つ旦
Public
 

ンズレリ🕯❤️‍🩹

視点がコロコロ入れ替わります。読みづらいです。

……チッ」

月の狩人、レリルはナド・クライの何処かにある洞窟の中で悪態をつきながら、途方に暮れていた。
あの大砲で全盛期の力を取り戻そうとしたものの、妨害をされ、完全にはなれず、更には西風騎士団団長とかいうやつまで呼んでレリルを尾行していたから、ソイツを巻いてここまで来たのは良いのだが、これからをどうするべきか悩んでいたのだ。

あのフェイと金髪の旅人に妨害されなければ、今頃完全になれていたというのに。腹立たしくて仕方がないとレリルは心底思っていた。

金髪の旅人に関しては、月を手に入れるため利用しながらも精神をへし折ってやろうかと思ったが、むしろ喪失を背負って強く磨かれていく一方で厄介だ。
今手出しは出来ないだろう。
フェイに関しては、攻撃し合いながらも俺のものを渡せと何度も言っていたのに終いには『今日から永遠に僕のものだ』と? 笑わせてくれる。
俺の身体の一部なのだから俺のものだろう。アイツが抵抗しなければ俺の心臓が浄化されることも無く、完全になれた。全てアイツが元凶とも言える。
そうだ、アイツが邪魔をしなければ俺は全盛期に戻れた。
影では上手くいかなかったが、今の俺の力でもアイツには勝てるだろう。先ほどの戦闘で消耗もしているはず。
そして浄化されたとはいえ俺の心臓なのだからあのままランプの中に入れているのであればあのフェイの居場所も本当に微かだがわかる。
あればクーヴァキとアビスの混じったものだから微弱な差だがわかりやすい。
しかも雪国の妖精ともなれば長生きだ。ソリンディスの行方も脅せば出てくる可能性もある。
であれば、今の内に全ての元凶を叩きに行きわからせるべきだ。

「フッ、フフ、フハハハハ……ッ!」

さらに、あのフェイの顔が歪む様を見れると思うと想像し笑いが止まらない。
思い立ったが吉日、そう思いレリルは行動する事にした。



――――



身を潜め道中力を蓄えながらも、フリンズがいると思われる夜明かしの灯台の元へとレリルはやってきていた。
どれだけ距離が近付いても心臓の欠片の反応は微弱なままでしか感知ができない。もう手に入れたとて力には一切ならないものだ。だがレリルは心臓が目的でやってきたわけではない。
あのフェイ――ライトキーパーのフリンズへと復讐にやって来たのだ。
だからこそレリルは身辺調査をし最初こそ良くここに来るというイルーガに扮して行ってやろうかとも考えたが、人に扮すのは時間がかかるためやめた。
影に紛れフリンズの居ると思われる所へと歩を進めていく。

そこは階段を降りた先の地下資料室のような場所だった。
あまり生活に頓着はしていないようで、所々埃や出しっぱなしの本、新聞などがある。フェイにはベットや風呂すらも必要ないのかと乾いた笑いがレリルから出た。
石造りの構造だけで、似ても似つかないはずのカーンルイアを思い出させるが、今となってはどうでもいいものだ。
そんな室内の、机の近くにポツンとランプが浮いている。
フリンズがいつも身に付けているランプであり、レリルの欠片が入っているものである。ランプ内から反応が微かにするため、ずっと入れているようだった。
効力が無くなったとはいえ、コイツは未だに持ち歩いているのかとレリルは呆れた目線を向けた。お陰で位置特定はしやすくて助かったが。
ランプの持ち主である当の本人はと辺りを見渡してみるが気配はない。
レリルはライトキーパーにとって一番大事なはずのランプをあのフェイが無防備に置いて行くなんてあるはずがないと頭の片隅で警戒するが、ほとんど効力がなくなったとはいえ自分の心臓が目の前にある事実とフリンズへの憎しみに、感情を支配され行動に移すのを止められなかった。

