asahito
2025-10-03 22:25:42
11958文字
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snakebite-R18①

前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
阿梨夜さんとユイマンが一緒にお風呂入ってプロポーズしたらその次は。

 二回目のプロポーズも、本当は私の方からしたかったけど。彼女の方からしてくれても嬉しかった。
 一回目のプロポーズの時は仕事に追い詰められていた彼女を見ていられなくて、もう私と一緒に住もうと半ば強引に連れ出し。
 そのまま彼女と一緒に住むことに文句を言わせない為に諸々の申請をして周囲を黙らせた。
 部屋の解約も荷物も必要なものも、全部全部業者に頼み私がここに持って来た。
 これ以上、彼女を追い詰めるなら私が黙ってはいないと。彼女の会社に威嚇するように無言の意志を示した。私が怒りを露にすれば。
 何かしらあの連中が不都合になるということは理解していたからだ。縁を切った家柄を振りかざすのは好きではないけれど。
 ここは彼女を守るための場所で。私が動くことで彼女を守れるのなら、何だって卑怯な手だって利用してやろうと。
……嬉しい」
 左手の薬指への口付けだけでは物足りないので、他の指にも口づけてプロポーズの余韻に浸っていると。
 彼女は心の奥底から幸せそうな表情を浮かべた。あのぼろぼろの状態からこんなに笑ってくれるようになれて、本当に良かった。
「本当に私、阿梨夜と結婚できたんだ」
「去年から結婚してるよ」
 怒涛と呼ぶしかない一年間。最後の最後まで易しくない記念日への路。故郷の山よりも厳しいその険しい獣道を、よく二人で無事に歩けたものだ。
 しかもこの先も獣道は続き。何なら道が崩れて崖っぷちに二人で立ち往生なんてことも起きるかもしれない。できれば平坦な道を行きたくとも、誰もが道を選べない。
「分かってるけど……でも、改めてそう思うくらいいいじゃない」
 そう言って彼女が私の躰をぎゅっと抱きしめた後、顔をゆっくり近づけて来る。目を閉じて顔を傾けると、すぐに彼女の唇が重なってきた。
 浴槽の中は居間や寝室よりも音が反響しやすいから。舌を絡めずに唇を吸うだけでも音が嫌に響いて恥ずかしい気分になってくる。
……あのさ、前からずっと聞きたかったんだけど」
 気恥ずかしさから、質問で雰囲気を少し壊してしまうが。いつも、今までも聞けなったことを記念日の今日に聞いてもよいだろう。
「なあに?」
「なんでユイマンはあの時大泣きしたのかなって」
 その質問がたとえ彼女を不機嫌にすると分かっていても。どうしても、聞きたいことはある。この疑問は十年以上は持ち続けて問えなかったからだ。
……もう、なんで蒸し返すのよ?本当に今夜は意地悪ね」
 案の定彼女は気に障ったのか少し声を低くしたが。お湯を至近距離でぶっかける技の二度目はなかった。
「そういうつもりじゃない。いきなり泣き出された方の身にもなってよ」
 何であれ彼女が泣くのは嫌だ。だからこそ、彼女を泣かせてしまった自分の落ち度を知りたいと思っている。
 また知らず知らずのうちに私が彼女を泣かせるような行為をしてしまったら、本当に自分が泣くよりも嫌だから。
「なりたいものになれないって、思ったからよ」
「え?」
「阿梨夜の妹になれたらいいなって、小さい頃ずっと思ってたの。本当の妹さんが羨ましかった」
「そう、なんだ……
 私の妹になりたいなんて、そんな風に彼女が思っていたなんて知らなかった。
 そもそも彼女は私がいなくたって沢山可愛がってくれる姉兄に囲まれているのに。
 それでも私の妹になる願望を抱いていたのは驚きだ。私の綺麗な妹を容貌以外で羨ましいなんて、思う人がいるのか。
 ユイマンもすごく綺麗だから容貌なんて気にしないのかもしれないけど。
「どんなに好きでも妹じゃないから同じ家で一緒に暮らせない。なら、阿梨夜と結婚すれば一緒に暮らせるかもって考えてたの」
