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A4
2025-09-30 21:09:19
2962文字
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助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
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迷子/ 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
お題箱でいただいてたやつでした。
助手2号であるところのアキラはイアスとの同期、接続にまだ慣れていなかった。
ホロウの中での行動はイアスのこれまでの経験に助けられることが多く、いかに自分が今までH.D.D.での観測、ナビゲーションのみに徹していたかを痛感することになった。
エーテリアスの反応が消失し、アキラはイアスの体を傾け、コンテナの隙間からひょっこり顔を出した。
すると、燃えさかるグローブが視覚情報として入ってくる。そのグローブの持ち主がこちらに気づき、大きな歩幅でのっしのっしと近づいてきた。
「アキラ、無事か」
「僕はね。イアスも傷一つない」
H.D.D.の前で椅子に座っているアキラはいつでも安全だ。
プロキシはホロウの中に入りその場でキャロットデータを扱ってエージェントやホロウレイダーたちを導くが、『パエトーン』は違う。彼らはリアルタイムにホロウとホロウの外の通信を可能とし、遠隔でボンプを操作してエーテルの反応を観測し、インタラクティブにナビゲートする。
このような芸当ができるのは今のところ、自分たちだけ、らしい。
イアスのカメラで得た映像データはモニターにも表示されているが、アキラとリンは改造した自分の目で直接取得する。これはかなり脳に負担をかけるものだったが、五感をイアスと共有することで自由にホロウの中を闊歩することができた。
「出口は見つかったか」
「ごめん。まだだ。この先にひずみがある。なんとかデータスタンドまで行けたらいいんだけれど」
ライト、バーニス、シーザー、リン、イアスでホロウに入ったまではよかった。ならず者を片付け、彼らが占拠していた一帯を制圧したのもよい。さて、帰ろうかと出口まで進んだとき、高濃度のエーテル反応があり、一時、ホロウと外の接続が遮断した。30秒も満たないうちに復旧したが、そのとき、イアスはライトに抱きかかえられて、今までいた場所とはまったく離れた座標に落ちてしまった。
ホロウの中のことは、まだまだよくわかっていない。こういう、突然できたホロウの裂け目から別の場所に出現することをプロキシの間では「スポーン」と呼んでいた。
二人はなんとかリンたちと合流、あるいはホロウの外に出ようと、かれこれ30分、彷徨っていた。
アキラはライトのバイタルをチェックする。侵蝕反応はなし。この郊外のチャンピオンのエーテル耐性は高く、まだ持ちこたえられそうだった。しかし、エーテルがどのように人体に作用するか、非人道的な実験も含めてかなりの治験がなされているというのに、未だ不明なことが多い。油断はできず、アキラは少し焦っていた。
ブレイズウッドに置いた社用車にH.D.D.を搭載し、車内でライトを導こうとするが、まだ先は見えない。
こんなとき、リンのように、イアスではなく自分の肉体がそこにあったらと考える。
直に彼の様子を確認することができればどんなにいいか。
エーテルの反応を走査しながら、苦笑する。
肉体が側にあったからといって、どうなるというのだろう。
特別に戦闘訓練を受けてもおらず物理的な存在がそこにあったって、彼のお荷物になるだけだろう。イアスの方が何倍も彼の役に立つ。
示したひずみまでライトが走り、イアスの体を使ってぴょんぴょん飛び跳ねながら追いかけていく。ライトは何度もイアスを運ぶと申し出てくれたが、ことごとく断った。彼の体力をそんなところで使いたくなかった。ボンプの体は軽くはない。
空間がゆがみ、エーテルの光がこぼれ出ている一角があった。
「ライトさん、そこにいて。ボンプの体で近づいた方が良さそうだ。安全だとわかればすぐに呼ぶよ」
ぽてぽてと歩いてエーテル反応を確認する。裂け目に類似した数値だったが、裂け目そのものではなかった。
いつもならFairyに解析してもらうところだが、有能な人工知能にはリンたちの反応を追わせている。補足はしたがまだ交信には至っていないらしい。モニターを見れば、通常の共生ホロウにいて、程なくして戻ってこられそうなことがわかったので、アキラは安心して目の前のひずみに集中した。
ホロウの解析、あるいはエーテルの流れを見ることは、まるで迷路を進んでいくようだ。法則性があるようでない。ないようである。わかったと思えばすぐに反転し、捉えどころのないものになる。まるでおとぎ話、夢の中で繰り広げられる不思議な世界での冒険のようだ。
ホロウは恐ろしいものだったが、アキラとリンにとっては遊び場でもある。このように、すぐに出られないことは二人で探索しているときはざらだった。
だから焦ることは何もない、と冷静な部分は告げるのだが、パエトーンだけで潜るときとは違い、今はライトがいる。
「よし」
解析を終え、キャロットデータを生成する。データをすぐにイアスに同期させた。
「ライトさん、出口が見えたよ」
「さすがだな」
「面目躍如たる成果が上げられたかな」
「なんだ、あんた、不安だったのか」
「うん。ここから出られなかったらどうしようと思っていた」
「あんたでもそう思うことがあるんだな」
「あのね、ライトさんに僕がどう見えているか知らないけれど、プロキシとしてエージェントをホロウの外まで導けないなんて、あってはならないことだ。廃業ものだよ」
ムッとして言うと、ライトは喉の奥をくつくつ慣らして笑った。何がおかしいのかさっぱりわからず、イアスの体で胸を反らしてにらみつける。
「そんな顔しなさんな」
「過小評価は好まないけれど、過大評価はもっと嫌だ」
「ああ、あんたは確かにプロだな」
「ライトさん」
「怒らないでくれ。あんたの機嫌を損ねたくない」
「じゃあ、言わなければいいだろう」
「その通りだ。が、普段の落ち着いた様子が崩れるのを見るのも好きなんだ」
「趣味が悪いね」
「そうか?」
「うん」
「じゃあ、そうなんだろうな」
煙に巻かれた気分になって、アキラはため息をついた。
「さあ、ホロウを出よう、ライトさん。バイタルは正常値だけど長くいたことには変わりがない。侵蝕が進んであなたの体に何かあったらと思うと、ハラハラする」
「
…………
」
「ライトさん? 聞いてる」
「ああ」
ライトはイアスの体をひょいっと体で軽々と持ち上げると、裂け目に入った。キャロットデータに従ってライトとイアスの体は何度か転移し、ホロウの外に出た。
ホロウから出てきたライトとイアスは、カリュドーンの子とリンによってもみくちゃにされた。体の調子が悪くないか、気分はどうだと、やかましく尋ねている。が、心配ゆえの詰問だったので、ライトも観念して適当に流したりはせず、きちんと受け答えしていた。
H.D.D.の接続を解除し、車のボンネットに軽く腰掛けていたアキラのもとに、ライトがのっそりとやってくる。
「アキラ、ありがとさん」
「当然のことをしたまでだ。よかったよ、無事で」
「そうだな」
「
……
何か、まだ言いたげだね」
「いや、いろいろと噛みしめていたところだ。迷子になるのもたまには悪くない」
サングラスをずらして、ライトは揶揄うような眼差しでアキラに話しかける。
アキラは腕組みをしてため息をついた。
そして、返事の代わりにへなちょこの蹴りを、彼の脛にお見舞いした。
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