それは俺のものだ。返せ……

感情のままにランプへとレリルは手を伸ばす。
そうしてランプを破壊し、フリンズの復讐も果たし、更には心臓を手に入れる。はずだった。

「よく、警戒心もなく敵の陣地の中に来れましたね。力で解決出来ると思っていたからでしょうか」

レリルの腕はランプへと届く前に、突如として力が抜け、瞬く間に両腕を頭の上で拘束され、足は下手に動かないように少し開かれた状態で、不思議な青紫色の光る鎖に宙吊りで拘束されていた。
状況を理解する間もなく目の前で聞こえた声に、思考を奪われる。

「フェイ……!」
「やはりこの欠片が目的なのですか? 今はもう意味の無いものではそれとも、僕に用があったのですか? ああ、それと僕はキリル・チュードミロヴィッチ・フリンズという名がありますから、そう種族名呼ばないでください」

フリンズは机の上に座りながら脚を組み、先程まで宙に浮いていたランプを片手で持ち、炎越しにレリルのことを眺めている。

正確には炎の中にあるレリルの心臓を、だが。

この狩人が何の目的でわざわざフリンズの元をやってきたのか真意を測ろうとしているのだ。わざわざ休んでいるところを襲ってきたため、多少脅威のある戦力を潰すためにきたのだろうとフリンズは推測を立てるが、ランプの中にある欠片に手を伸ばしていたため、まだ確定は出来ない。

だから、この厄介なお客人が拘束できているうちに聞き出せるだけ聞き出すことにしましょう。聞き出せなかったとしても僕からの"おもてなし"はしてあげましょうか。

とフリンズはマイペースに思っていた。
一方レリルは、ランプの炎越しにこちらを見上げる、ふてぶてしいフリンズの顔に苛立ちを隠せるはずもなかった。

ランプは囮だったか、しくじった。

そう思ってからすぐに状況を理解しようと脳を働かせる。

ランプへと手を伸ばそうとして突如として力が抜け、膝をついたと同時に瞬く間に拘束をされ、宙吊りの状態にされた。そうしてランプから炎と影と共に現れ、俺に声を掛けたのが目の前のフェイ。
クソ、ランプの中にいたのか。チュードミロヴィッチランプのフェイそうか、こいつがか。

レリルは事実を理解し、この一瞬の出来事を避けれないほど自分は鈍ったのかと歯を噛み締めるが、すぐに拘束を解き目の前のフリンズを殺してやると行動を移そうとするが、一向に解ける気配がない。 上半身をくねらせるしか出来ず、全盛期の十分の一だとしても、ナド・クライを焦土にできるくらいの力が戻ったはずのレリルが、この拘束を解けないのが難点だった。

「ッ、この拘束を解け!」
「おや、僕の言葉に一切応えてくれないのですね」
「チッ、アビスの力でも光界力でもないのか……!」

アビスや元素、クーヴァキの元となる光界力を使い対抗してみるが一切反応しないどころかむしろ抑え込まれるだけとなった。
となると、フリンズの種族、フェイ由来の力だとレリルは瞬時に理解した。だとしてもテイワットの生物である以上光界力が絡むはずだ、とフリンズを目で睨み付け、説明をしろと圧をかける。
レリルの睨みは普通の人間からすれば拘束されていても怖いはずだが、相手はフェイでありライトキーパーのフリンズ。レリルの訴えを特に気にした様子もなく、笑顔で紳士的に言葉を紡いでいく。

「僕の質問に答えてくださってから、お教えしましょう」
「誰が」
「月の狩人さん。今、僕の方が優位なのはお分かりでしょう? お答えしていただいた方が身のためですよ」

罠にかかった凶暴な狼をなだめて極めて穏便に質問しようとしているだけなのだが、目の前の男はなだめられるのはお好きじゃないらしい。
ならば力の上下を教えた方が聞いてくれるのかと思ったのだが、

……
……
……沈黙を選ぶのですね」

話してはくれないらしい。
困りましたね。とフリンズは内心苛立ちを覚えていた。
レリルの言う通り、レリルを拘束しているのはアビスの力でもない、光界力でもない、フェイの力である。本来必要の無い力ではあるが、ごく稀に動物達が入ってきてしまったり、もしも古銭目当ての物取りが来たの時の術をフリンズは部屋にかけておいたのだ。

