ゆうり
2025-10-04 23:04:43
3424文字
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夢の生まれるところ。

半日くらい一気に捏ねたハーキュリーズ×終帝くんの過去模造話。
別名年下彼氏の奮起ポイント…名前は必死になって出してませんもう諦めたい無理だよ。

銀を持つ太陽の人が目の前に居たから自分は強くなろうと思った。



自宅の玄関扉を開ければすぐに帝都住宅街の一角、憩いの広場がある。
まだ9歳のハーキュリーズでもそこなら危険はまず無いだろうと1人で行く事を許されていた。
何よりもそこに行けば会いたい人がいるから、自分に与えられた仕事を早目にこなし母親の許可を得て今日も広場に向かうと他の子供達と大きな本を覗き込む会いたい人の姿を見つける。
本当なら駆け寄って抱きつきたいのに少しは成長して分別を覚えてしまったらしいハーキュリーズはそれが出来ずに少し距離を置いた場所からその光景を眺める事しか出来ずにいた。
(少し前ならこんなこと無かったのに。)
何故か脈打ち始める自分の鼓動の大元がある辺りをぎゅうっと左手で握り締める。
あの人がずっと憧れのお兄さんだから?でもそれは今も昔も変わらないのに。何で突然。
ハーキュリーズが近付けずに立ち止まっていると本を捲る際に視線を動かした際に自分を視界に捉えたであろうその人がふっと顔を上げてハーキュリーズに向けてくれた。
少し顔を傾げるとふわりと広がる銀色の髪と微笑むと柔らかくなる夕闇が訪れる前の境の色合いの瞳を見る事を自分が許されている、と感じるだけでハーキュリーズの気分は良くなってしまうので単純だなという自覚はあるがそれ以上にただただ嬉しい。
「こんにちはハーキュリーズ。仕事は終わったの?」
「朝市の買い物も掃除も洗濯も終わらせてきた!母さんにもちゃんと行ってくるって伝えてきた!」
「そっか、良く頑張ったね。」
その人は自分の事のように喜んで笑顔を見せてくれる。
それでも、自分に向けて自分の名前を呼んでくれた声を聞けただけでも満足なのにもっとと求めてしまう。
「あの、あのさ!」
「うん?」
「頭!撫でて欲しい!」
母親にだってそんな事頼むことは無い、だってもう赤ん坊でも無いのだから。
それなのに、家族でもないのに触れて欲しいと切望する人がいる。
突然の事でその人はキョトンとした顔をしていたが笑みを見せて右手を寄せてくれたので、ハーキュリーズはそれを受け入れる為に前に頭を傾ける。
「いい子だね、ハーキュリーズ。」
そう言いながらハーキュリーズの決して梳きやすいとは言えない硬い髪の毛をぽんぽんと軽く触れ、そのまま撫でてくれた。
望んだことを許してくれて嬉しいはずなのに。ハーキュリーズよりも大きな手のひら、まだ大人になる前の、少年の終わりの柔らかさと厚みを感じるその手を自分が取るにはまだ早すぎるとただただ実感させられる側面もあって複雑な気持ちになってしまう。
でも今はただ、これを受け入れていたい。いつか自分が与える側になる日を見据えて。

ふっと、頭から重みが消えた事で嬉しくも苦い時間が終わりを迎えた事をハーキュリーズは知る。
「さて、皆揃った所でこの前の物語の続きに向かおうか。」
手振りで広場に集まる子供達の視線を集め、声変わりを迎えて低くも耳に優しく響くその声でアバロンの歴代皇帝達が成し遂げた英雄譚を語るその姿はまだ子供である自分はもちろん、広場を見守る周囲の大人達の意識をも奪う力があった。
世界各地に跋扈するモンスター達や宿敵と定める七英雄達との戦いの物語を聞かされているうちに、もしこの人が帝国の兵士を統率する隊長になったらどれだけ凄い働きをするのだろうと思わされてしまう。
もしかしたら皇帝となって世界を救う事だって有り得る事かもしれない。
そうなったらどんなに素敵だろう。

