三毛田
2025-10-12 11:05:55
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43 043. もっと上手に笑えたらよかった

43日目
君の前でくらい

 きっと今、俺はもしかしたら下手な笑いを浮かべているだろう。でも、すれ違う奴らは全く気づいていないみたい。
 それに少しホッとした。
 先ほど見た光景をごまかすように、自販機で紙パックのジュースを買う。
飲んでみるけれど、味がわからない。
 好きな人に、好きな人がいるのは当たり前といえば当たり前だ。その可能性を、全く考えていなかった俺の落ち度。
「見つけた」
「星。まだいたのかよ」
 嬉しいような、会いたくなかったような。でも、笑えと、誤魔化せと。笑顔を彼女へ向ける。
 いつものように。
「あんた、笑顔が引きつってるよ」
 俺の手から気づけば空になったジュースのパックを取り上げ、眉を下げる星。
 双子だからか、隠そうとしてもすぐに分かってしまう。
 今だって、笑っていたつもりなのに直ぐにバレた。
「他の人は騙せても、私にはすぐわかるんだから。後、丹恒も気づくよ」
 出てきた名前に、頬がピクリと動いた。一瞬だったけれど、それだけで彼女は、俺がこうなった原因にすぐ思い当たったみたい。
「手紙で呼び出されたの、見てたから。なのと野次馬しに行こうかって話してたら、いつの間にかいなくなってたんだよ。もちろん、そこにはあんたも含まれてるよ」
「いてっ」
 デコピンされた。地味に痛む。
「なのはどうしたんだ?」
「図書館。授業に必要で借りた本の期限が、今日までだってさっき気づいて慌てて返しに行った」
「ついていかなかったんだ。珍しい」
「荷物番三人分だよ」
「ご迷惑お掛けしました」
「明日のジュース、あんたの奢りね」
「はいはい」
 ん? じゃあ、なんで今ここにいるんだ?
「なんだかんだすぐに戻ってきたなのと交代。トイレついでに、あんたのこと探したんだ」
「なるほど」
「丹恒も戻ってきてるはず。笑わなくていいから、ちゃんとしな」
「イテッ」
 俺の疑問に答え、ゴミをゴミ箱へ投げ入れた後背中を叩いてくる。
 星なりの励まし方なんだが、物理的すぎるんだよ。
「あ。二人ともやっと戻ってきた。星、お腹痛かった?」
「ううん。これ見かけたから、迎えに行ってた」
「そうなんだ。丹恒も戻ってきたから、帰ろう」
「うん。そうしよう」
 鞄を掴み、星となのが先に教室を出ていく。
「お前は、大丈夫なのか」
「ん? うん」
 いつものように笑う。でも、不信感を抱いたようで手に触れられる。
「無理して、笑うな」
……丹恒も、わかるんだな」
「お前を見ているからな」
 そんなこと言われたら、俺を好きなのかと勘違いするじゃん。