まあ、月の狩人が引っかかるとは思いませんでしたがねえ。狼のようだと思っていましたが、猫のようにも思えてきてしまいました。

これでもフリンズは敵に、実力者に対して紳士的に対応しているつもりなのだ。
スーシ隊長の件だけでもフリンズにガソリンを撒き、火を燃え盛らせるのでも十分であったのに、ライトキーパーの宿敵でもあるワイルドハントを従えているなんて。
手加減をせずとも良い怪物が、こんなに好都合でいることがあるのだろうか、と。そうは思うが、情報を聞き出す方が最優先だ。
フェイの力を使った拘束術だって永遠に続く訳もなく、しかも相手は月の狩人と来た。いつ破られるか、たまったもんじゃなかった。
ふむ、どうすればレリルは質問に答えてくれるのかとフリンズは考え込もうとしたとき、片手に持ったままのランプの中にあるレリルの心臓が目に入った。
何故フリンズの居場所がわかったのか、一番の答えになりそうなものが目の前にある。そう思い立ったとき、フリンズはランプの蓋を開け欠片を取り出してみることにした。欠片は普段より一層、禍々しく赤紫色に輝いているが、それが美しい。

効力がなくなっても、近くに月の狩人がいる影響でしょうか。

フリンズは大切な宝物を扱うように、欠片を撫でる。

「ヒッ!?」
「?」
……!? ッ……!??」
……おや」

思わぬ刺激だったのか、悲鳴がフリンズの目の前から聞こえてきたため、思わずレリルの顔を凝視する。
レリルも突然の不思議な感覚、刺激に驚いてビクンと身体を跳ねさせたあと身体を固まらせ、フリンズの顔を見た後、手元を凝視する事になった。
フリンズがレリルの欠片を撫でたあと、全身の神経がむき出しにされたかのような鋭い刺激に襲われたのだ。快楽というには刺激が強く、フリンズの力の主である感電を受けたと言った方が良い。

なんだ、今の刺激は。今までこんなことには。コイツの位置を探知するために欠片に意識を注いでいたからなのか。だとしても感覚が繋がるなんて。

とレリルは混乱したまま、纏まらない思考の中で考え込んでいた。拘束されている状態だということを忘れて。
レリルよりも状況を理解するのが早かったフリンズは、直感的に好都合だ。と思い至った。レリルは痛みや苦しみに耐え続けて力や肉体を取り戻している。そんな相手に通常の、情報を吐かせる拷問は効かないだろう。

であれば、快楽ならどうだろうか。

悪い考えとも言える思考がフリンズ内で出てきたとき、レリルの痴態がみたいわけではなかったが"美しいコレクションの美しいところは見たい"と欲が出るままに行動することにした。
この妖精、そこらの人間よりも人間らしいのだ。
まず、先程よりも優しく、人差し指で欠片に触れ、なぞる様に触れてみる。

「ッ!? ふッ……! ふ、ぅ〜〜〜……ッ」
「答える気になりましたか?」
「ァ、く、だ、れがお前に、言う、かぁ……ッ!」

そうするとレリルは身体をピクピクと跳ねさせ、肌を赤に染め上げもどかしそうに腰をねじる。快楽から耐えるように瞳を閉じて、長いまつ毛を震わせる。
黒い包帯のせいで見えないが声を我慢するために唇を噛んでいるらしい。
快楽から耐えようと身体を捻り、肌を赤に染め上げるのと同時に欠片も淡く光る。まるでたまらないと言わんばかりに。
美しい。欠片は美しいが、声を我慢しようとしているレリルをみるのは正直気分が良くない。
なぜこうもレリルを目の前にして感情が急勾配するのか。フリンズはその感情の言葉を知っていたが、目の前の怪物を見て認めたくはなかった。

……そうですか。であればまだ続きそうですね」
「ぅ゛、クソッ! やめ、ぇッ!? 〜〜〜〜っっ゛……!!?」

フリンズの続行の言葉とともに電気のビリッ、ビリビリッ――という音が地下室に鳴り響く。
そうしてレリルの身体が電撃に打たれたかのように、先程閉じていた眼を見開き身体を跳ねさせる。
実際、欠片に向かって雷元素をフリンズが使ったのだ。レリルは内側から感じるショックに耐えられる訳もなく腰を逸らす。
この電撃が痛みを発するならレリルもこうはなっていない。先にじわじわと快感を感じる神経を引き摺り出されていたせいなのか、痛みを感じることなく、むしろ絶頂に近い快楽を得てしまったのだ。

