紫輝
2025-09-29 21:08:18
2758文字
Public リとヌと御仔の話
 

逸品・『龍の瞳』

(リとヌと)御仔とフリンズ君の話です。キラキラしたものが好きンズ君、絶対御一家の瞳に興味津々になると思って。当然のように全部察してるンズ君です。細かいことは気にせず読んで欲しい。
Q.ご両親が御仔一人にしておく事あるんですか?
A.実は鍾離先生が近くで見守っています
(書いたから出る 書いたから出る)(ガチャ前日夜)

「おや貴方は確か、レヴィ君、でしたね。それにしても龍と人の仔とは。初めて見ましたよ。ほうこれは
「ダメ!!」
 興味を惹かれるまま伸ばした手に、ぴこんと蒼い触角を跳ねさせた幼仔は頭を抱えてうずくまってしまった。
「なにが駄目なんでしょうか?」
 宙ぶらりんな手はそのままに首を傾げると、幼仔のくぐもった声が返事をくれる。
「ぼくのほっぺた、パパととうさましかさわっちゃだめなの!」
 うー、と威嚇未満のうなり声まで着いてきてやっと察した。そして納得した。警戒心の強い動物の仔であれば確かに、まだ顔と名を知って間もない自分に触れさせてくれる訳がなかったな、と。正確には頬に触れたかった訳ではないのだが、幼仔にとって理由はその行為を許容するかどうかの判断材料にはなるまい。
失礼しました。僕はただ、近くで貴方の瞳が見てみたかったんです。とても珍しくて、綺麗な色をしているので
 幼仔の前にしゃがみ込み、これ以上は何もしませんよとアピールするために膝頭に手を置いて。
 驚かせてすみませんと謝罪すると、幼仔はそろりと顔を上げてくれる。半分だけ。室内照明が差し込んで煌めく瞳がやっぱり美しくて思わず口角が上がってしまった。いけないいけない、今は警戒解除作戦の遂行中だというのに。
 謝罪の気持ちだけは表情に浮かべてじっと幼仔の出方を窺う。ここで余計な事を言ったりしたりするのは御法度だ。ぱち、と美しい瞳が瞬く。
みるだけ?」
「はい。見るだけです。もう触りません。お約束します」
 もう半分も上げてくれた幼仔が頭の手はそのままに首を傾げるのにしっかりとうなずいて見せた。ほら、と、膝頭の手に力を込めることで行動にも示す。
じゃあ、いいよ」
「ありがとうございます」
 んー、と少しの逡巡を経た幼仔からやっとお許しが出たのにでは早速と身を乗り出しかけて思いとどまる。危ない。せっかくの許容を台無しにした挙げ句いきなり約束を破るところだった。
「レヴィ君」
「なあに?」
「もう少し近くで見たいのですが、もう一歩いや、二歩くらい近くに来てくれませんか?」
 勿論僕からは何もしませんと真剣に訴えれば、わかった、とうなずいた幼仔はしゃがんだ姿勢のままにじにじとこちらに寄ってきてくれる。警戒心があるのかないのかわからないな、なんて考えつつ、近づいてきた極上の輝きへと意識を集中した。
「ああやはり素晴らしい。アイオライトのような美しい紫色まるで虹結晶のような不思議な色合い天然のシャトヤンシーお父上にそっくりな瞳をお持ちなのですね。とても綺麗です」
「ん! ぼく、とうさまとおんなじすいりゅうだから。おめめとうさまとおしょろいなの」
 こくこくと自慢げにうなずいてくれる幼仔の首の動きに光の入射角が変わって、希有な瞳が新しい煌めきを見せてくれるのに高揚する。幼仔の“とうさま”たる水龍の瞳は常識的な距離からしか観察できていない。いつかじっくりと見せてもらいたいものだ。そういえばかの水龍よりも、幼仔の瞳は青みが強く見える。はてと疑問を覚えたのは一瞬だった。
「貴方の瞳はお父上よりも色が青みがかって見えますね。これはもう一人のお父上の色を継いだのでしょうね」
ん! ぼくのおめめのいろ、とうさまとパパのおめめのいろがね、いっしょになってるの。いいでしょ!」
「はい。とても素敵です」
「えへへ」
 果たして誇らしげに胸を張る幼仔に是を返せば、幼仔はふにゃりと笑う。両親への愛を感じるその微笑ましい様に思わず肩が揺れた。
「実は貴方の『パパ』の瞳もこの距離で見せてもらったことがあるんです。不思議で美しい瞳でした。まあ、その時の私は礼を失してしまったので、『とうさま』に叱られてしまったのですが」
 幼仔相手には未遂に終わったが、興味と好奇心が先走ってしまいうっかり勢いで“公爵”閣下の顔をホールドしてまじまじとその瞳を観察してしまったのはよくなかったな、と思っている。危うく火種ごと消し飛ばされるところだったのだ。閣下その人の取りなしで事なきを得、謝罪の上『旅人の仲間』としての友誼を結ばせては貰えたのだけれど。
 懺悔に「えー?!」と驚きの声を上げた幼仔は、むむとその眉を寄せる。
「ぼくぼくもね、それはちょっとやだからとうさまもこわかったとおもう。ちゃんととうさまにごめんねした? ごめんねできないひとはパパのおしろではんせいするんだよ」
「勿論きちんとお詫びごめんなさいはしましたよ。貴方や『とうさま』は、僕が『パパ』とこれくらいの距離でいるのが怖いのですか?」
 自分はフェイではあるが、人間とは言え水の元素龍のつがいをどうこうできるような力など持ち合わせていない。何をそんなに警戒されていたのだろうか。
「んとね、パパをつがいにしたいひとじゃなきゃこんなにちかくこないでしょ? パパはとうさまとぼくのパパだから、とっちゃダメだからね」
……なるほど、そういう、ッフフ」
 ぼくたちがパパのことまもるけど、と決意を込めて睨まれるのに、失礼と知りつつ吹き出してしまった。龍が宝に手を出されることを嫌う種族であることは識っていたが、もっとなんというか、そう、随分と可愛らしい嫉妬が、あの時の濃い水元素のほとんどを占める要素だったらしい。放たれていれば『可愛い』なんて言っていられなかったけれど。
「失礼。大丈夫ですよ。僕は貴方の『パパ』の瞳を近くで見てみたかっただけなんです。今貴方にしているのと一緒です。貴方や『とうさま』から、彼を盗ろうなんて全く思っていません」
 だから嫌わないでください――弁明を、どうやら幼仔は聞き入れてくれたらしい。それならいいよと見せてくれる笑顔に笑顔を返して。
「ありがとうございました。よかったら、また見せてもらってもいいですか?」
「ん。ランプのおにいちゃん、やくそくまもってくれたから。いいよ!」
 次回の約束を試みれば、ほっぺたはだめだからね、と再度釘を刺される。
「はい、勿論。お約束します」
「ん!」
 条件の摺り合わせを無事終えたところで、ガチャリとドアの開く音。
とうさま!」
 ぱっと立ち上がった幼仔が身を翻し青い装束に向かって飛びついていくのを微笑ましく見守っていれば、『とうさま』と共に探索から帰還した家主の少年に困惑の声を投げられる。
フリンズ? なんでそんなところにしゃがんでるの?」
「『龍の瞳』を堪能していました。あ、ちゃんと彼の了承は得ましたよ。ここを吹き飛ばすわけにはいかないでしょう?」
 一先ず満足しました。
 ほくほく笑うと、本当にシャレにならないから気をつけてね、と少年は肩を竦めた。