トウメイ希望
2025-10-11 16:28:22
1231文字
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【ルデナナ】みつさと7th記念

みつさと7周年記念に書いたSS。陰の立役者なあのこ視点です。
Xに挙げた後、某所にも投稿しようかなーと思っていたのですが、矢のような光陰に飲まれているうちに、いまさら7周年のSSをどーんとあげるのも……ねえ? と尻込みしたためこちらでひっそりと公開します。

「受け取ってクレ。誕生日プレゼントダ。気にいってもらえるといいんだガ。誕生日おめでとウ、ナナミ」
 ナナミは笑顔で受け取ると、早速それを私に着せた。
「サイズもイメージぴったり! ありがとう、ルデゥス!」
実のところ、ナナミがルデゥスにそれをリクエストしてくれたと知った時から、私は楽しみで仕方が無かった。手先の器用な彼は裁縫もまた得意で、パッチワークのキルト生地は私を柔らかく包んだ。
「しかし、ナナミは相当まめだよナァ。もう7年間、毎日だロ?」
 言いながら、ルデゥスはナナミに抱かれた私に目をやった。彼に見つめられると少し恥ずかしい。私には、ナナミの魂を分けられているからかもしれない。と言っても、私には赤面する顔が無いのだが。
「うん。読み返すとね、いろんなことを思い出すの。書いてて良かったなぁと思うよ、」
 日記。そう言ってナナミは私をそっと撫でた。

 7年前、私とナナミは一緒にこの牧場にやってきた。私の最初のページには、広大な土地を手に入れた喜びが、書き込まれている。期待と不安が入り混じった、初々しい心も。
 それから7年間、その日あったことを私に教えてくれた。春の土を押し上げて、ラディッシュの小さな双葉が芽生えた喜び。収穫したミルクのほのかな温もり。Mr.Dと競い合った日は、ナナミは必ず悔しさで泣いた。少しよれて、折角もらった文字も滲んでしまうのは辛かったが、ナナミが涙を流せるのは私の前でだけなので静かに見守った。悲願叶ってやっと勝利した日も、しかしやはり私は濡らされてしまった。涙とは悔しくても嬉しくても流れるものらしい。
 抱きしめる腕も、慰める声も持たない私は、ただ静かに寄り添い、彼女の言葉を受け止め続けた。何もできない自分が歯がゆかったが、彼女にはそれだけで十分なようだった。
 私は誰よりも近くで彼女の心の変遷を見守った。柔らかな心が、雨風にうたれて少しずつ強く為っていく様を。

「読み返すと、がんばったなぁって思うの。この子は私の7年の結晶なのよ」
「オレのことも書かれているのカ?」
「もちろん」
「それは気になるナ」とルデゥスの手が私に伸びたが、「だぁめぇ」届く前にナナミが弾いた。

ルデゥスと出会った日のこと。最初は無表情で体格のいい青年を、ほんの少しだけ怖いと思ったことも。笑うと目じりが柔らかくなって、ほっとしたことも。兄を頼るように慕っていた心が、やがて淡い色を秘め始めていく様子を。
読んだだけで「キャーッ!」と叫びだしたくなるようなこっぱずかしい内容で、実際にナナミは読み返しては何度か叫んだ。
「気を付けた方が良いゾ。そこまで言われると見たくナル」
「それじゃあ、来年は鍵をもらおうかな」
 とナナミは笑って私を背中に隠す。そのようにされるのは、なかなかに気分が良かった。
 きっとナナミは、今日のことも私に書き込むのだろう。そして更に数年後のナナミが、今日のページを見返しながら微笑むのだ。