匣舟
2025-10-06 22:35:08
1816文字
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月より団子

年齢逆転の久々乱 勘乱です
ふわふわ設定ばかりなのでひろぉーい心でみてください!


 空に輝くまあるい満月を眺めながら、乱太郎は医務室にて不寝番を務めていた。乱太郎が所属している保健委員会では、日中の当番の他に上級生を中心とした不寝番が組み込まれた当番がある。
 不寝番があるのは忍務から帰ってきた上級生が怪我をしていることが多く、怪我を迅速に処置できるようにという理由から保健委員会のみ不寝番が許されている。
 誰も怪我をせず帰ってこないことが一番ではあるが、こういった満月の夜となると月の光によって闇に紛れることが出来ず、怪我をして帰ってくる生徒たちが多い傾向にあるのでこうして最高学年の、保健委員会委員長である乱太郎が医務室にいるという訳だ。
 今日は十五夜ということで、食堂では栗ご飯に里芋の煮物にそしてさつまいもの天ぷらにオマケにはデザートにお団子という秋尽くしの晩御飯が用意されているらしかった。
 乱太郎は不寝番専用の栗ご飯のおにぎりがおばちゃんから用意されていて先程それを平らげたところである。
ああ、おばちゃんのお団子食べたかったなあ……。」
 おばちゃんが作ってくれるお団子は、乱太郎がいつも一緒にいる舌が肥えているしんベヱが絶賛する程で乱太郎はいつもおばちゃんのお団子を食べられる日を楽しみにしていたのだが、不寝番と被ってしまい食べ損ねてしまったのである。
 それもまあ、仕方ない。保健委員としての勤めを果たさなければ。と薬棚の方へ行ってどの薬が多く使われているのか、なければ作ろうか。と薬研を取り出して作業をしようとすると医務室へ向かってくるトタトタと走っている足音が聞こえた。
(誰か忍務から帰ってきたのかしら?)
 薬研を置いた乱太郎は医務室の障子を注視すると、小さいふたつの影が医務室の前で止まって部屋の障子を開けた。
「あ!やっぱり先輩いたあ!」
乱太郎先輩こんばんは!お邪魔しますっ!」
勘右衛門に兵助じゃない。どうしたの?……体の調子が悪い?」
いえ!元気いっぱいです!」
 医務室に訪れたのは急患ではなくそして忍務から帰ってきた上級生でもない二年い組の尾浜勘右衛門と久々知兵助だった。どうやら乱太郎のことを探していたふたりはすぐさま医務室へと入って乱太郎のところに駆け寄る。
「先輩のこと探してたんです!」
私のこと?どうして?」
……ふふん、これをみてくださいっ!」
 誇らしげに勘右衛門と兵助が乱太郎の目の前に掲げたのはまあるい、満月のような……
「も、もしかしておばちゃんのお団子!?」
「はいっ!おばちゃんが先輩に届けてって!」
 僕たち、このお団子を乱太郎先輩に届ける大役を仰せつかったのでここまでお届けにまいりました!と胸を張る兵助の頭を撫でながら、勘右衛門からおばちゃんが乱太郎にくれたというお団子が乗ったお皿を受け取ると、そこには一人では到底食べきれないほどのお団子が皿に乗っかっていた。
こ、これ一人で食べてって言ってた?」
あ、あの実は!」
おだんごを乱太郎先輩に届けるお駄賃としておばちゃんからお団子を食べてもいいよ。と言われておりまして!」
 だから、乱太郎先輩と一緒にここで食べても大丈夫ですか?と上目遣いをする二人の後輩に乱太郎が断る理由などなく、それならお茶も用意しようか!と月をみながら団子を食べる秘密のお茶会が始まった。
「せんぱい、おいしいですか?」
「うん、やっぱりおばちゃんが作ったお団子は美味しいねぇ。あ、勘右衛門こっち向いて。タレが付いてるよ?」
 勘右衛門の口の端に付いていたみたらしのタレを手で拭ってそれを舐めた乱太郎はほら、まだあるからいっぱい食べな?と勘右衛門の目の前に団子を差し出す。
 それを見て羨ましくなった兵助は乱太郎先輩!僕も付いちゃいました!とわざと口の端に付けたみたらしのタレを乱太郎に見せた。
うん?どれどれ?もう、兵助。……こっちにおいで?」
はあい!」
……ふたりともおっちょこちょいだなあ?」
「へへ、ありがとうございます。」
 ほらほら、まだお団子はあるからいっぱいお食べ。と二人の前に団子を差し出す乱太郎に、勘右衛門と兵助のふたりはもぐもぐと差し出された団子を食べ、そのふたりをかわいいなあ……。と愛おしそうに見る乱太郎。そんな三人だけの秘密のお団子お茶会は、二年ろ組の三人が勘右衛門と兵助を探しに来るまで続いたのだった。