――ああ、きもち、いい……

ぼんやりとした思考の中で思う。こんな快楽は何年、何十年、何百年ぶりなのだと。
快楽に浸っていると拘束されていた四肢が外れた。ただまだ力が抜けた状態なため、俗に言う女の子座りの状態で座り込む形になった。

…………
……んァ…………??」
……ああ、絶頂したのですね。濡れています」
「はっ? ……ハ?」

久しぶりに感じた快楽の余韻にレリルは浸っていると、フリンズの一言で現実に戻ってくる。言われたことを理解するために脳の中で言葉を何重にも繰り返す。
その間も、フリンズからの目線がずっと下半身に受けているため、嫌でも見ることになった。
陰茎があるところが膨らみ、そこからジワジワと濡れ広がるようにシミが広がっていっている。そしてレリルが少しでも身体を動かすとグチョリ、と下半身から音がする。
そうすれば嫌でも理解するしかなかった。

レリルはフリンズの手によって、今の状態になってから初めての、絶頂を迎えたのだと。

脳は理解しても、認めたくは無かった。

認める訳には行かなかった。

目の前のフェイによって、俺が、俺がイッたのか?
そんなはずはない。そんなはずは。俺は全ての元凶であるコイツを叩きに来たはずだ。コイツの歪む顔を見に来たはずなのに、なんだこの仕打ちは。
俺の力はコイツよりも強いはず。なのに何故抵抗出来ない。とっくに拘束は解けているというのに。
快楽に惑わされるな。
この、フリンズとか言うフェイのせいで身体の誤認識が起きているにすぎない。
そうだ、フェイの力で起きていることなのだろう。
だから、仕方ないとはいえ敵にこんな情けない姿を晒すなんて恥どころで済む話ではない。失態だ。
全て目の前のフェイのせいだ。コイツが俺の心臓を返さないせいでこうなってるんだ。
早く俺の心臓の欠片を返せ……

元々は敵の陣地にノコノコやってきたレリルが悪いのだが羞恥心と混乱、絶頂後なことも相まって、レリルは全てフリンズのせいにすることにした。
拘束は解けたが、ろくに動けずに座り込みながらフリンズを見上げ睨み付ける。今のレリルが出来る唯一の抵抗だった。

「クソッ! お前のせいだろう……!」
……ッ、ええ、そうですね。あなたが自ら達した事実は変わりませんが、そうなるように促したのは僕ですから」
「黙れ! そのやかましい口を閉じろ!!」

レリルの睨みを受け、フリンズは息を飲み僅かに眼を見開くがすぐに表情を取り繕う。レリルはフリンズの言葉に怒り変化に気付いていないようだ。
――狼のように吠えるレリルを置いてフリンズは口元を手で抑え思考に耽る。
普段はフリンズよりも身長が高いはずなのに、今はろくに動けず見上げることしかできないまま、宝石のような涙を目の端に溜め、フリンズのことをレリルは睨みつけてきた。しかも熟した果実のように赤く、美味しそうな顔のままときた。
旅人とパイモンから、あの五大罪人であり月の狩人と言われる人物が、だ。今は小動物のように捕食者を見上げるしかできないというのに。
フリンズは所有欲に収まらない感情を、無意識のうちに認めていた。

――ああ、ナド・クライを脅かすただの怪物でしかないというのに、なんと美しく、愛らしい。
やはり貴方は僕のものだ。
他の誰の手にも渡すわけにはいかない。
もっと宝石のように美しい涙を見せてほしい。
もっと食べ頃の果実のような姿を見せてほしい。
もっと欠片ではない愛らしい貴方を見せてほしい。

ここに第三者がいれば歪んだ愛だ。と叫んだかもしれないが、今ここにいる当事者達には知らない、かわからないことだ。
一方レリルは、いくら文句を言っても減らず口を叩いてきていたフリンズが、一切口を開かない状況に、居心地の悪さを覚え始めた頃だった。
何か考え込んでいるようなのだが、レリルを射抜くような目線はそのままなのだ。妖精と言うよりどこかの獣だと言われた方が信じる。
快楽の余韻が抜けて拘束も溶けた今、フリンズを襲うには絶好のチャンスだとレリルは思う。

