもおまさんは選ぶかえ。」
「選ぶよ。」
間髪を容れず返せば大きく見開かれる目。
「てゆーか、その手の話散々してるけど、毎度私『むっちゃんがいい』って言ってるよね?」
「けんどおまさんはわしの欲が怖い言いゆうろう!」
「怖いのは事実だよ。でも受け入れないとはただの1度も言ってないよ。
……
受け止めきれるか分かんないとは言ってるけど。」
締まりの悪さがいたたまれなくて視線をそらす。そうなんだよ、受け入れないとは言ってないけど、受け止めきれるか分かんないは散々言ってるんだよねぇ
…
。言葉のニュアンスの違いではあるけど、まぁむっちゃんが気にしたのは分からないでもない。そこは分かりにくい言い方してごめん。
「欲向けられる事に慣れてないから、正直そういうのはやっぱり怖いの気持ちが先に来るよ。でもそれを理由にしてむっちゃんと離れたいとか1度も思った事ないし、むっちゃんからその
……
なに?『欲しい』の気持ちを向けられるのは嫌じゃないしむしろ嬉しいっていうかなんていうか
…
。」
もごもご言い訳めいた事を言っていたら、むっちゃんから声がかかる。
「ほんまにえいなが?」
「
…
いーよ。」
「後悔せんかえ。」
「そもそも言い出しっぺ私なんだけど。むっちゃんこそこんな取るに足らないはずの小娘の要求聞いて後悔しない?私言質取ったら本気にするから嫉妬とかヤバくなると思うんだけど。」
「
……
はは、そうじゃったな。言い出したがは主じゃったな。」
私が怖じ気づいた時のために逃げ道を用意しようとするのはむっちゃんの優しさだ。それは分かってる。でもこっちだって生半可な気持ちで『式を挙げたい』って言い出した訳じゃない。それなのに勝手にむっちゃんの責任にしないでほしい。
「のう、主。」
「うん。」
「誓約のために今世では無理でも、来世確実におまさんと2人生きられるがやったら、わしはそうしたい。それが叶えられる方法があるっちゅうんなら、手を伸ばさんがは道理にならん。やき、」
琥珀がひたと私を見据えた。
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