ちょうど物語を最後まで読み切った時には夕暮れが近付く時間だった。
そこここにある民家からは夕食を準備しているであろう煙や香りが漂い出している。
その人は大きな本をパタリと閉じて立ち上がる。
「さて、そろそろお開きにしようか。皆、気を付けて家にお帰り。」
子供達はその人に口々にお礼と挨拶をしながら住宅街に散らばって行く。
ハーキュリーズも何かを伝えてから帰りたいと思うが、興奮が冷めやらずこれといったうまい言葉が出て来ずにいた。それを不思議に思ったのかその人が豊かな銀の髪を揺らしてハーキュリーズの顔を覗き込んでくる。
「疲れたのかな?ハーキュリーズの家はすぐそこだから遠くは無いけど送ろうか?」
「う、ううん、大丈夫!男だし1人でも帰れる!」
この人にだけは自分の弱いところは見せたくないと虚勢を張ってしまう。
そんな小さな物でこの人にかなうわけが無いと解っていてもそれでも。
「次は?次はいつ会える?」
これまでも特に決まった日があった訳じゃなかった。せいぜいが晴れた日の午後、というくらいで。
その人が広場にいたら何となく子供達が集まるので子供達の声ですぐにわかるのでそれでも何も問題は無かった。それでも今日は何故だか聞かないといけない気がして。
ハーキュリーズの小さな不安に反応したのか偶然の一致か、その人は美しく整った眉を顰めて瞳の色を暗く落とした。
「君はとても注意力というか、観察力があるのかな?本当は皆がいる時に伝えるべきだったのだけど。」
夜が近づく事で周囲の色合いも変わり、その人の瞳と同じ色が空に垣間見えた。
この合間の時間に蕩けてしまうのではないかとハーキュリーズはその人の右手を自分の両手でぎゅっと掴む。だが自分の両の手でないと包み込めないその片方の手のひらに自分との違いをまざまざと思い知らされてしまう。
(この人を、今の俺じゃ捕まえられない!)
悔しさのあまりボロボロと涙を零してしまうがこんなのは男らしくない。
それをよりによってこの人の目の前で見せるなんて。
それでも一度堰を切ってしまったものは止めようもなく流れ落ち続けるが、その涙をその人が自身の左手で受け止めてすくい取ってくれる。
「泣かせたくなかったから何も言わずにと思っていたけど君には伝えておく。今度帝国に使える兵士になる事を許されたんだ。ただそうなるとここには来る事は難しくなる。でもこれは私にとってしなければいけない事の第一歩なんだよ。」
その人は泣き続けるハーキュリーズに向かってひとつひとつ丁寧に理由を教えてくれた。
静かに優しく叶った夢の今後について語る姿を見ているうちにハーキュリーズの心も落ち着きを見せる。

自分も帝国の兵士になれば、この人に近付ける。
その人の夢を聞かされるうちに生まれたかもしれない自分の夢。

泣き止んだハーキュリーズを見てその人もホッとした表情を見せる。
「良かった、泣き顔で一旦お別れは寂しかったから出来れば笑って欲しいよ。」
「じゃあ一緒に笑って、また会おうね、は?」
またこの人に会う為の理由が出来た。もう泣いてる場合じゃないのだ。
ハーキュリーズは顔に残る涙を雑に自分の腕で拭き取ってその人に笑いかけると同じように笑顔を見せてくれる。
「そうだね。お別れじゃない、また会おう、だな。」
この夕闇にも隠れることなく淡く輝く笑みを浮かべるこの人にまた会うために、その手を取って一緒に歩むその日のために。
今はまだ敵わない小さな右手でその人と約束の握手を交わすのだった。





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っていう感じに昔のハーキュリーズはちっちゃくて可愛かったのにな~!」
憧れのその人現バレンヌ帝国皇帝陛下から見た過去のハーキュリーズはそういう見方だったのかと10年以上経った後に聞かされ当のハーキュリーズはなんとも言えない気分になった。
再会の約束をして、握手をして別れた後の自宅での夕食中に「俺、帝国の兵士になる!」と両親に告げた時は唐突すぎてそれはそれは驚かれたが父も帝国に使える兵士であった為、少し早いとは言え父には喜ばれたように思えた。
ただ適正や自分の性格上の事情もあって傭兵という帝国兵にしては特殊な契約の上で仕えているので父の期待からは逸脱してしまったかもしれない罪悪感が無いでもない。
それでもこの力があったからこそ、今この人の側にいられる。
あの時からこの人を目指して、追いかけたから。
そんな感慨に耽っていると皇帝陛下があの頃よりもさらに大きくなった手のひらで、あの頃と違い地毛の茶色を紅く染めた部分をぽんぽんと撫でてくる。
「まあ今も可愛いんだけどね?」
もうこの人に勝てなくても、この距離に居られればそれで良い。