匣舟
2025-10-11 22:17:04
2270文字
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目合いの熱に漂う

ショートショートの現パロ食満乱です
留に見合う恋人になりたくてピアスを開けた乱の話

 乱太郎には誰にも言えないちょっとした悩みがあった。それは、どうしたら彼氏に見合った恋人になるかという悩みである。
 乱太郎の恋人は五つ上のレザージャケットが似合うかっこいい服を着こなすことが多い恋人で、対する乱太郎はカーディガンやシャツなどシンプルな服を着こなすことが多く、いつも隣に並んでいるときは周りから年の離れた仲のいい兄弟と思われがちでどうしたら彼にふさわしい恋人のなれるのだろうかと日々悩んでいるのである。
 服の系統が彼のように自分に合うわけじゃないしでも少しだけでもいいから彼に見合う恋人になりたい乱太郎にある一つの考えが思い浮かんだ。
「うーん、やっぱり開けるしかないのかなあ。」
 その考えはピアス穴を耳にあけるという考えだった。乱太郎の恋人は耳にピアス穴がたくさん開いていて、それも相まってとってもかっこよく見えるのだ。
 開けてから毎日ピアスを回して穴を安定させたり、消毒をしなくちゃいけないから大変だと聞いたことはあるが、よく自分に付きまとっている不運のせいで治療のプロフェッショナルな乱太郎にはお茶の子さいさいであるので、そこの心配はいらないはずだ。
 あとは、一人で開けるか、誰か友達に開けてもらうか、それか病院に行くか。初めてで一人で開けるのは多分無理だから一人で開けるという選択肢は消えるし、ピアスが開いている友達に開けてもらうのもいいけれど、なんで開けることにしたの?と言われてしまったらその理由の幼稚さに呆れられるかもしれないと思った乱太郎は大学に近い病院で開けることに決めたのである。
 ピアスをしている自分を見た恋人がどんな反応をするのか少しだけドキドキしながら、乱太郎は病院に行く予約を入れたのだった。
「乱太郎、いらっしゃい。会いたかったぞ。」
 毎度の如く再会のハグを最初にされて、さあ、入ってくれ。と恋人である留三郎の部屋に足を踏み入れた乱太郎は内心ドキドキしながら彼の部屋にお邪魔します。と入っていった。
 何度も訪れたことのある留三郎の部屋なのにどうしてこんなにも緊張しているかというと、乱太郎がピアスを開けてはじめて留三郎に会う日だったからだ。
 ピアスを開けてから乱太郎はゼミ発表の準備に奔走していたし、留三郎も大学院生であるので学会発表や講義などで忙しくこうして二人で会える日がなかったのである。
 今日は二人とも疲れているし家でまったりしながら映画とか各々好きなことをしようということで留三郎が一人で暮らしている部屋に訪れているというわけだ。
 さあ、好きなところに座ってくれ。とキッチンへ消えていこうとする留三郎の手を引いた乱太郎はあ、あの、ちょっと聞いてというか見てほしいものがあって。と緊張した面持ちで彼を引き留めると、留三郎はな、なんだ?と乱太郎の緊張に触発されたのかこっちも緊張してしまっていた。
 震える声を抑えながら、こ、これ見てくださいっ。と耳にかかっていた髪を手で払い除けると、先週開けたばかりの乱太郎の赤い宝石のようなファーストピアスが留三郎の目に映った。
「少しでも、留三郎さんに見合う恋人になりたくて、ピアス、開けてみまウッ!?」
 恥ずかしくて留三郎の顔を見ることができなかった乱太郎は、開けた理由を恥ずかしながらに語っている途中で留三郎のタックルのような抱擁を受けることになった。そして瞬く間に耳に甘噛みとキスをされる。
「と、留三郎さん?」
「お、俺はてっきりなにかしてしまったかと思って焦ってたのに、ピ、ピアスを開けてるって本当に。」
 途切れ途切れに言葉を紡ぐ恋人にもしかして似合ってませんか?と言うと強く抱きしめられていた体を引き離されてそんなことない!と叫ばれた。
「じ、じゃあ、その悲しそうな顔は?」
 乱太郎の瞳に映っている留三郎の顔は悲しそうな、はたまた悔しそうな表情をしていて、ピアスが似合ってないという考えが違うなら何なんだろうと考える乱太郎に留三郎は彼の目を見据えながらこう言ったのである。
「それなら、俺がピアス穴開けたかったなっていう俺の些細なわがままというか、他の奴にお前の体に穴を開けられたのが嫌だっただけだ。」
 あーっ、恥ずかしいな!ちくしょう!と赤い顔をしたかと思えば、その赤い顔を乱太郎に見られたくなくてお茶、取ってくるから待ってろ。とキッチンへと消えていこうとする留三郎に乱太郎は少し赤い顔をさせて彼の手を引いた。
 また乱太郎にキッチンへ行くのを阻止された留三郎は、な、なんだよ。と彼を見つめながら、乱太郎が口を開くのを待った。
「と、留三郎さん。」
「な、なんだ。」
「じゃあ、次のピアス穴は留三郎さんが開けてください。」
 ピアスも一緒に選んでほしいです、わたしが、留三郎さんのものだってわかるように。と留三郎の服を掴んで潤んだ瞳でこちらを見つめてくる乱太郎の姿に留三郎の理性は瞬く間に決壊し、キッチンへ行こうとした足を止め、そのまま乱太郎を担いで一緒に二人でベットへとダイブする羽目になった。
「今日は疲れてるからこんなことしないでおこうと思ったけど、だめだ、な。」
 ピアスも一緒に選びに行くが、今はお前の身体に俺のものだってわかるようにいっぱい痕付けさせてくれ。乱太郎。お前が俺を煽ったんだ。覚悟しておけよ?と熱を孕みながら乱太郎を押し倒して自分の服を脱いでいる留三郎に見つめられた乱太郎もまた彼と同じように熱を孕んだ瞳で首を縦にこくりと動かしたのだった。