アビスの力を解放しようとしたレリルはふと、おかしなことに気が付く。復活した直後の力よりも更に力が増幅している。
ここに来るまで変わりなかったアビスの力が、クーヴァキを取り込んだときのように更に力強くなっている。

――フェイの力も、盗めばアビスの力になる。

そのことに気付いたレリルは思わず笑みを浮かべる。

お前が力を使えば使うほど、俺が有利になることを知らないのだろう。わかるはずもあるまい。
随分と小賢しい真似をしてくれたな、フェイよ!今すぐお前の息の根を止めてやろう!

レリルは立ち上がろうと膝をつき、自身の影からアビスで作られた手を使い、フリンズへと攻撃を仕掛けようと、した。

「ぅ゛、〜〜〜〜゛〜゛!?!!?」

だがその攻撃は眩い光と刺激に脆くも崩れ去ることになる。
立ち上がろうと体に力を入れたレリルと同時にバチバチバチッ――という音が目の前からした。
レリルの身体に雷を直接撃たれたかなような快楽の信号が落ちる。目の前が真っ白な光に包まれ、体の力が抜け膝をついた体制から仰向けに崩れ落ちる。
そのまま陸に打ち上げられた魚のようにビクビクと体を跳ねさせるしか出来ない。

「反抗期のようですね。大人しくしてほしいんですが」
「はっぐ、だ、まれ……! 大人しく殺られれば良いものを……!!」
「そっくりそのままお返します」
「なにを、ぅ゛!? ぐ、ぁ゛ッかは、ッ〜〜〜゛!!」

無駄口を叩くなと言わんばかりにフリンズは火力を回数毎に高めていく。自身の身体には一切触れられていないのに内側から根本的に変えられていくような、燃え広がるような感覚を感じながらレリルは堪らずフリンズを睨み上げる。
レリルからすれば仰向けに倒れたまま睨むと見下ろされている状態で良い気はしないが、フリンズからしたら絶景だ。

力なく仰向けのままフリンズを見上げ、顔を真っ赤にしながら涙目で睨みつけてくる様はとても弱々しい。
そのまま欠片に対して雷元素を使うと美しくも面白いくらいに欠片が発光し、レリルも身体を沢山跳ねらせる。レリルは刺激が強すぎて気付いていないようだが、電撃を食らう度に気持ちよくなろうと腰を床に押し付けて揺らし、絶頂しようとしている。

何度もフリンズの手で絶頂させられているのに、自分の手で(床の力を借りてではあるが)絶頂しようとしている。

「は、ひっ、ひ……やめ、ぎゅ!? う゛ぁ゛ッ !!」
……面白くないですね」
「ぅ? ……はっ? ぁ゛! あ、ぁ? ぁ、ぁ、っぁ゛〜〜〜……??」

絶頂直後のレリルの耳には届かなかったようだが、確かにフリンズの口から、思わず漏れてしまった本心。面白くない。
妖精は嫉妬深い。ひとでもものでも、自分の手以外から何かされることに良い感情は持たないのだ。特に自分のものだと思った対象に。
そのため、フリンズは今まで欠片に電撃を与えていたのをやめ、愛らしいものを撫でるかのように手つきを変えることにした。
欠片の溝をなぞるように触れ、少し割れているところには爪を立て、気まぐれに息を吹きかけた。そうするとレリルの身体は今まで床に擦り付けていたのをやめ、身体を跳ねさせながら気持ちよさのせいか猫が伸びをする体制のように徐々に腰が上がっていっている。
フリンズは自分が与えた刺激で快楽に浸っているレリルに対し笑みを深めながら、眺めていた。

一方レリルは、フリンズの今までの責め苦とは違う方針に戸惑っていた。
先程までは強制的に絶頂を促すような痛みを伴うものだったが、今は身体の奥底から快楽を引き起こし神経を剥き出しにさせ、じっくり煮詰めるかのような責め苦だ。

