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望月 鏡翠
2025-10-04 23:20:59
963文字
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日課
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#1863 不意打ち
#毎日最低800文字のSSを書く
龍の雛どもは、人を嫌っていたとして人を見たことはない。まだ巣から出たこともなく、己の力で獲物を狩ったこともなかった。
人間を憎むべきだと言い聞かせられていたとして、それがどんな脅威であるのかを、理解したわけではなかった。
生きる術を知らぬ、巣立ち前の雛たちである。親の脅威を掻い潜ることさえできれば、捕えるのは難しくなかった。
ただ、その親の脅威を掻い潜る、というのが非常に困難ではあるのだが。
空を飛ぶのはあくまで、周囲を監視したり雛の餌を獲ったりするためだ。
龍は驚くべき速さで木々を間を駆け抜け、獣を狩る能力があった。つまり森の中に隠れても、走って追いかけてくる。
地面に残す臭い一つとっても命取りになる可能性もある。
泳ぐこともできるようだし、何より水面に飛び込まれれば魚と同じく気を失うか首の骨をおって、水面に浮かぶことしかできないだろう。
それでもその生き物から、長らく人が訪れていないことに対する油断のようなものは感じ取ることができた。
雛を目視できる距離まで近づくことができたことがその何よりの証拠だ。
雛がある程度大きくなったことも、関係あるのかもしれない。
少なくとも五十年はここに巣を張っているはずだが、雛の大きさは犬ほどだ。いつ孵化したのか、龍の一生は人とは違って随分とゆっくりと時間が流れるらしい。
巣の中に一際小さい雛がいた。
柴犬よりも更に小さい、子犬ほどの体躯しかない。
あれならば、生捕りにして金持ちに売りつけられるのではないだろうか。成長して手に負えなくなって人を噛み殺したとして、その頃に萬木は金を受け取って遠くにいる。
生きた龍。
魅力的な響きだ。
最初の一射を、目玉に向けて放つ。
もしそこに刃が通らなければ、いよいよお手上げだ。死なないようにと祈りながら、人足を囮に逃げるしかない。
日頃の行いが良かったのか、天は狩人に味方した。
殺気というよくわからないものが、この世にはある。
人に知覚できぬ感覚なのか、それとも野生の勘なのか、獲物を射る寸前に何故か存在を気取られ逃げられるという経験を、狩人ならば何度かすることになる。
龍はその強さゆえか、或いは油断ゆえか、殺気を感じ取ることはできなかったらしい。
山間に絶叫が響き渡った。
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