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いさき
2025-10-08 22:51:05
865文字
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匁キザ「消毒」
「稽古でこんなに傷作ってどうするんですか」
向かい合って座り、薬箱を探る匁が溜息をついた。
「いやあ、ちょっと本気になっちまってさ」
キザミが匁に腕を差し出しながら言い訳とともに笑う。匁はその腕を引っ張り、ピンセットで消毒液のたっぷり染み込んだ綿を傷口に当てた。
「いてっ」
キザミが小さく身体をびくつかせるも、匁は黙って傷口に綿をとんとんと押し付け続ける。
「うっ」
新しい傷口に綿が当てられる度に声が漏れるキザミは正面に座る男の様子をチラリと窺うも、匁は涼しい顔で傷の手当を進めていく。匁の持つピンセットが新しい消毒綿を掴み、それが段々と近付いてくるのをじっと見つめながら、ついに傷口に触れるという瞬間にキザミはぎゅっと目を瞑った。
しかし、覚悟したその痛みはなかなか訪れず、恐る恐る目を開けば、目の前で匁が肩を震わせていた。ピンセットはまだ宙に浮いたままだ。
「なっ、おまえ
……
!」
「だって面白くて」
笑いながら匁が傷口にピンセットで摘んだ綿を押し当てると「い゛っ」とキザミが声を上げたので、匁は更に声を出して笑った。
「戦いで傷を負うのは怖くないのに消毒で滲みるのが怖いだなんて、本当におかしな人ですね」
「笑うなよ!ばか!」
「ふふふ」
匁は腹を抱えながら、目尻に溜まった涙を拭う。キザミが差し出していた腕を引こうとすると、匁がそれを引き留めた。
「滲みるの、嫌ですか?」
「好きじゃないだけ」
「そう」
匁は小さく返すと、キザミの手の甲の傷に唇を寄せた。柔らかな感触とぬるりとした刺激が傷口を覆う。キザミは一瞬背筋を強張らせたものの、傷口にそれ以上の痛みはなく、柔らかな刺激がぬるぬると動いて、やがてリップ音とともに離れていった。
「
……
唾つけときゃ治るってやつ?」
「いいえ、嫌がらせです」
匁は傷の横をぺちんと叩いて、「はい、おしまい」と席を立つ。
「は、え?」
頭上にはてなマークを浮かべるキザミを置いて歩き出した匁は、舌の先をちろりと出して振り返った。
「消毒、ですよ。キザミさん」
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