レリルは正直、今の方が辛いと思った。
先ほどまでの電撃のような大きな波であれば痛みもあり途中で休憩もある。だが、弱く持続的な波は休憩を与えてくれない。
体を動かせず、神経を直接撫でられ力が抜けてしまい、射精を促されるがまま抵抗できないのだ。息も上手く吸うことができず声を抑えることもできないため、聞きたくもない声が出る。
徐々にクーヴァキを奪えてはいるとはいえ、快楽に流されこのまま抵抗できないのは不味い。

クソッ! 失態だ。始末しに来た奴にこのような姿を見せるなど……! 殺す……! 絶対にこのフェイだけは息の根を止めてやる……

「おや、未だに反抗的な顔を見せてくれるのですね」
「ッう゛、くそ、ぉ……っ! ぁ゛、っ、ぁ、ぁッあ、やめ、う、ぅ゛〜〜〜……ッこ、ろす……ッ!!」
……ふむ」
「ぅ、ふっ、は、ぁ、ぁ……っ、こ、ぅあ、あ…………ぜったい、ぉ、まえだけは……っ!」

この状況を楽しんでいるように見えるフリンズに、レリルは顔を上げるのですら辛いなかで相手を見上げる。フリンズは一切乱れていないどころか動いていないというのにこの乱れよう。
恥ずかしいやただの失態で済まされる話ではない。
レリルは、喋る度口元の包帯が緩むのも気にせず相手を睨み、威嚇するように見上げた。
フリンズからしたら、罠にかかった狼が負けの遠吠えをしているようにしか見えない。
レリルの表情は溶け、顔を真っ赤にし目に涙を溜め、自分の包帯が解けることも構わず喘ぎ抗議し続ける。なんと哀れで滑稽な事か。
必死に息をしようと口が開き、その中は涎まみれになり、口端から涎が垂れ包帯に染み込んでいる。
そんなレリルの姿をみて、フリンズは笑みを深める。

ああ、ようやく僕をみてくれた!
あんなにも美味しそうな口をさらけ出しながら、涙も拭うことが出来ず、僕をみている!
とても美しく愛らしい。欲しい。欲しい。欲しい。

そう思ったフリンズは、欲望に従うがまま今まで一切動かなかった座った状態から、体を起こし立ち上がる。
その様子をみたレリルが体を強ばらせ、更に眼光を強めるのだから、フリンズからしてみれば堪らない。今まで快楽に流され、目の前にフリンズがいるというのに無意識のうちに自慰を行おうとしていたのが、今やフリンズの行動一つ一つに神経を費やし、何が起こるのかと緊張している。
五代罪人の一人、月の狩人と呼ばれた人物が、だ。
無防備にも快楽にやられ動けず、仰向けのまま抵抗することができない怪物に、フリンズは一歩、また一歩と距離を縮めていく。

レリルの体は無意識のうちに少しだけ後ずさろうとするが、仰向けの状態じゃろくに動けるはずもない。すぐに距離は縮まってしまった。レリルの目の前に、笑顔のまま、不気味に瞳とランプのみを輝かせるフリンズが立っている。
レリルからは影でフリンズの表情が見づらく、より一層不気味に見えた。やはり妖精と言うより、幽霊と言った方が適切だろうなとレリルは場違いな思考をする。
すると、フリンズは突然しゃがみこみ、レリルの頬を掴んで上体を起こさせる。

「はっ? は、き、貴様ッ、フェイ、なにを……っ、ッ!」

力が抜けたまま、少しの思考に耽っていたレリルは不意打ちを受け、されるがまま上体を起こさせられ、フリンズに対する不満が募る。
頬を掴まれたせいで喋りづらいなか、レリルは咄嗟に抗議の声を上げた。その抗議は全く聞こえていないかようにフリンズはレリルに顔を近付ける。

その時、レリルはようやくフリンズの顔が見えるようになった。そして、その顔を見てレリルは言葉を失った。
長いまつ毛を震わせ、酔ったかのように白い肌を赤く染め上げ、笑みを浮かべてレリルをじっと見詰めていたのだ。レリルを目の前にして。高揚した様子を隠す様子はない。

