ぶんどき
2025-10-09 07:53:03
810文字
Public TRPG
 

強敵

ブラ縋 現行未通過❌
ハトヤが一人で潜入に行くことになった話

「今回の仕事は俺一人っすね〜……って、そんなわかりやすく不安そうな顔しないでくださいよ!」
 明け方、閉店後の『Viperosa』では店内の掃除をしながら二人の店員が会話をしていた。オーナーからの頼まれごと──情報収集についてだ。今度の潜入先に灰蛇は面識のある人物がいるらしく、行くならハトヤ一人で、ということになったのだ。
「俺だって一人でできますって!」
「不安すぎる。後で指導してやるから時間空けとけ」
「わっかりました!」
 返事だけは立派だな。そう言って灰蛇は店の奥へと戻っていった。ハトヤはモップの柄に体重を預けながら、その背中を見つめていた。いつだってストイックで、意外と面倒見がいいというか。ため息をひとつこぼす。
 指導してくれるのはきっと見捨てられていないからだ。伸びしろがあるということだ。そういうことにしておこう。だったらその期待には応えたい。つまるところ、自分は彼に認められたいのだと思う。厳しい特訓だって食らいついて耐え抜いて、仕事だって成功させてみせるから。
……俺もがんばりますかっと」
 掃除用具を片づけ、灰蛇の後を追う。彼は仕事の為の演技はするが、ビジネスパートナーである自分に嘘は吐かない。裏表がないのもわかっている。だから信じると決めた。それでも──怖いものは怖い。信頼できる相手だからこそ、一度そう信じてしまったら、裏切られた時のショックが大きすぎて今度こそ誰も信じられなくなるという予感が常にある。
 そのせいで、つい一歩引いてしまう。正面から向き合わないといけない時に、へらへら笑って躱してしまうのは自分の悪い癖だ。しかしこんな態度は彼には通用しない。中途半端な態度は軽くあしらわれるだけだ。振り向かせたいなら本気でぶつかるしかないのだが。
 ふと、思い出すのは前の事件。ブラック・ルシアン──たしか、カクテル言葉は「強敵」だったような。うーん、まさに彼そのものだ。