匣舟
2025-10-12 00:28:38
1693文字
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夜が明けても消えない魔法

ショートショートの現パロの鉢乱です
朝隣で寝ていた乱が居なくて探す鉢の話です

三郎が朝、目を覚ますと隣にいるはずの恋人が消えていた。確か昨日は隣で寝ていたはずなのに。まさか大学があるから帰った?それなら昨日言ってくるはずだし。といろんなことを考えながら急いで飛び起きて寝室からリビングへと行くと後ろ姿でもわかるほど寝癖があっちこっちに跳ねていて彼が着るには少しでかいオーバーサイズの自分の服を纏った三郎の恋人である乱太郎が朝ご飯を作っていた。
「らぁ~んたろっ。」
 後ろから音も出さずに近づいて彼のことを抱きしめると、ひゃっ!とかわいい声を出し後に脅かさないでくださいよ!と少し怒った声が彼の口から出された。
「もう、火を扱ってるんだから危ないですよ?」
「だって、乱太郎が俺を置いて起きるからでしょ。」
 起こしてほしかった。と後ろから抱き着きながら拗ねる三郎に乱太郎は気持ちよさそうに寝ていた人を起こせませんよ。と笑った。こっちは帰ってしまったかと気が気でなかったのに。と笑われたことに不満な三郎は毎日乱太郎の顔見ながら起きられたらいいのに。とぽつりと独り言を発した。その消え入るような三郎の独り言を聞いたらしい乱太郎は、三郎さん。と彼の名前を呼んで火を止めて抱き着かれていた体を離して三郎の顔を見据えた。
「わたしも、ずっと思ってました。いつもここで三郎さんにおはようからおやすみも言いたいなって。だから。」
 一緒に住みませんか。という乱太郎の言葉は三郎から送られたキスによって言えなかった。キスをした後、乱太郎を見据えた三郎はそれは、俺から言わないとかっこつかないから言わせて。と少し赤い顔をしながら緊張した面持ちで口を開いた。
「乱太郎。」
は、はい。」
「俺も毎朝一番最初におはようって言葉を交わすのはきみであってほしいし、一日の終わりにおやすみって最後に言葉を交わすのもきみであってほしい。だから。」
 俺と一緒に住んでくれませんか。という言葉を彼の目を見据えながら言うと、次の瞬間には満面の笑みで喜んで!と花が綻ぶように微笑んでいる乱太郎がいて、思わずぎゅう、と力の限り抱きしめた。三郎さん、くるしいです。という声が三郎の耳に入っているが、三郎は嬉しすぎてそれどころではなかった。
 毎回こちらに泊まりに来て、夜は同じベットで寝たのに朝起きると隣に誰もいない寂しさと、玄関前でまた。とハグをしてから帰っていく乱太郎を見送るときの寂しさがこれからなくなるのかと考えただけで三郎はどうなかなりそうだった。さらに乱太郎も同じ気持ちでいてくれたことで三郎は余計舞い上がっている。
 結局乱太郎がく、苦しいです。と言うまで三郎の力強い抱擁は続いた。
「三郎さん、舞い上がりすぎですよ。」
 危うく窒息死しそうでしたよ。とジト目になりながら自分の焼いたトーストを口に含んでいる乱太郎の視線を一心に受けながら、三郎はごめんって。と少し反省しながら乱太郎が作ってくれた朝食を食べていた。でも嬉しかったんだから仕方ないだろ~?と言うとまあ、そうですけど。と乱太郎がトーストを咀嚼しながら答えた。
「まあ、嬉しいのはそれだけじゃないけどな~。」
 なんて言いながらふんふ~んと鼻歌を歌いながら朝食を食べ進める三郎にほかの理由が何かあるんですか?と上機嫌な三郎に問いかけると、彼は少し意地悪な顔をして笑った後、こう言った。
「同棲するってことは、朝が来ても帰らないってことだからさ、」
 だから、乱太郎のかわいい姿をずっと見られるってことだろ?と昨晩のように熱を孕んだ目で三郎から見つめられてしまった乱太郎は三郎のいうかわいい姿がどのような姿なのか優に想像できてしまい、たちまち顔が赤くなりながら三郎さんの変態っ!と叫んで食べ終わった食器をシンクに置きに行った。
「ああ、待ってよお、乱太郎~。」
 怒ってしまった乱太郎の後を追うようにしてご飯を食べ終えた三郎は同じように食器をシンクにおいて食器に水を貯めてから乱太郎が向かっていった寝室へと消えていったのだった。
 そのあと、乱太郎がどうなったのか。それは三郎しか知らないことである。