――まるで、レリル相手に興奮しているような様子だ。

その結論に至ったレリルは、思わず目を丸くし固まってしまう。
固まったレリルを見て、フリンズも少し目を見開いたかと思うと笑みを浮かべて言葉を発する。

「気が変わりました」
「? ……っは? な、?」
「僕自身の手を加える気はなかったのですが、欲しくなってしまったので」
「何を言ってい、ッ!!? ン、んん〜ッ!? ふ、んグ、っふぁ、ん、ンん……ッ!?」
「ン……ん、ふ、ぅ」

そう言いながらフリンズはレリルに口づけをした。いや、口づけなんていう甘いものじゃない。捕食するためと言った方が正しいような、激しいキスだ。
最初から口に舌をいれ、レリルから唾液ごと全てを掻っ攫っていこうとしている。
レリルは抵抗出来ないまま、混乱する思考を整理しようとしていた。

なんだ? このフェイは頭を何処かにぶつけたのか?
俺相手に興奮し、更には口づけなど。嫌がらせか? 嫌がらせならば体罰を与えればいいものを。
むしろ俺にクーヴァキを与えているということがわからないほど馬鹿ではなかったはずだ。ならばなぜこのようなことをする?
フェイのすることはわからない。

「ん、! ッン゛ん! ふ、んぅ……っは、んぐ、や、んぅう……! んん! は、……ッ」
「は……っ、ふ、んふ……
「んぁ……っ、ぁ、フ、んう……ッ! ん、ん、んぁあ……やッ、ぁめ、フェ、ん゛ぅ!!」

そう考えている隙にもフリンズはレリルの口内を荒らしていく。レリルは舌を絡めるだけではなく刺激に弱い口内の粘膜を刺激され、頬を掴まれ噛めないまま抵抗できずに更に力が抜けていく。
もうフリンズから電撃は与えられていないはずなのにレリルの体は口内で舌が絡み合うたび、ビクッ、ビクッと跳ねるばかりで使いものにならない。
じわじわと快感が溜まっていき、思考も回らなくなっているため、レリルは不味いとは思うが抵抗が全く出来ないのだ。
レリルは薄く目を明けフリンズを睨み抗議をするが、涼しい顔をして聞き入れる様子はない。むしろ眼に炎が宿っているように見えた。ならばとフェイ、やめろと口で抗議しようとするが喋る隙間もない。

そんなレリルを見ながらもフリンズがやめない理由は、単純明快だった。
フリンズは口づけの最中にレリルが抗議するたびにフェイ、と呼ぶのが気に食わなくてさらに激しくしていた……つまり、拗ねていたのだ。

――良い加減、変な意地を張っていないで、種族名ではなく名で呼んでもいいのではないでしょうか?

そうふつふつと抑えきれないほど湧き上がる感情に、フリンズも動揺していた。
レリル相手にそのようなことが起こるなど、良くないことだとわかりながらも、先程ようやく自分を見てくれたことに喜び、今は名を呼んでくれないことに悲しんでいる。
コレクションに対する感情にしては行き過ぎているとわかっている。だが、今のレリルの状態を愛らしい思っているのも事実だ。
今も、頬を掴まれているとはいえフリンズの舌を受け入れ、涎を垂らし、舌を絡めるたびもっとと言わんばかりに舌を押し付けてくるのはレリルなのだ。
だから、自分の気が済むまでやってもいいだろうとフリンズはレリルに対して、吹っ切れたのだ。

「ン゛、ふ、ぅう〜〜!? ぁ、っ……! ん、フ、んン……ッ、ん、ぅん゛……っ!?」
「ん、ン……ふふ、んっ」

食い入るような口づけをしながらもフリンズは、空いている片手でレリルの背筋をなぞる。
それだけでレリルの体は跳ね上がり、ギクリを体を強ばらせたあと抗議の声を上げる。そのあとすぐに気持ち良さそうに脱力する。
口づけを始めてからレリルがそのような反応をするのは既に三回目だ。絶頂とまではいかなくても気持ちいいことが続く甘イキを何度もしているのだろうということがフリンズでもわかる。

