ぽふむん
2025-10-11 22:30:00
1523文字
Public ワンドロ
 

我が紫はお悲しみ

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「干菓子」「軋み」
幼しのぶちゃん信者if

wisteriaさんのイラストを見てのインスピレーション。
幼しのぶちゃんを甘やかしたくてついつい酷い目にあわせちゃいました😫💦
幼しのぶちゃん、その幼さ、ヤンチャさからあの女衒以外にも 「この小娘一発殴ってやる」と思う男もいたかもな……と

鬼と人のつもりで書きましたが、年齢操作の氷柱ifでも。そう読むと最後の意味合いは当然「四文字」と「二文字」の意味が変わります


高麗縁の畳が敷かれた高座に、大人でも埋もれてしまうほど大きなクッションが鎮座していた。
そこに、ひとりの少女がゆったりと座っている。
少女の目の前には、色とりどりの水菓子くだものに干菓子が高坏に盛られていた。

「ささ、姫さまお召し上がりくださいませ」
目の前の信者の男の言葉に、少女は「どれにしようかしら」と少し迷い、まずはいちじくを手に取った。
食べ頃によく熟れている。
それを半分に割ると、白と赤のコントラストが美しい。
それを少女は匙ですくい取り口に運んだ。
「ん……いっ……たぃ……美味しいのに」

匙が大きすぎるのではない。
口の端が切れてしまい、頬も腫れている少女は口をあまり大きく開けられないのだ。

「せっかく用意してくれたのにごめんなさい。
これ、後で“にぃに”に潰して食べさせてもらうわ」
少女はそう言うと、「この程度なら口をあけられる」と金平糖を手に取った。
口の中に入れると、ふんわりと優しい甘みがゆっくりととろけ出す。
甘くって、恐怖で強ばった身体を癒してくれる。
だと言うのに、口の中も切れてしまったのだろう。
その優しい甘さも傷に沁み、眉をひそめた。

「痛い……美味しいのに……

すごく寂しいのは、クッションと自分の間にいつもはある“にぃに”の膝がない。
それがこんなに不安だなんて思わなかった。
ここの大人は皆優しい。
でもどこか遠い。
「う……ぅああああん。にぃに……はやくかえってきてよぉ」

痛々しい傷のせいで、食べたいものが美味しく食べられない。せっかく自分の為に皆が色々用意してくれたのに。
そんなことも悲しくなってきてしまう原因となる。
ついに少女は泣き出してしまった。

そんなわがままを言われても“にぃに”だって為す術がない。
困り果ててしまうに違いない。
少女はそんなことはもう分別のつく歳だが、さすがに今日は“にぃに”に甘えたい。

男の子というものがあんなに乱暴なものだなんて、今日の今日までしのぶは知りもしなかった。
それは“にぃに”を始め、周りの人間が大人が多かったから。
万が一の時も、露払いをしてくれていたからにほかならない。

そんなこととはつゆ知らず。
やんちゃで、よくいえばおしゃま。悪く言えば年長者への口の利き方のなっていない少女は生意気三昧。

ついに“露払いをしてくれる人格者の大人”が居ない時を狙って少女を“懲らしめ”る悪い年長者が現れた。



「酷いことするやつもいたもんだ。こんな小さな女の子に歳上の男が」
「子供の言うことだろうに。大目に見てやればいいのに」
「教祖様なら“話し合い”に行かれてます。きっともうすぐ……

少女の目の前に平伏していた大人達は、わんわん泣きわめく少女に慌てふためくばかりだった。


その時、廊下を走る足音が襖越しに聞こえてきた。
床が軋む音がその体の重量感を伝えている。

ぱーん
襖が激しく開けられた
「しのぶちゃん?どうしたの?」
そこに居たのは白橡色の髪に虹色の瞳の大柄の青年。
「あ、にぃにぃ……この金平糖……美味しいのに。にぃにぃの目みたいで綺麗なのに……怖くなくな……なのに……痛いぃいいい……ふぇ……ぇえええん」
少女“しのぶ”は安堵したのかさらに激しく泣き出した。

「ああ、痛かったね。怖かったね。もう大丈夫だよ。あいつらは俺が“救済”しておいたから。怪我はゆっくり治そうね……よしよし」
青年はしのぶに歩み寄ると、優しく抱き上げ頭を撫でてやる。

周りの信者たちの

「随分な入れこみ様だな。教祖様に光源氏の嗜み童女趣味があるなんて知らなかった」

そういう声は、二人の耳に届いていなかった。