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3i2su
2025-10-07 21:29:38
2944文字
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I hate you!
全年齢┊バキサム
「お前なんて嫌いだ」
攻撃をくらった直後、サムが勢いよくこちらを振り向いて叫んできた。嫌いだといわれるのは初めてじゃないが、正直今はそれどころじゃなかった。右から左から拳が飛んできて、一発は食らってもう一発はメタルアームで食い止める。掴んだ拳を引っ張りもう片方の奴へぶん投げた。ぶつかって伸びている二人に目をやって、それからサムのところへ駆けつける。
「平気か!?」
サムの方も大変だったらしく、積み上げられた敵の数は俺より多い。何発か食らったのか顔に傷がある。サムの綺麗な顔に傷を付けたやつは俺が責任を持って葬るつもりだ。
「平気じゃない」
「当たり前だろ。早く手当て
……
」
平気じゃないなら問題だ。外でトレスが待ってるし手当てのできる奴が一人はいるだろう。だが、今までやってきた任務に比べたら比較的スムーズに済んだはずなのだ。それに傷も見る限りは深くない。
「お前ってほんと見てるとイライラする。だから嫌いなんだよ」
自分でいった癖に俺よりも驚いた顔をして、さらに「嫌いだ」と呟いたサムはついに自らの口を塞いで一言も喋らなくなった。
「好かれてるとは思ってなかったけど、まさかここまで嫌われてるとはな」
いや正直好かれてると思ってた。なにより俺がサムのことを好きだし、同じくらいの熱度で接してくれてると思っていたからかなりショックを受けてる。このまま海へ行って浜辺で静かに過ごしたいくらいには。
「バック、ち、違わない! お前のことが嫌いだ!」
妙に必死な顔をしていうから、ダメージはさらに倍になった。さっき殴られたのよりはるかに痛いし、あと一発でも食らったら灰になりそうだ。
「分かったから何回も言わなくていい」
これ以上は耐えられない。そう思ってさっさとこの場から立ち去ろうとしていると下品な笑い声が響き渡った。
「まだ生きてたのか」
今は虫の居所が悪すぎる。アームをぐるんと回し、男の元へ近づいた。
「へ
……
へへ、こいつがどうしてお前のことを嫌いだって言うのか知りたく、ないのか?」
「なに言ってんだ」
チラ、と後ろを振り向いたら同じく頭に疑問符を浮かべたサムが首を傾げる。
「そいつ、今は正反対のことしか言えなくなってんだよ。つうことは、本音じゃお前のことが好きで好きでたまんね〜んだよ! ガハハッ」
「どうしてそんな真似をする? それといつまでこの状態なのか教えろ」
「自白剤みたいなもんさ。捕まえて使ってやろうと思ったらミスってぶっかけちまった。ったくよ〜、さっきからダッセー会話してるからついバラしちまったぜ。ちなみに効果はそのうち切れるが、その前になんでも自白して素直になるからな」
「効果はそのうち切れるんだな?」
「だからそう言ってン、グッッ
……
」
鳩尾に一発綺麗にぶち込み、ピクリとも動かなくなった男を見て息を吐く。これまでにないほど不愉快なやつだった。だが、心は晴れやかだ。さっきまでがまるで嘘のように世界は明るい。ゆっくり振り向いてサムの方を見る。大量の雲を携えた男に虹をかけてやりたい。
「そんな
……
」
絶望ともとれる呟きさえ、俺にとっては小鳥の囀りのように聞こえた。かわいい仕草の一つでしかない。顔を見て、それがありありと分かってしまったのかサムは口を歪める。カラクリを知ってしまったからには、なにも発することができないと押し黙る作戦に出たのは明らかだった。
「サム、帰ろうか」
腰に手を回し、腕をがしりと掴んで歩き出す。足を踏ん張り、身を引いて、全身で抵抗するサムを半ば引き摺るようにして家へ連れ帰った。
トレス曰く、あの不愉快な男がいっていた通り自白剤の一種を嗅がされたそうだ。あと数時間もすれば素直になんでも話すようになるらしい。本来ならサムが知っている機密事項が漏れないように施設で隔離すべきらしいが、サムの家はその辺の施設よりセキュリティーがしっかりしている。俺が見守るという約束の下、帰ることを許された。
「というわけで今日はお前の家に泊まる。まあ昨日も一昨日もそうだったから今更なんだが」
サムの家には定期的に行くし、最近はほとんどの時間をここで過ごしていた。どうせ任務に呼ばれたらサムと合流しなきゃならないし、情報の共有は媒体を介してでは許されない。一度楽を知ったら二度と元には戻れない。まさに今がその状態。
サムは冷蔵庫に置いてあるミネラルウォーターをがぶ飲みし、ペットボトルを次から次へと空けていく。
「おい、効果を早めたいんだろうが腹壊すぞ」
ペットボトルに口を付けたままジッと睨まれて、これ以上口出ししても無駄だと悟り「勝手にしろ」とカウンターのスツールに腰掛ける。
五本目のペットボトルが空になったところで浴室へと向かうサムを見送り、手元を見る。
日頃から互いに気持ちを伝えあっているとはいえ、自白剤なんかでベラベラと話したくないよな。そうでなくとも、あのサムの様子だと意識は正常らしいから自分をコントロールできず苦しいはずだ。
少しして浴室から出てきたサムはラフな格好になっていた。
「寝室に行ってこい。寝て起きたらいつものお前に元通りだ。俺はここにいるから何かあったら呼んでくれ」
サムの本音を聞き出すチャンスだが、こんなやり方で知りたくない。それに今日はもう十分サムの気持ちを知れた。
「お前は来ないのか?」
「来てほしいのか? 冗談だ、安心しろ。俺は本でも読んでるから」
少し効き目が切れてきたのかも、と内心ホッとしながら告げて棚から本を取り出し栞の挟んであるページを開く。昨晩読んだはずなのに、ほとんど記憶にないシーンで三ページほど戻って読み始めた。
栞を挟んでいたページまできてようやく、顔を上げてサムを見る。
読んでいる間もサムがこちらを見ていることは知っていた。気を遣ってやってるのに一向に寝室へ行く様子のないサムにイライラしながら声をかける。
「ずっとそこにいるつもりか?」
「お前と行きたい」
「だから言ってるだろ、俺はここにいるからお前は寝室で寝ろって
…………
なに?」
聞き間違いかと思ったが、サムの顔を見たら本当のことだとすぐに分かった。驚いて栞を挟まずに本を閉じてしまったが、別にもう構わない。
「寝室で、お前のことどう思ってるか教えてやるよ。準備も済ませてきた」
いったい何の準備かなんて聞くのは野暮だ。
さっき心に決めた気遣いは音を立ててバラバラに砕け散った。
「早くしろよ、バック」
サムの腕を掴んで引き寄せる。キスをしながら寝室へ入ってベッドの上に転がった。
「聞かせてくれ」
「急かすなよ」
仰向けになった俺の上に乗ったサムが顔の横に手をついて腰を上下に擦り付ける。淫靡な光景に鼻息が荒くなったのをクスクスと笑いながらさらに腰の動きを早めた。
「聞きたい?」
「これ以上ないほどに」
首の後ろを掴んでキスをして、舌を捩じ込む。しばらくサムの舌を堪能してゆっくり顔を離すと、唇がゆっくり弧を描いた。あまりの綺麗さに見惚れて言葉を失う。
「愛してる」
至近距離で告げられた言葉を噛み締めながらもう一度、口付けた。
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