レリルは本来の目的も忘れて快楽に翻弄され続けたせいか、体の異変が起きていた。
どこを触られても敏感になっており、全身の神経が剥き出しにされた感覚だった。フリンズの手によって全身を生還帯にされている。本来であれば寒気しか感じないが、今は喜びに変わっていた。
触られる度に快楽の緩やかな波が来て、絶頂する。
だが、それもずっとは続かずレリルは流石に息が続かないと口づけをやめないフリンズから顔を逸らし、やめようとさせた。だが緩やかな抵抗ではフリンズは効かない。むしろ更に激しく口づけをし直す。

「ン、ん゛……〜〜、っ、ん、んふ、ンん゛、〜〜〜……っ!!」
「ん、んん……ふ、ン」
「んン゛〜〜〜! フェ、ッん゛! ぉい、っき、ン゛……っ!!!」

レリルは知らなかったが、フェイは呼吸をする必要がない。そのため、フリンズは呼吸を取る隙間を設けていなかった。
抗議をしようとするとうるさいと言わんばかりに背筋を撫でられたあと太腿を経由して会陰あたりを緩く押してくるため、すぐに黙らされるのだ。
その間も呼吸が奪われ、酸欠寸前となるの同時に、レリルの体に絶頂前の波が来ていた。強制的に電撃でされるのとは違う、陰茎に触れてはいないが、自らの意思で絶頂しようと体が動いている。
レリルが自身の絶頂に気付くと、意識したからか更に快楽に思考が飲み込まれる。

――クソッ、気持ちいい。気持ちよくなりたい。いやだ。此奴の手で絶頂するなど。ああ、気持ちいい……

酸欠の涙で目の前がみえなくなりながらも、レリルの視界の端に羽のような光が見えていた。そういえば目の前の男はフェイだったか、と今更な思考になる。
正体がわかるものが隠せないほど、フリンズはレリルに対して、本当に、興奮しているのか。

「んぐ!? ん、ん゛ぅ、う゛〜〜〜゛〜゛……っッ゛!!!」
「ふ……? ああ、なるほど」
……あっ? ッ? は、っは、ぁーー……っ?」

レリルがそう思った途端、目の前が光でまみれ、視界が真っ赤に染まる。絶頂とクーヴァキを飲み込む波長が一致し、今までに無いほどの波を経験する。レリルはそのまま顔や背を反らし、全身の筋肉を強ばらせ、確実に絶頂したと丸わかりな状態だった。

その拍子にフリンズとのキスが解かれ、フリンズはレリルの絶頂をしっかりをみた。
その姿ときたら、美しいどころの話ではない。
こんな姿をみせられるのはフリンズだけなのだと、優越感に浸る。思わず舌舐めずりをしてしまうほどだ。
野生の狼が、時間をかけ手元で可愛らしく鳴いてくれているかのような姿に、フリンズは誤魔化しようがないほど、心を打たれてしまった。
この思いをどうすればいいのだろうか。フリンズは高揚する気持ちのまま考え込む。そうして思い付いたことがある。

その間も絶頂の余韻に浸っていたレリルは、息も絶え絶えだった。頬はもう掴まれていないというのに口をだらしなく開けて息を切らしながら座り込む。
クーヴァキは沢山摂取出来たが、復活直後なこと、絶頂直後なこと、フェイの力を受けたこと、色んなことが重なり実態化したままの姿を維持するのが難しくなっていた。
絶頂したことにより少しは冷静になったレリルは、このままではフリンズには勝てないと判断し、逃げようとした。正確には力が保てなかった、が正しいが。

レリルは泥のように自身の影へと消えていき、アビスの霧となっていく。

「ああ、行ってしまわれるのですね」
……つぎは、おぼえてろよ、ふりんず」
……! ええ、覚えていますよ。貴方の欠片は僕が持っていますし、またこちらに来られることを楽しみにしています。次は僕のことを今だけではなく、しっかり種族名ではなく僕の名で言ってくださいね」

フリンズは今回のことは見逃すらしく何もしてこない。先程までの興奮した様子はどこやら、いつもの調子に戻っていた。そんなフリンズにレリルは舌っ足らずに返答すると、影に飲み込まれていくレリルを見ながらこれまたおかしな回答をしたのだ。満足気にしながらも。
視界と意識が暗闇に落ちながらもレリルは思った。


また同じような失態を犯すわけないだろう! 次は絶対に殺す!!! と。





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