飲みや打ち上げに親睦会、ご丁寧に毎度全てを断って帰って来る男は、断ったその全てをわたしとやりたがる。こっちはこっちで、その場に居なかった話をこの男の体験から聞くのは嫌いじゃない。
ただたまには参加してみろと、今はその遅い帰りを待っているところだ。
そうして暗い夜に、煌々と人工光を灯して頭の時間感覚をイカれさせていると、がちゃりと存外小さな音で家の扉が開いた。
部屋に入って来た男は、明かりに気付きながらも、こちらが起きていることに驚いているようだった。
けれど疲れがあるのか、表情を作るのも億劫そうなので、逆にこちらは笑えて来る。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
近寄って帰宅の片付けを手伝ってやる。
「店の匂いに、酒の匂い。ただでさえそれも複数なのに、あと煙草と香水。こっちもいろんな種類がたくさん。」
視線を動かすのも気怠そうな男が見上げて来るのに構わず、その周りをくるくると文字通り嗅ぎ回る。
「一晩で別人みたいですね。」
そう告げると、当の本人が傷付いたみたいな顔をするので面白い。まあ確かに、乗り気でないこの男を行かせたのは、紛れもなくこちらだが。
「この余計な匂いがべたべた付いたおまえを、これからすっかり綺麗にたあとわたしでいっぱいにするのかと思うと、胸が躍ります。」
すると男は目を丸くし。
「そう言えばおまえは、絵の具まみれを掃除するのが、存外好きだよな。」
また別の絵の具まみれにするのにって。ええ、そうです。
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