匣舟
2025-10-10 23:07:36
1734文字
Public RKRN
 

罠に落ちてもしらないよ

ショートショートの綾乱です
穴掘り中の綾を見つける乱の話


 乱太郎が保健委員会の活動場所である医務室に行こうとした道中の地中に大きな穴があったので気になって穴の下を覗いてみると、そこには乱太郎が想像した通りの人物が土まみれになりながら穴掘りに勤しんでいる最中であった。
「あーやーべせんぱぁーい。」
 穴の上から穴掘りに勤しんでいる学園一の天才トラパーと名高い綾部喜八郎に声を掛けると、乱太郎の声が聞こえたのか喜八郎は穴掘りをやめて声がしたほうを振り向いた。そして穴の上から覗いている乱太郎を発見した途端、いつも無表情な彼の顔が少しだけ笑ったような気がした。
「おやまぁ、乱太郎。どうしたの?上から僕のことを覗いて。」
「医務室に向かう途中で校庭を見ていたら大きな穴があったので、先輩がいらっしゃるだろうな。と思って。」
 覗いたら本当に先輩がいらっしゃったので今驚いている所です。と穴の上から微笑んでいる乱太郎を見た喜八郎は乱太郎。手をこっちに差し出してくれない?と言ったので何も断る理由などなかった乱太郎は素直に穴の方に向かって手を差し出した。
 するといつの間にか彼が愛用している踏鋤を地面に置いていた喜八郎の手がにゅっと伸びてきて乱太郎の手を掴んだ瞬間、ズン!と下へ引きずられる。
ひっ、うわああ!?」
 悲鳴を上げながら乱太郎が着地したのは喜八郎の腕の中で、そのまま彼の腕の中へと抱き留められる。
「ちょ、ちょっと!先輩っ!私っ、委員会があるんですけど。」
 頑張って喜八郎の腕の中から逃げようと押し返してみたものの、一向に逃れられる気配はなかった。だが今日は同じ当番である三年は組の三反田数馬も委員会活動に遅れると事前に聞いていたし、今、現在医務室には保健委員が誰もいないということになる。
 上級生ならば怪我をしたとして医務室に行って誰もいなくても、多少の手当てはできるだろうが保健委員をしている乱太郎がいなければ手当てができない下級生もいるだろうし医務室に誰もいないという最悪の展開は避けたいのに、喜八郎は乱太郎が逃れようとするたびに抱きしめる力を強める。
「もうっ!先輩っ!離してください!」
「やーだね。乱太郎は今日はずうっと僕と過ごすの。」
「そんなの聞いてませんけど!?」
だって今言ったんだもん。」
 あまりにも突拍子のない発言をしてくる喜八郎に乱太郎は委員会があるんです!と言うと、僕より委員会が大切なの?僕はきみの恋人なのに?と喜八郎の端正な顔がいつの間にか乱太郎の目前に迫っていた。
「そ、そういうのじゃなくて。」
「じゃあ、ここにいてもいいよね。」
 というか乱太郎も用事があって送れるって乱太郎とある前に医務室に置き手紙を穴を伝って医務室に届けてきたから大丈夫だよ。と澄ました顔をしている喜八郎に乱太郎ははぁ。とため息を吐くととも喜八郎が乱太郎に見つけてもらうためにあんな分かりやすいところに穴を掘っていたのかと考えると、今までやってきたすべての行動が喜八郎に見透かされているような錯覚をしてしまって急に恥ずかしくなった。
ひとりでなんでそんなに赤くなってるの?」
 喜八郎に頬が赤く染まっているところを指摘されて、な、なんでもないですよ!とはぐらかす乱太郎に喜八郎は下を向いていた彼の顔を両手で包み込むようにして口を開いた。
「ふぅん、僕に嘘をつくんだ。」
「う、嘘なんかんぅ!?」
 ただただ自分の行動が喜八郎に見透かされている気がして恥ずかしかったということをすぐに言ってしまえばこうはならなかったのにと後で後悔することになるのだが、今の乱太郎は息継ぎをする暇もなくキスを喜八郎からされているので、そんなことを考える余裕など全くなかった。
 息をする暇もないままキスをされて脳が思考が溶けていってしまった乱太郎はキスが終わるころにはもう完全に顔も、脳も思考もとろとろに溶かされた後だった。
僕に嘘をついちゃいけないよ?わかった?」
 ね、乱太郎?と目の前でふふ、と微笑んでいる彼の顔をキスによってとろとろの視界の中で見つけた乱太郎は、もう先輩っに隠し事はしないでおこうと思いながら、ふぁい。と気の抜けた返事しかできなくなっているのであった。