三毛田
2025-10-08 22:28:54
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39 039. もうすでに手遅れ

39日目
好きだから、もう

 好きだと気づいた時には、もう引き返せない所まで来ていた。
「うわ……
「変な声を出して、どうした」
「なのからおすすめされた漫画を読んでたんだけど、こういうことする相手の気持ちって、理解できないなって」
「そうか」
「丹恒先生、癒して」
「こら」
 俺の返事も聞かずに押し倒し、胸に顔を埋めてくる。
「はあ……丹恒先生の胸、柔らかくって癒される……
 うっとりした表情で、胸に埋めた顔を左右に動かし。
 なんなんだ、彼は。
 こちらの気持ちなど気にすることなく、嬉しそうにしていて。
「他の人にやったら、セクハラだからな」
「わかってる。丹恒にしかしないって」
 それもそれでどうなんだろうか。
「丹恒が甘やかしてるからでしょ」
 数日後。
 三月に相談してみたら、俺が悪いという表情で言われた。
 わかっている。彼を甘やかしていることくらい。
「アンタたち、相思相愛なのに何でそんなに面倒くさいことしてるの?」
 フォークに刺したフルーツを口へ入れ、何てことなさそうに。
……は?」
「ん?」
 言葉を失い、手からフォークが落ち。皿を叩いて音を立てる。
「え。気づいててなかった?」
「穹が、俺を?」
「そっちは多分だから、断言できないよ? でも、アンタは穹の事好きでしょ? 好きだから、あの子が何をしても許してるし、甘やかしてる」
「何をしても、許しているのはさすがに違う」
「ふうん。でも、甘やかしてるんだから、手遅れじゃん?」
「そう、だな。手遅れだ」
 欠けたタルト生地を口へ入れ頷くと、彼女はニコニコ笑って。俺が選り分けておいたチョコプレートを指差す。
「食べないから、いいだろう」
「じゃあ、俺が貰おうっと」
「あー! ウチが貰うところだったのに!!」
 横から手袋に包まれた手が伸びてきて、チョコプレートを奪う。
 三月は立ち上がり、文句を言うが。
「丹恒の物は俺の物。俺の物は、丹恒の物」
 そう言いながら、指先が頬を撫でて。ちょっとべたべたしたので、その手を叩き落して。それから、頬を紙ナプキンでそっと拭く。
「なのかさん、今の見ました?」
「今のはあんたが全部悪い。そのチョコ、楽しみにしてたのに!」
 むすっと頬を膨らませ、ベリージュースを勢いよく飲む。
「バカップルには、ついていけません!」
 ごちそうさま!
 と叫んで、ぷりぷり怒りながら去っていく。
「バカップルだってさ」
 俺の隣に座り、穹は嬉しそうに笑い。
「そう言っていたな」
「丹恒も、俺を好きだってことでいい?」
 問われたら、頷いてしまう。