 当時一番上のお義姉さんが結婚間近だったこともあり。旦那さんになる人が家に挨拶に来たりもしたのだろう。
 そういう部分から結婚というものに漠然とした憧れみたいなものを抱いたとしたなら、彼女の考えがそうなるのも自然だ。
 希望を抱いていた時に私が女同士では結婚できないと、悪気はないけど言ってしまったから。
 彼女はそれに絶望して深く傷ついてしまったのか。今よりももっと純粋で素直な幼い頃だから相当な鋭さと深さで傷ついたのだろう。
「それなのに阿梨夜があんなこと言うから無性に悲しくなって」
 少々顔を赤くしつつも。当時の真相を語ってくれた彼女には感謝しかない。そしてあの時から私のことが好きだったというのも驚きだった。
 私のユイマンに対する感情が。恋や愛と等しいものだと知ったのは、あれからだいぶ後の話だというのに。
 緩みそうになる口元をなんとか理性で押さえつけ。彼女をそっと抱き寄せた。当時の恥ずかしい記憶を厭いながらも、ちゃんと教えてくれた感謝と。
 底のない愛おしさが溢れてきて。感情が湧き水のように止まらないというのは、きっとこういう事なのだろう。
「じゃあ……私のせいだね」
「そう、ぜーんぶ阿梨夜のせい」
 密着した状態で首筋に歯を軽く立てられ、反射的に躰をのけぞらせてしまう。それは痛みよりも、経験から来る期待と一抹の不安。
 彼女がこうなる時はもう、浴槽で私と深く交わりたいと望む時だから。簡単には止められないし、止めたいとも思わない。
 寧ろ今夜は。心行くまで交わることで私たちが結ばれたことを確かめたい。
「私もユイマンが本当の妹だったらってずっと思ってたけど……そうじゃなくてよかった」
 実の妹をいらないなんて思ったことはない。妹は妹で、私が醜い故に押し付けてしまった部分もある。
 私のように醜かったら、こんなに面倒くさいことに巻き込まれることなんてないのにと何度も言われた。
 絶対に私みたいな顔にも躰にもなりたくないと、心底嫌味を言いながらも。誰にも見向きもされないから、勉強や読書だけに集中して暮らせる私を。
 華やかな彼女はどう思っていたのかと、今は考えることもある。華やかさは、永久に続けることなんてできなくて。
 それを維持するために常に変化を求められ続ける状態を意味する。綺麗な状態、美しい状態、それを保つには。労力と時間がかかるのは分かっているから。
 私の職場の近くは桜の名所で賑わうが。その賑わいの前に、何もない冬が必ず来る。つまらない状態だと、嘆く人もいるが。それがあるからこそ華やかさは際立つ。
「妹だったら結婚できないものね」
「これ以上、佳人の妹が増えるのも困るよ……
 この子もあの子のように綺麗に産んであげられれば。両親が私に対し近寄りがたさや負い目を持つように。
 私も妹に、どうしようもない羨望と負い目を持たざるを得ない。私だけ綺麗に産まれられなかったことが、全部悪いの?
 私が妹と少しでも似ていて今より綺麗だったら。仲良しの似た者姉妹になれて、今も一緒に暮らせていただろうか。

 その代わり。きっと、その時はユイマンが私の隣にいない。

「兄弟がいっぱいいるのも賑やかで楽しいのに」
 いすぎてちょっとうるさいけど、と彼女は言うが。
 私から見ればちょっとどころじゃない彼女の実家の新年会、今から胃薬とか肝臓に良い食べ物を用意しておいた方が良いだろうか。
「私は静かな方が好き」
 彼女と私は動と静のようなものなのに。どうして好きになったのかと考えても、多分彼女が相手だったからとしか言いようがない。
「ふーん……じゃあ静かでいられるように頑張ってね?」
 にっと笑って彼女は私を浴槽の縁に肩を掴んで押し付ける。そして今度は先ほどよりも強引に唇を重ねて来た。
「あっ……
 不意打ちに近い状態で口を吸われてしまうと、張れる予防線も全てなくなって完全に彼女の雰囲気に飲まれてしまう。
 無防備な全裸のまま、壁際に追い詰められているということが。凄く自分を無力だと自覚させ。
 彼女が何故か水に近い場所にいると強くなる訳の分からない現象も相まって、少しだけ恐怖心を抱くのだ。
