8月33日
2025-10-08 14:07:35
1301文字
Public 小説
 

【SS】鍵と錠のように【月灯りの星猟団】

SKIMAにて山菜狩りさんに執筆していただいたSSです。(コミッション:https://skima.jp/item/detail?item_id=274416
掲載許可はいただいております。ありがとうございます!

フェイク視点です。
【登場人物】
・カスミ:参謀、面白いことが好きなホムンクルス。
・フェイク:盗賊、神経質で真面目な人間。

「フェイクはお人好しだね」
 突如としてそう言ったカスミは、鍵開けの練習をする俺のことを静かに見下ろしていました。
 真夜中に訪れた、呼んだ覚えのない客人に向かって俺は口を開いて__

『鍵と錠のように』

「なんですか、藪から棒に」
「いや、いつも忙しそうだと思ってね。」

 一体誰のせいだと思っているんですか、と言いかけた唇を静かに閉ざしたのには深い理由なんてなくて。
 手元で玩(もてあそ)んでいた錠に目を落とし、ただ次の言葉を待つことにしました。
 その表情がどこか……いつもと違うような気がしただけ、けれどそれもきっと俺の見間違いでしょう。
 見間違いでなくとも、聞いてはいけないような雰囲気があったものですから。

「君たちのことを見ていると、僕は模倣品でしかないと感じることがある……なんてね。
ふふ、僕にしては感傷的すぎるかな。」

 カスミが自分の手元に落とした視線を追うと、よく分からない言葉の書かれたラベルが視界に入って。
 ……あまり見覚えのない小瓶でしたが、それは確か今日の依頼終わりに彼が押し付けられていたものだったような__、
 あまりない可能性だとは思いつつ確認のために俺はひとつ、簡単なことを問いかけてみることにしました。
 
「まさか、飲んだんですか?」
「うん。特に毒性はなさそうだったから、興味本位でね」

 ふっとやわらんだ眼差しがいつもより感情を映しているような気がして、俺は頭を抱えるしかありません。
 知的好奇心というものを具現化したような性格の彼にとっては些事なのでしょうが、俺からすれば理解不能です。
 毒性がないとしても……よくわからないものを口にして、心配しないとでも思っているのでしょうか?
 思わずもれる溜息にカスミが口角を上げるのを見てしまい思わず恨めしげに見上げてしまいました。

……体に異常はないんですか」
「ないよ、今はね……おそらく、ひとをヒステリックにするだけの薬だから」

 こうして心配をかけさせることも、振り回すことも、多々ある彼のことですから。俺がどう思おうと構わないのかもしれないですが。
 一言だけ、一言だけ念押ししておこうと思って声を出します。ちくり、と言ってやりたい気持ちもありましたし。

「面倒ごとのもとになるので、あまり考え無しにそういったものを口にしないでください」
「あれ、心配してくれているの?」
「しますよ。仲間ですし、……相棒なのでしょう、俺たちは」

 最後の方は声になっていたかも怪しいですが、カスミの表情を見る限り聞こえてはいたのでしょう。
 しばらくこれをネタに遊ばれるのだろうか、と思うと頭は痛くなりますが……不思議と、そこまで嫌な気持ちではありません。
 言いたいことを言えて満足したので今更ながらに薬の効果時間について聞くと、そこまで長くは続かないだろうという推測が返ってきてほっとしました。
 何だかんだ振り回されているとはいえ、大切な相棒だと思っているのは貴方の方だけではないんですよ、と言うのはやめておきます。
 そこまで言うと、またからかわれてしまうでしょうから。