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Unシル
2025-10-06 01:24:42
1424文字
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くちすいの話
狛恋SS
原作軸祝言前
致す直前
縦書推奨
⭐︎pixiv掲載済
――
褥
しとね
に横たわる伴侶を背後から抱きすくめる。
ゆるく結われた
烏
からす
の濡れ羽色の髪房と、風呂でほてったうなじの境目へ鼻を当てて
……
。
嗅いだ匂いは、夜風で冷えた狛治の体を芯からあつくさせた。
「恋雪さん
……
柚
……
」
庭の木からもぎとったものだろう、湯船に浮かんだ黄色い果実を思い出す。
「
……
香り、します?」
「ええ」
「それじゃあ
……
」
此方に向き直った幼い女は、狛治の胸元に顔を寄せて匂いを吸った。
(
……
)
熱い吐息がくすぐったい。きっと、恋雪も同じ思いをしているからおあいこなのだ。
「
……
あら?」
猫のように小首をかしげる。
恋雪は狛治を見上げ、[[rb蠱惑的:>こわくてき]]にほほえんでみせた。
「狛治さんは
……
金木犀の香りがする」
本当は
……
香りの話は、どうでもよくて。
――
ただ、恋雪と見つめあって。高鳴った胸のねつを、わけあいたい。
「
……
口吸い、しても
……
?」
恋雪が首を縦に振り終えるまで、我慢ならない。待てのできない阿呆な犬のようだと己に呆れながらも、それをよしとする伴侶の唇に
……
かぶりついた!
八重歯で傷つけないよう、はじめは唇を挟むように。
(
……
嗚呼)
徐々に、舌と舌を絡め合う。
(きもちがいい
……
)
ずっと、そうしていたい。
口だけではなく、体が重なったところから
蕩
とろ
け、境目が曖昧になるような感覚
……
互いの汗が、互いを吸いつける。
恋雪の小さな舌を啜って、嚥下しきれない唾液は口の端からこぼれ落ち、夜着の襟を濡らす。顎をつたって首からはだけた胸元に、唾液が滴るころ
……
その痕を舌で這い、声色がうわずる箇所を舐め上げてゆく。
恋雪の顔を伺いながらコトを進める。汗ばんだ額に乱れた髪の毛がまとわりついているので時折払ってやると、潤んだ目を細めて。
「ありがとう
……
はくぢさん」
と、喜んでくれた。
(
……
恋雪)
狛治も、嬉しい。とても、嬉しかった。
ふと。
喉から手が出るほど欲しい言葉をもらった日に、想いを馳せる。
『私と、情を交わしませんか』
『
……
祝言前に、情を交わすなど』
『
――
石女とわかるのも、早いほうが良いと思って
……
』
思いもよらない言葉に、狛治は目を見開いた。
『恋雪さん』
『お互いのためでも、ありますし』
『恋雪さん』
『
……
ね、狛治さん』
『俺の想いはあなたの体の事情で変わるものではありません』
『
……
』
『しかし
――
お家の
……
道場のため、と思うのならば、俺が種無しだった場合は離縁せざるを得ないのでしょう』
『嫌です!』
『
……
それと、おんなじ事ですよ。
……
そこまで、思い詰めないで欲しいです』
『
……
はい』
『ただ
……
まぁ、ここからはひとりごとなんですが』
狛治はこころのうちを語る。
『夫婦になんのも、情を交わすのも
……
恋雪から話されちゃあ、江戸の男としての矜持が耐えられねえ』
『!』
もし
――
建前の話ではなく、狛治と同じ気持ちを
……
好きなひとと交わりたいと、恋雪が思ってくれていたのなら?
『
……
なぁ、どうだい恋雪
――
今夜、俺の褥に
……
足を運んじゃあくれねえか』
最後のほうは、緊張と高揚で声が掠れていた。
何か咎めがあった時のために、狛治が恋雪を襲ったことにすればいいと、非を狛治が全て負えるような話にしたつもりだ。
師範にバレて破門されればそれまで。
腹を括ったその夜
――
恋雪は、来てくれた。
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