 勿論私が嫌だと思うことは絶対にしないし。彼女の舌遣いは私より激しくとも、傷つけたりは絶対にしない。
 顔を何度か傾けて唇を重ねるだけでもちゅ、ちゅと水音が浴室に響き。苦しくて呼吸を求める私の声も、壁に反射して鼓膜を揺らしてしまう。この建物は壁が厚いから隣に音が漏れたりはないかもしれないけど。
 『そういう』行為の音は、たとえ気づいていたとしてもよほど迷惑でない限りは相手も言いにくいだろう。
 ここの住民は幸い比較的穏やかな住民が多いエリアの為、揉め事もあまり起きていないというのに。
 こういった騒音で貼り紙でも共有部分に出された日には恥ずかしくて外に出たくなくなってしまう。私たち以外の住民が原因であったとしてもだ。
……ん」
 私の心配を知ってか知らずか、ユイマンが舌で唇を何度も舐めて私に口を開くように促す。
 触れる時はいつも舌を使う彼女。手を使うことがあっても、それはおまけ程度のもので躰への愛撫も口や舌を使いたがる。
 唇に唾液を塗される度にむず痒さと。わざと濡れた音を出して私の唇を啄む彼女の試すような態度が、ぐいぐいと締め上げるように私の理性と体力を奪っていく。
 お湯で暖められた躰は。汗が流れると共にぼんやりとした頭になってきて力が抜けそうになる。
「くち、あけて……?」
 幼い頃のおねだりの様に言われ、記憶が蘇るとともに素直に口を開いた。ユイマンのおねだりに弱いのは、今も昔も一緒。
 開いてしまえば貪られるように舌で蹂躙されるのは分かっているのに。両手で腰を抱かれながら体重をかける口づけにただただ、声を漏らしながら答えるしかなかった。
 舌と舌が絡み合えば音が出てしまい。その音は唇だけの口付けよりも、大きくて、淫靡だから。
 耳が唾液と舌が交わる音で犯され、咥内は彼女の舌で愛され犯され。聴覚と触覚が同時に快楽で満たされることで自分の理性がゆっくり壊されていくのが、分かるのだ。
「ふぁ、あ、あ……
 呼吸が苦しくなり空気を求めて声が漏れだす。響かないで、聞こえないで。
 愛されているのに心の奥のどこかが怖いと感じる。愛している彼女にされているのに、別のナニかのようで怖い。
 平均的な人間の長さより舌が長い彼女は、私の喉の奥近くまで伸ばすことができて。それがまるで舌を食べられてしまうのではないかという錯覚を覚えるからか。
 私に触れたくてどうしてもそうなってしまう、と彼女は申し訳なさそうに謝るけれど。あまりこういった考えはしたくないけれど。
 折に触れて思うことは、多分そういった要素を彼女が持っていると私が感じるからなのだ。証拠や痕跡から、時代を特定する技術を持つ私だからこそ。
 彼女の奥を擽っていた彼女の舌先が今度は唇と歯の間を撫ぜる。漏らすことがないようにと、口の中を巡る彼女の舌に。下半身がどんどん熱を持って切ない感覚が昂って行ってしまう。
 躰を綺麗にするために入っているのに、その中を汚してしまう。
 これは女の生理反応だから仕方ないと分かっていても。洗い場で清めないといけないという馬鹿真面目さが無意識に出たのか、腰を少し浮かせただけで。
 私の腰にあった彼女の手は今度は私の躰を抱え。浮力が働く分軽々と私を彼女の膝の上に抱きあげた。私の唇を嬉しそうに貪ったまま。
「あ……
 この体勢になると、下手したらユイマンにばれてしまう。お願いだからこれ以上はまだ濡れないで、と祈っても。
 本能の部分だけは頭だけでは制御できない。
……そんなに汚すの嫌?」
 顔を離した彼女は私に首を傾げて尋ねるが。嫌だとか、そういうのじゃなくて。恥ずかしいという気持ちがどうしようもないのだ。
 何度彼女と躰を重ねても。交わっても。私も彼女と交わりたいと望んでも。いざその時になると臆病な部分が顔を覗かせる。
 そういう態度を取れば彼女が私を傷つけたと誤解してしまうのに。私だって、貴方が心の底から欲しい。
「嫌じゃ、ない……
 欲しいと思う前に諦めていた私が、心から欲しいと希ってしまうから。一番に欲しがってもらいたいと望んでしまうから。
 訳が分からないくらい躰が熱い。ぼんやりした頭が働いてくれなくて。毒が回ったみたいに彼女の成すがままになってしまいそうなのだ。
