匣舟
2025-10-12 15:56:09
1772文字
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眠気の襲来をまっている

ショートショートの現パロタカ乱です。
同棲してるふたりの話


 ありがとうございましたぁ〜。と最後のお客さんを見送って伸びをすると、もう閉店時間から三十分が経過しているところだった。
 父から譲り受けた美容院を経営しているタカ丸は、持ち前のルックスと話しやすさから空き時間が無いほど毎日目まぐるしい日々を過ごしている。
 個人経営なので何から何まで一人でやらなくてはならない。掃除に点検、そしてレジ締めを終えたタカ丸はふぅ。と一息をついて、少し年季の入ったガタガタとしたシャッターを閉め、今から帰るね〜。というメッセージを恋人とのチャットに送った。
(今日も一日がんばったなあ。)
 恋人と一緒に住んでいるアパートからタカ丸が経営している美容院までの距離は、歩いて十分程度で朝のタカ丸の気分に乗って自転車か歩きか交通手段を選べるようになっている。
 今日は歩きの気分だったので歩きをチョイスしたが、自転車の方が良かったかなあ。と思いながら少し早歩きで岐路を急ぐ。秋の少し心地よい夜風を感じながら歩きながらスマホを見ると、ご飯温め直して待ってますね!という恋人からの返信があり、タカ丸はさらに歩く速度を早めた。
た、ただいまぁ〜。」
 自分の限界の速度まで早歩きをしたタカ丸はいつもより三分ほど早く自宅に到着した。
 玄関のドアを開く音が聞こえると、部屋の方からトタトタと足音が聞こえると同時にリビングのドアが開いて、恋人である乱太郎がタカ丸を出迎えた。
タカ丸さん、おかえりなさい。」
「ただいまぁ、乱太郎くん。」
 疲れたよお。と抱きつくタカ丸に、慣れた手つきでお疲れ様でしたぁ〜。と抱きついてせなかをすりすりと撫でている乱太郎は、今日は随分お疲れみたいですね。とタカ丸の頭を撫でた。
ご飯にします?お風呂にします?」
 それとも、私にしますか?と意地悪な顔で笑っている年下の恋人を見て、タカ丸は靴を脱いでいた動作をやめてその場に蹲った。
「も〜うっ!僕が疲れてる時だけそんなこというのやめて〜!」
 その場に蹲りながら泣き真似をするタカ丸に乱太郎は笑いながら、じゃあご飯温めますから早くリビング行きましょ?とタカ丸の手を引いた。乱太郎の手に引っ張られて立ち上がったタカ丸は、そのまま靴を脱ぎ始める。
もう、おなかぺこぺこだよお、今日のご飯はなあに?」
「今日は唐揚げですよ。」
「わーい。僕好きだよぉ。乱太郎くんの唐揚げ!」
 すぐ着替えてくるね〜!と疲れながらもほわほわしながらクローゼットに消えていったタカ丸をかわいいなあ。と見つめながら、乱太郎はご飯をあたためるべくキッチンへと向かった。ご飯を食べ終えたタカ丸は満腹になったせいか少しだけ船を漕ぎ出している。
「たかまるさぁーん。ねちゃだめですよぉ〜?」
 髪ギシギシになっちゃうんでしょ〜?明日も仕事でしょ〜?起きなきゃダメですよ〜?と耳元で囁くと、お風呂まで乱太郎くんが連れてってぇ……と乱太郎に覆い被さってくる。も〜!と言いながら乱太郎は少しタカ丸のことを引き摺りながら彼のことを運んでいく。
「ほーら、着きましたよ、早く入ってください。」
わかったよお、はいる、から
 僕がお風呂出るまではおきててね、いい?やくそくだよぉ〜?と寝ぼけた目を擦りながら服を脱ぎ始める彼に、分かりましたよ、一緒にベットに寝に行きましょうね。と言ってから乱太郎は脱衣所を後にする。
 明日は一限から講義が入っている乱太郎がなぜこんな夜中まで恋人のことを待っているのかというと、寝ぼけモードになるとスーパー甘えたさんになる年上の恋人をみるのが乱太郎にとっての至福だからだ。
 私生活では何をするにもずっとリードしてくれていて、二人で歩いている時は必ず車道を歩いてくれたり、落ち込んでいる時は瞬時に察してくれてスイーツを買ってきてくれたりご飯を作ったりしてくれるなんでも出来る恋人が、眠たくなると自分に甘えてくる姿にギャップ萌えを感じてしまい、こうして同棲して数年経った今も変わらず続けている。
ドライヤーも用意しなきゃいけないかなあ。」
 寝ぼけているであろう恋人がいつものように髪を乾かさないまま出てくるであろうことを見越してスマホをいじる手を辞めた乱太郎は洗面所の下にかけてあるドライヤーを取りに行くのだった。