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望月 鏡翠
2025-10-01 18:32:08
875文字
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日課
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#1858 椿の花
#毎日最低800文字のSSを書く
萬木は動揺を一呼吸の間に鎮めて、武器を握り直した。
不意打ちや罠、安全圏からの攻撃。
それが一番良いが、状況は刻々と変化し、戦略もそれによって変わる。刀で戦わねばならぬというのであれば、腹を括るしかなかった。
「あぁ、いや、困ったな」
男の角から生じた深い血の色の椿が、ポトと落ちる。
張り詰めていた萬木は、この動きにはんのうし、刀を振るっていた。
顔の直前で花が両断されて崩れて苔の上に散る。
妖は迷惑そうな顔になって顔を背けた。
「言葉を通じているか?」
人語を話す妖怪と言葉を交わすべきではない。その毒がどこに紛れ込んでいるのかわからないのだから。
「ああ、本当に嫌だな」
相手が動かないので萬木も動けない。自然体のように見えて、全く底知れない。
たとえ半化けだとしても、人に姿を変えるのは強い妖怪で、怪しい術を使うものだ。
苔の上に落ちた赤い花のことも、まだ警戒していた。
「何を恐れているのかわからないが、俺は本当に関係ない。ただの旅人だ。見逃してはもらえないか」
萬木は喉の奥で笑って応じた。
「人に化けるのに、頭は悪いと見える。半化けの自覚がないのか?」
口を開かぬ方が賢いとわかっていたのに、応じてしまった。膠着状態は体力を奪い、焦りは思考を鈍らせる。
久しぶりの狩りで、慣れぬ人を連れての移動、その上で、未知の敵と根比べをするほどの忍耐を持ち合わせていなかったのだ。
角を持つ男は背けていた顔の、目線だけを戻した。そうしてじっと見つめたあとに、細く息を吐き出した。
「なるほど。そういうことか。そういう国もあるのだろうな。確かに」
わからぬことを納得したように呟くと、萬木のことを上から下まで検めるように見た。
「妖怪の国には、化け方を教えてくれるやつはいなかったか?」
一挙手一投足に目を光らせる。何かをしてくるという予感があった。
「つまり、この国には〝いる〟のだな。あぁ、油断した。しばらくないことだったからな」
「次からは十分、気をつける」
言うなり、男は蹄で地面を蹴って飛んだ。
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