 されてもいいけど。されたままで、すごく恥ずかしい事になってしまったらどうしよう。
 私が石のように頑なに守っていたものを、常に彼女には簡単に壊されてしまって。壊されずに済んだモノの方が少ない。
 そうやって必死になっている私の事を彼女も理解をしている。壊したとしても私を傷つけずに済む方法を考えずとも知っている。その思慮深さに、いつまで経っても追いつけそうもないから余計に怖いの。
 荒く軽い呼吸をして落ち着こうとしても彼女が私の躰のあちこちにずっと触れ続けて落ち着けない。
 今は背中や臀部を触ってくれている分気づかれにくいけど。前の方も触れられたらどうしよう。汚したくないって思っても、もう汚してるかもしれない。
 ユイマンの肩に手を置きながら自分はどう動けばいいのかと思考を巡らせていると、彼女が私の右手をいきなり掴む。
「ユイマン?」
 その右手は彼女の下腹部へと運ばれ。突然の事に何もできない私はそのまま指先を彼女の秘部に沈められ、お湯の中でもぬるりとした感触があるのを確かに感じた。
 他人の手は自分の手とは違うため、敏感な部分を擦ってしまったのか。ユイマンは軽く口を開けて喘ぐ。
「んっ……
 この感触がどうことなのか、同性故にすぐ分かる。防衛本能故のものじゃなくて欲するからこそ起きるものだと信じたい。
 お湯の中で私の右手が解放されてそれを顔の前に持って来ていても。明らかにお湯以外の、卵白のような滑りと粘着質の糸が私の指に纏わりついている。
 彼女が私と同じくらいに感じてくれているのが分かって、嬉しい気持ちと。彼女以上に昂っている私のことをもう彼女はとうに知っているのではないかと、羞恥心が襲う。
「汚すなら私も一緒だから……ね?」
 彼女なりの慰め方に己の情けなさを感じつつも。纏わりついた卵白のような滑りを、彼女の目の前で指の付け根までたっぷりと口に含むことで。愛情の証を示す。 
 その私の行動を見て彼女の瞳孔が少し変わった気がしたのは、本能と熱に冒された私の幻視か何かだったのだろうか。
 人間も光の量などで瞳孔が勝手に調整されるのは当たり前の話だが。それとも違う、何か興奮状態の時だけに見せる特殊な瞳を彼女は持っている。
 銀髪に映える色素の薄い肌。それでも紅い瞳は正反対の私と唯一同じ色。口元では嬉しそうな笑みを浮かべていても、その瞳は私を逃すまいと奥底で光っていて。
 要素は重なり合い確証へと向かわせる案内板のようなもの。それ故に、導き出されるのは。
 
 まるでユイマンは蛇みたいだ。

 蛇と言っても道を歩いていてたまに出くわす土色や緑色の蛇ではなくて。神の使いや化身とも呼ばれる白蛇。
 各地でそれが祀られている神社は多くあり。私と彼女の故郷もそういった伝説が各地で残されていたから、馴染の深い生き物ではある。
 その白蛇と、彼女が。時折重なることがあって。
 蛇に喩えられてあまり素直に喜ぶ人はいないし、干支が巳年というだけでも可愛くなくて嫌だ、と嘆く人すらたまにいるから。
 口に出したことは一度もないけど。そう思うことは何度もあった。
「うん……
 蛇にじわじわと追い詰められて巻き付かれた獲物は。いつしか抵抗を諦めてその牙と口の中に収まる事を選ぶ。
 精力が強いイメージも。蛇は交尾にたっぷりと時間をかけることも。昂らせるために相手への愛撫を惜しまないことも、全てが彼女らしさと重なってしまう。
「阿梨夜が汚したら私が全部洗ってあげる」
 耳元でそっと囁きながら、私の胸元に口を運び先端を吸い始める。全部洗ってあげるという言葉が響き。
 最初は吸われるだけの感覚が、だんだんと広がって行ってやがて快楽へと繋がっていく。
 ちゅう、ちゅ、と吸う音が浴室の中だから良く響いて。彼女が先端から口を離すだけでも、その音は淫靡に水の音を奏でた。
「あ……
 私の胸は彼女よりも大きいらしく、吸いやすくていいと言っても。彼女に吸われ過ぎたせいではないかと思うくらいにユイマンはこの行為を好む。
 舌先と口での愛撫は、手よりも私を強く感じられるから。それが理由だと言うれども。
