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望月 鏡翠
2025-10-01 18:38:30
988文字
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#1859 失態
#毎日最低800文字のSSを書く
萬木はあらゆる動きを想定し、それらを頭から追い出した上で、構えていた。
あらゆることが起こりうる。
獣ならば行動はある程度予測できる。襲ってくるか逃げるかのどちらかの反応をする。
人であれば、扱う武器や流派によりその動きを予想できる。
だが、人並みの知恵があり、獣のように振る舞い、ときに妖術を使って人を惑わす妖怪の手を予測することは不可能だ。
何かへの警戒をすると、それ以外への反応が遅れる。故に、相手の手の内が知れるまでは、全ての可能性を検討した上で、知らない攻撃が来るものと覚悟をしておいた方がいい。
どのようにも体が動くように全身に集中し、しかし体が硬らぬように自然に構える。
まず攻撃を凌ぐことばかりを考えていた萬木は、相手の動きに反応はしたものの、刃は宙を切っていた。
妖の男は身を翻して走り出す。
その動きは決して素早くはなかったが、追いかけられるような状況にはなかった。
素早く、矢をつがえて打つ。
毒を仕込む時間はなかった。ただ目視できる距離にあるうちに、足を止められればまだ勝ち目はある。
あの妖がもし斥候なら、今回の狩りはここでおしまいだ。
地上と空、二つの敵を相手にする力はない。日頃祈らぬ神に祈りながら、矢を射る。
風を裂く音が遠ざかり、獣の身に、当たったように見えた。
だが、足は止まらなかった。
背中は遠ざかり、やがて見えない場所に消えてしまった。
「ちくしょう!」
萬木は妖の気配が消えたあと、ようやく息を吐き出し、罵りの声を上げた。
逃げられた。
その場にとどまり続けるわけにはいかず、萬木はひとまずその場所から離れ、誰にも身を隠す場所を探す必要があった。
あの妖怪が龍を連れて戻ってきたらどうなるか。警戒が解けるまで待つべきだが、人足のもとに残してきた食料はそこまで持つまい。
知ったことかと思えども、あの男にはまだいてもらわねば困る。
迷った末に、進むことに決めた。
足跡は追わなかった。罠の可能性が高い。逃げた先を避けて、遠回りをしていく。半日は余計に時間を使ったことだろう。
やがて山の斜面から、萬木はその場所を見つけた。
まだ遠いが、木々の間にきらりと光るものがある。
水面だ。
そのあたりだけ、周囲の木が打ち払われているから水面がよく見える。あの場所が村なのだろう。
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