三毛田
2025-09-30 21:33:04
1062文字
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31 031. 振り向かせたくて

31日目
一人奮闘する

 好きだという言葉は、きっと彼には響かない。
 それでも、彼の気持ちを俺に向けてほしくて。
 恋心を伝えて、振り向かせたくて。
 今日もまた、一人奮闘しては撃沈。
「あれは鈍いっていうより、拒んでる。っていうのが正しいかも」
「だよなぁ……
 俺と丹恒のやりとりを見ていたなのは、唇を指でとんとん叩きながら目の前の扉へ視線を向ける。
 現在地。客室車両、資料室の前テーブルセット。
 なのにちょっとだけ迷惑をかけたので、今日のおやつの半分を贈呈しつつ話を聞いてもらっていた。
「クッキー美味しい。スコーンなら食べるだろうから、パムに言って丹恒に渡してくれば?」
「そうしてみる」
「ついでに、ウチの分の飲み物のおかわりも伝えておいて!」
「それはラウンジに取りに行けよ」
 まあ。パムに伝えればどちらも用意してくれるのだろう。結局ここに戻ってくるのだから、俺が持って行くはめになるんだろうな。
 ティータイム中の乗客たちに給事中のパム。
 手の空いた隙に、丹恒へは俺が持っていくこと。なのが、飲み物のおかわりを欲しがっていることを告げると、キッチンから新しいワゴンを持ってきて。
 そこには、おやつのセットされたバスケットとティーポットが乗せれている。
 ついでだから、ヨウおじちゃんや姫子にも持っていってくれと頼まれた。
 客室車両へ戻り、まずはなのへおかわりを渡す。
 それから、ヨウおじちゃんと姫子にも渡して。最後に、資料室のドアをノック。
「開いている。好きに入れ」
 緊張して振り返ると、なのが親指を立てて応援してくれた。彼女の口の周りがジャムで汚れているのは、今は指摘しないでおく。
「失礼します」
「お前か。どうした? それは」
 俺が押しているワゴンに気づき、少し首を傾げる。
「パムに代わって、おやつのお届けです。本日はスコーンです。紅茶は、ミルクティー。クリームとジャムを好きなだけつけてお食べください。だってさ」
「ありがとう」
 少しだけ目を細め、珍しく優しく笑みを浮かべ。
「クリームたっぷりで、ジャムがちょっと少なめが俺としてはおすすめ!」
「なるほど」
 慣れた手つきでスコーンを真ん中から割り、片側にクリームをたっぷり。もう片方にはジャムをちょっとだけ。
 大きめに口を開け、かぶりつき。
 クリームがあふれ出てきて、慌てて手を添えて。
 丹恒にしては珍しいな。なんて見ていたら、唇にクリームをつけて睨んでくる。
「丹恒、可愛いな」
「意味がわからない」
 親指で唇を拭って、舐める。