 蛇は目が悪い故に温度や匂いを舌で感じると図鑑で読んだことがある分、視力は悪くないのにそういうことをすることが余計に。
 彼女を蛇みたいだと思ってしまう理由になってしまう。
 彼女は人間だ。並の人間よりも美しくて綺麗な、人間なのだ。蛇のわけがない。蛇が恩義故に化けて娶られた話が数多あるにしてもそれは伝説に過ぎない。
「ん、やぁ」
 先端を甘噛みされて声が漏れる。痛くて泣くほどではないけど、私に噛みつく癖がやっぱり彼女は直らない。
 もう痛くしないし、阿梨夜が嫌なら控えるからってあれだけ私に言っても。前に比べて傷は残さない強さになったとしても。
 それでも、私に歯型を残してそれを眺めたがる癖は抜けきらないのだろう。噛み痕は傷に繋がりすぐに医療機関に行かないと危ないという情報も知っているのに。
 消毒液を浸した脱脂綿で私の躰に当てながら。阿梨夜が好きすぎて、どうしてもやってしまうと言われた方が恥ずかしい事を言うのだ。
 愛咬という行為は旧くから指南書にも書かれている。そういう癖を持つ人間はいるのだろう。いたとしても、噛まれる側は無事かは書いてはいない。
 痛み以外にも下半身が痺れるような感覚が走って。少しずつ彼女に慣らされた躰に変化があることは分かる。
 防衛本能故に変換するようになってしまったのか。
 それとも私が元々我慢強いからこういった我慢することに対しての強さが変な方向に行っているのか。行かないで欲しい。
 私の拒絶ともとれる喘ぎにユイマンははっとなって私を上目遣いで見るけれど、私が笑いかけて彼女の唇をそっと塞いだ。そのまま舌を侵入させて彼女の中を蹂躙する。
「んんっ」
 この体勢で私の方からするのが珍しかったのか、彼女は私の背中に手を回して私の舌を受け入れる。
 私の舌が彼女の舌に絡まる度、躰がびくびくと反応しているのが愛らしくて。彼女は精力が強くても。私に攻められれば快楽には弱く、それを悦んで受け止めてくれる。
「は……ありやぁ……
 舌をわざと外に出し、彼女の舌を引っ張るように連れ出した。短髪の幼子だった彼女は。私の長髪を目印にして、いつも私の後ろをついてきた。
 幼い頃抱いていた純粋に愛らしいが、愛しいに変わったのはいつだったか。その瞬間が未だ思い出せない。
 生まれるもっと前から、この想いを抱いていたなんて言ってしまえば。職場ではそんな空想じみた仮説を立てるんじゃないと、言われるだろうし。
 論理的思考を好む職業に就いている彼女からも面白いことを言うのね、と笑ってもらえても信じたりはしないだろう。
 連れ出した後に。彼女の舌を軽く舌先で擽ると。そこが感じやすい部分であったのか、大きくと躰が跳ねて顔を背けるように喘ぐ。
……ユイマン、かわいい」
 喘がされてばかりでは年上の面子も立たない。左手の掌で彼女の顎に手を添えて言うと。彼女は途中で逆転されたことが不服であったのか。
 軽く私の左手の指を指輪の部分を避けて噛み。かわいいのは阿梨夜の方なのに、とよくわからない不平を漏らした。
「あーちゃんのいじわる」
……
 幼い頃の呼び名を今言うのって、結構反則だと思うんだけど。
 彼女の根本は変わってないし、彼女の中の私もきっとあの山の中で追いかけていた時の私なのだろう。
 謝罪の代わりに彼女の頭を優しく撫でると。ユイマンは私の躰を抱き寄せて今度は私の腕や肩を甘く噛み始めた。意地悪をしたつもりはないが。彼女にとっては臍を曲げてしまうような横槍だったのだろうか。
 彼女の歯に痛みはない。固い感覚はするけど、当たるだけであって身動きを取らなければ大丈夫だろう。逆に私が動くと彼女の顎や歯に衝撃を与えてしまうため、じっと耐えながら彼女の髪の毛の間に指を通す。
 多忙で放っておいたせいで伸びてしまった髪の毛は、相変わらず切りに行こうとしない。こんなに暑い時期でもよく結わずに平気だと思っていた。
 手入れはあまり熱心にしていなくても濡れた髪には綺麗に指は通り、艶やかな光沢。綺麗な子は、何もしなくても綺麗なのだ。
 顔の位置を下げていくとお湯が口の中に入りそうで心配になるので躰を上にずらそうか悩む。だけど彼女は私の躰を固定していて、お湯の上にある部分だけしか噛む気はないようだった。そこまで、私の躰を噛みたいというのは。鬱屈が溜まってなければいいけど。
