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すだ
2025-10-05 11:44:11
2367文字
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主スバカグ
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春の里のカグヤ 連作
嫁カグヤ関係の小話はこちらにまとめる予定です。
増えた場合はこちらもピン留めします。
#スバカグ
1. 今日の予定は?
主スバカグ。カグヤに会いに行ったら、スバルに会いたいですと聞こえてしまい動揺するスバルの話。
春の里へ降り立つと、いつもむせ返るような花の香りが迎えてくれる。狩人を生業にしている以上、しょっちゅう甘い香りを纏うわけにはいかないのだが、今のスバルは大地の舞手でもある。本格的に狩りをするとき以外は平気だろうとのん気なことを考えている。
そもそもある程度適当にやらないとカグヤに会えない。彼女は春の里に居を構えているのだから。会う回数が絆を深める。スバルの持論である。
「あ、里長。おはよう。今日は早いね」
「おはようございます」
通りかかった里の人たちに挨拶すると、当然のようにカグヤの様子を知らせてくれた。
「今日はカグヤさん、高台の方に行ったよ。多分ひとりになりたいんだろう、ってみんなそっとしてる。良ければ顔を見せてやりなよ」
「あ、今日はカグヤさんひとりになりたい日? じゃああの辺りへは近づかないよう、他のみんなにも伝えておくわ」
「おう、よろしく」
「ありがとうございます!」
春の里の住人は静寂を好むカグヤの性格を尊重してくれる。適度に世話を焼いてくれるが、必要以上に干渉しない。遠くから見守ってくれるのが心地よいのだろう、カグヤは随分と明るい表情をするようになった。いろはによると、積極的に里の手伝いをするようになったそうだ。いつもお世話になっている分、お返しがしたいのだと。
ここの人たちに彼女を託して良かったと、スバルは心から思った。
高台へ向かうと、木箱に座った背中が見えた。白い衣装に身を包んだ色素の薄いカグヤは、春の里の鮮やかな色彩の中でひと際目立つ。里の中であまりに目立ってしまうものだから、もう少し落ち着いた色の服を着ようかと悩んでいたカグヤに今のままでいいと断言したスバルである。こちらとしては探しやすい方がいい。
柵にもたれかかったカグヤの周囲には小鳥たち。さえずりに合わせ、鼻歌を口ずさんでいるのが聴こえる。
「今日もいい天気ですね
……
。あなたたちはどちらまでお出かけですか?」
小鳥が返事をするようにひと声鳴くと、ふふ、とカグヤは笑った。
「そうですか、いいですね。
……
私ですか? 私は何をしようか迷い中です」
小さい頃からカグヤが動物と楽しそうに話すのを見てきた。実際どの程度通じ合っているのかはスバルには分からないが、彼女がとても楽しそうなのでまあいいか、で終わってしまう。
「あ
……
でも」
鳥たちとの会話を邪魔するのも無粋だなと、完全に声をかけるタイミングを失ったスバルに、カグヤの透き通った声が届いた。
「スバルには会いたいです。会いに行ってみましょうか」
「ん゛ん゛っ!」
えらい方向から不意打ちを食らい、思わず変な声が出た。突然発せられた声にカグヤが勢いよく振り返る。
「す、スバル!? いつからそこに!?」
「ご、ごめん
……
。どちらまでお出かけですか? あたりから
……
」
顔を真っ赤にして眉を吊り上げるカグヤ。彼女の剣幕に正直に答えるしかないスバル。
「立ち聞きなんてひどいです!」
「本当にごめん! そんなつもりじゃなくて、カグヤと鳥さんたちの会話を邪魔したくなかっただけで」
最早涙目になっている幼馴染が可哀想になってきた。これはスバルも多少恥ずかしい思いをしないといけないのではないか。よく分からない仏心で、日ごろ心に秘めていても口にしない気持ちを声に出した。恥ずかしいのでカグヤの顔は見られない。
「オレも、カグヤに会いたかった、よ」
思い切って言い切った後の沈黙が気になり、顔を上げるとカグヤが顔を赤らめたまま固まっていた。
「ええと、会いたかったよ?」
「何度も言わなくても聞こえてます!」
ああ、なるほど。処理能力が限界を迎えたから固まっていたのか。スバルの方は一度言葉にしたことで肝が据わったらしく先程までの恥ずかしさはない。そのためどこか冷静に状況を分析してしまった。
可愛いなあ。
カグヤを前にすると頻出する単語である。カグヤと言えば可愛い、可愛いと言えばカグヤ。
思わずにやけてしまうと、毒気を抜かれたようにこちらを見るカグヤと目が合った。スバルが笑うと、彼女は表情を和らげてくれることが多い。今回はそれを狙ったわけではないのだけど、結果的に気持ちが落ち着いてくれたのなら何よりだ。
「それで、どうする?」
「どうする、とは?」
疑問符を浮かべたままの幼馴染に提案する。
「会ったら終わり? それは寂しいんだけど」
素直な気持ちを口にすると、カグヤがぐっと言葉につまる。
何を言えばいいのか迷っているのだろうか。視線がさまよっているのを見ているうち、唐突にスバルの腹が鳴った。
「
……
朝ご飯、一緒に食べましょうか」
「うん、そうしようか」
そう言えば、朝食もとらずにカグヤを探していたのだった。かっこ悪いところを見せてしまい、少し恥ずかしい。
「ご飯は食べた方がいいね
……
」
しみじみ呟くと、カグヤが吹き出した。
「えっ、なんで笑ってるんだよ?」
「だ、だって真剣な表情で何を言うかと思ったら
……
まさか、ご飯の話、ふふふ」
「腹が減っては戦ができぬ、って師匠も言ってただろ」
「そうですね」
耐えきれなくなったのか、腹を抱えて笑い出した。これほど大声をあげるカグヤは久しぶりだ。笑ってくれて嬉しいが、どうにも恥ずかしい。スバルは何とも言えない気持ちになる。
「もう、好きなだけ笑えばいいよ」
半分やけになってカグヤの手を取った。幼馴染はまだ笑っている。
どさくさに紛れて握った手を離されるのはいつだろう。できればもう少し気付かないで欲しいなと願いながらスバルは歩き出した。
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