「私がユイマンに噛まれても大丈夫な躰だったら、もっといいのにね」
 撫でていた右手を彼女の前に差し出すと。掌の腹の部分を甘噛みし始める。これじゃ蛇というよりも、犬か猫ね。
「んぅ?」
 どういう意味?と言おうとしてるのだろう。私の右手を咥えたまま首を傾げて私を見る。
「ほら……どんなに噛まれても肌が変わらなければ気にしなくていいでしょ」
 もっと鋭い牙で噛まれても傷がつかない岩の躰のようなものだったら。気が済むまで彼女に夜通し噛んでもらって、朝を迎えたっていいのに。
 そして何食わぬ顔でまた皆の前に出て、自分の仕事をしていれば何も変わらない。
……それって、阿梨夜だけが犠牲になるってことじゃない」
 右手から口を離して彼女は言う。馬鹿な事を言うんじゃないという表情で。噛み癖を気にしてはいても、噛むことをやめられないのは仕方ないと私は思っていても。
 彼女の中では気にする部分なのだろう。どんなに直らなくたって。私が本気で噛むのを止めて欲しいと思っていないと、理解していても。
 私を傷つけるということに繋がるなら、冗談でもユイマンはそれを否定する。
「もしもの話よ」
 ユイマンが蛇みたいだとか。私が岩のような体を持っていればとか。全ては、空想という名の幻即ち幻想に過ぎないから。
 読書好きで色々な書物を読み漁るうちに、こんなことを考えてしまうのは馬鹿げているとは思っていても。それを考えることに罪はないでしょう。
……だから、今の躰で十分に愛し合えるはず」
 そう言って彼女の額に口づけて、続きを求める。口付けだって、甘噛みだって、愛撫だって、彼女がしてくれれば全部が全部私を昂らせてくれるものだ。
 昂り過ぎたモノはいつかは戻らなければならないから。そこに戻してもらうためには今度は彼女が私を連れ戻さなければならない。
 ユイマンも私がしたいことは理解しているのでどうしたいかを尋ねて来る。
「ここだと口は使えないから……指でいいかな」
「大丈夫」
 でもお湯が入っちゃう、と彼女は心配するけど。どのみちお湯を汚しているからあまり気にはならない。
 完全に仰向けにすると終わる前に溺死するため。色々と体勢を考えた末に、結局私がユイマンに抱っこされるような体勢を選んだ。
 これはこれですごく恥ずかしい上に。お湯の浮力がある分、体重がかからなくて深く入れる為には私が頑張らないといけない。
 私が彼女の上に跨って、その下で彼女の右手の中指と薬指が待ち構えている体勢。腰を落とせばそのまま受け入れられるだろう。
 立膝の状態で彼女の裸体と私の裸体が擦れて。彼女の左腕で私は絡めとられた。
「私、こうしてるから自分で動ける?」
……頑張ってみる」
 洗い場で求められる時とは違って、私から求めないと何も手に入らない状況は新鮮で。それ故にユイマンも私に色々と試してもらいたいのか。
 二人が今後も良い関係を続けていく為とはいっても。彼女の精力にいつか根負けして、もっと凄い事をするときが来たらどうしよう。耐えられるかな。
 こんな悩みを考えられるだけ彼女を助けられたと思えば、どんなに幸せかと思うけど。できればあんな事がなく彼女と結婚できていれば、どんなに幸せだっただろうか。
 悔やんでも、仕方がないけれども。悔やむからこそ、これから彼女としたいことが沢山浮かぶのだろう。
 指先が私の中に触れるか触れないかの瞬間に、もう一度私はユイマンに口づける。
 啄むだけの口付けは、今から受け入れるからの合図だった。
 そうして彼女の首の後ろに手を回し好きよ、と囁くと。私も愛してる、と答えてくれた。
 言葉の投げかけが噛み合ってないし、そういう科白は卑怯だ。
 聡明な彼女は、どこまでも私の気持ちを慮ってくれてしまうから。求める以上の言葉を、返されてしまうのだ。急に蛇に噛まれたような不意打ちで。
「ああ……
 受け止められて、与えられた言葉が胸に広がって。腰を落とした先にある感覚に思わず声を漏らした。
 すごく不安定な体勢で、熱には強くても水には弱くて、そんな中で自分から腰を振るなんて恥ずかしくて隠れてしまいたいけど。
 彼女の言葉に答えたくてゆるゆると腰を動かし始める。細くて長い異物感が、下半身を貫く。
「は、あ、あ……
 私が動く度に水面が動くからお湯が揺れて、ちゃぷちゃぷと音を立てていく。その中に混ざる私の喘ぎ声も、きっと先ほどよりも大きい。
 けれど声が漏れるのが止められなくて。彼女と結ばれたのだという事を確かめたくて、彼女の首の後ろに回した左手の銀を。そこにあるのだと、しっかりと見つめた。
 こんな輪っかひとつで結ばれたことを確かめられるものなのか。何度もつけることを躊躇し疑ったその銀の輪が。
 私の左手の薬指にあることが、こんなにも安堵して嬉しいなんて。知らなかった。知らなかったのに。
「ん……はぁ……
 中が溢れて動きやすくなってきたところで今度はユイマンが指を動かし始めてくれる。
 私の中を傷つけないように最初は動かないでいてくれたけど、私の呼吸が甘く変わったのを聞き逃さずにゆるゆると内壁を上下に巡っていく。
 いつもとは向きの違う感覚に、声が漏れてしまう。
 だけど、慣れている快楽には少しだけ外れていて。そのもどかしさに余計に腰が動き彼女の頭を乱暴に抱く。
 昂りから戻れなくて苦しい、終わらせたくない、終わらせたい。私が終わらせないと彼女は不安になってしまう。
「ユイマン……!」
 不安定な体勢で達することは難しくても。彼女と繋がれていることが嬉しくてなんとか迎えようとする。
 彼女の名前を呼んで、何度もその指の感覚を味わうように喘いだ。それに答えるようにユイマンも私の名前を呼びながら、苦しそうな息を吐く。
 そうだ。自分が達せられないまま、私を達させようとする方がきっと辛いだろう。
 苦しければ次は私が彼女を昇りつめさせなければならないと思いつつも、私が昇りつめなければ何も終わらずに変わらないままだから。
 自分が良いと思う角度を見つけて、その部分に当たるように腰を動かしていくと。
 漸く、何か掴めそうな感覚が見つかって、そこに向かって進んで終わらせる道が見えた気がした。
 ぎゅっと彼女を抱きしめる腕に力が籠る。
 掴まっていないと倒れてしまいそうで。彼女の躰の形を確かめるように指の力を込めた。
 それだけでは足りなくて、口元にあった彼女の肩に無意識に歯を立てて。
 顎に力を入れてしまうのを止められなかったのは、自分でも理解できなかった。
 彼女が痛みで声を漏らしたのが分かっていたのに。それを止めることができず、彼女の形を口で確かめたことにより巡る快楽が下半身に湧き上がって。
 そこでようやく私は昇りつめられたことを自覚した。気怠い脱力感と。汗と、軽くだけど達したという満足感。不安定な体勢なら十分すぎる。
「はあ……
 脱力した後に、やっと。彼女の肌に自分が何をしたか気づいて。その白い肩についた歯の跡に慄く。
 幸い血は出ていないが、くっきりと跡はついていたから。彼女に噛まれるよりももっと深い跡を。私は残してしまったのだ。
「ご、ごめんなさい……
 肩にお湯を急いでかけて彼女に謝罪を述べるも。平熱の低いユイマンにはやはり辛かったのか汗だくの顔だった。しかし表情穏やかにその跡を指でなぞっていた。
 綺麗な肌に醜い傷をつけたというのに。どうしてそんなに笑っていられるのか不可解なほど。
……嬉しい」
 やっとつけてもらえた、と。心底満足そうに言うのは。何時と、何を指してのことだったのだろうか。どうしても分からなかった。
 それは、彼女に強引に頼まれて付けたモノは過去にも実はあったからである。
 だけど疑問に思えるだけの体力はもう残ってなくて。これ以上湯船に浸かっていたら湯の中で脱水してしまう。
 そのまま上がるにはあまりにも汚し過ぎたので。もう一度清めないととてもここからは出ることはできない。
 体温の低い彼女は余計に辛そうであったが。やはりあとひとつの過程を経なければ躰を拭いても意味はないだろう。
「とりあえず躰……
……あらおっか」
  






続く







あともう1回戦書かないといけないんですよね。地獄か。