「おい」
「承太郎、貴様ノックくらい出来んのか」
「出かけるぞ」
「無視か。おい、このDIOを無視するのか」
「なら行かねーのか」
「行くに決まっているだろうッ!」
――しかし、この時DIOはどこに連れて行かれるのか、全く知らないのであるッ!!
【Live in a Bubble】
――移動後。
「
……アクアリウム?」
「あぁ、お袋が福引で当てたんだと」
「本で読んだ事はあるが、私の時代にこんなものはなかったな」
「そりゃあそうだろうぜ」
あったとしてもせいぜい生簀レベルだろう、と言う理屈は飲み込んでおく。
「フフフ
…良かろう。このDIOが子供騙しに付き合ってやろうではないかッ!」
「やれやれだぜ
…」
――入場、シャチ水槽の前。
「思ったよりも広いな」
入場ゲートをくぐると、巨大水槽が目に付く。
「この水槽はシャチさんだとよ」
「ふむ、シャチか。生で見るのは初めてだ」
「海のギャングと呼ばれているが、おばあちゃんを中心に群れを作る賢い生き物
……」
「何だ、貴様詳しいな」
「そこのパネルに書いてあっただけだぜ」
「フフ、受け売りか」
「黙りな。テメーも知らなかっただろうが」
目の前を悠々と泳ぎ去る雌雄の海獣を大男二人が眺める。
「ギャング
……何故だかシンパシーを感じるな」
「テメーのする事はギャングみてーなモンだからな」
「貴様に言われたくはない。そっくりそのまま返すぞ、承太郎」
<イワシ大水槽にて魚群ストームが行われます。ご観覧のお客様は
――>
館内放送が聞こえてくる。
「ほう、ストーム?強そうだな
…行くぞ、承太郎」
「あぁ」
――イワシ水槽の前。
<音楽に合わせて動くイワシをお楽しみ下さい!魚群ストーム開始です!>
曲に合わせてイワシが右へ、左へ、一団となって移動していく。
「ほほう。魚類と言えど、こんなにも統率が取れるものか」
「そうだな」
上から餌を入れているから、と言う野暮な事は言わずにおく。
「」
――ペンギン水槽の、パネルの前。
「見ろ、承太郎。我々のようだ」
「あ?」
指し示されたのは、ペンギンのオス同士のカップル。
「どんな生き物でも寄り添う相手がいるのだな」
「
……そうだな」
どことなく穏やかに微笑むDIOの横顔に照れくさそうに帽子を引き下ろす。
「おい、行くぜ」
水族館が薄暗くて助かった、と思う承太郎。
――ペンギン水槽の前。
「承太郎、さっきから黙り込んでどうした」
「
……さっきのカップルはあいつとあいつだな」
「うぐッ
…違いが分からんぞ
…!数が、多いッ!!動くなッ!!」
「それは無理ってモンだぜ」
「貴様が出来て、このDIOに出来ない訳が
……URRYYYY!!!」
「おい、ちったぁ静かに
――」
<まもなく野外プールにてイルカショーが開始されます。ご観覧のお客様は
――>
「何ィ
…?イルカショーだと?奴ら、ショーをするのか?」
「かなり賢いからな」
「よし、観に行こうではないか!」
「やれやれ
…」
すぐに興味が移るのだった。
――屋上、野外プール。
「フフフ
…最前列だ!見晴らしがいいなァ!そう思わんか、承太郎!」
「
……いや
…」
左右の席に座っている奴らはこぞってカッパを着ている。
マジで嫌な予感しかしねーぜ。
そうこうしているうちにショーが始まってしまった。
<はーい!スプラーッシュ!!>
「
……まさかッ」
嫌な予感が的中した。防御手段もなく、スプラッシュを浴びる事に。
しかも、おれとDIOが目立つからか、集中砲火されている。
「っ
……おい、DIO
――」
「フハハハ!面白いではないか、水族館!」
しかし、思ったより楽しそうで安堵すると共に、自分も楽しくなっている事に気付く。
<ショーはこれにて終了です!足元に気を付けて館内へお戻り下さいね!>
アナウンスの直後、風が吹いて揃って身震いする。
着替えなど持って来ている訳もないのだから。
「このままじゃあ風邪を引く。Tシャツを買うぜ」
「承太郎、タオルも忘れるな」
「分かってる」
ブルブルしながら売店でTシャツとタオルを購入し、着替える。
「待たせたな!どうだ、似合うか?」
「可愛いイルカさんがデブに
――」
「待て。貴様も同じ状態である事を忘れるなよ、承太郎」
図らずもペアルックで引き続き館内を回る事に。
――ふれあいコーナー。
「URY
……ジョォリジョォリ
…しているな
……」
恐る恐るネコザメを触るDIO。
「鮫肌だ。わさびのすりおろしにも使われるらしいぜ」
「ほう
…?此奴にそんな脳があるとは思えんが
……」
剥いだ皮を使う事は黙っておこう、と言葉を飲み込む。
――クラゲ水槽前。
「クラゲリウム?」
「あぁ」
「あの浜に打ち上げられ、生死が定かですらない、海を漂うだけの不様なクラゲを眺めるだと?面白味がある訳
――」
中に入るとクラゲ水槽に夢中なDIO。
しばらくDIOの後ろで眺めていたが、水槽に反射する、影の落ちている表情に思わず腕を掴んでしまった。
「ん
…?どうした、承太郎」
「いや
……」
暗闇と水槽の向こうに消えそうだった、など口が裂けても言える訳もなく口ごもる。手を離し、顔を見られまいと帽子を引こうとした瞬間
――。
「
……行くぞ。はぐれるなよ」
察されたのか、離したばかりの手を掴まれた。繋がれ、引かれるまま、クラゲリウムの中を進んでいく。
「チッ
…」
思わず出た舌打ちは、自分史上最も弱弱しいものだった。
クラゲリウムを出ると共にさりげなく離れていく手を名残惜しいと思ってしまう自分がいるのも信じられなかったが。
――餌やり体験。
「そこのお兄さん達、ペンギンさんにご飯をあげてみませんか?」
飼育員が呼び込みを行っている前を通りかかる。
「
…餌やり体験だと」
「よかろう!このDIOが直々に与えてやろうではないか!」
「ペンギンさんは丸飲みするので、お魚をくわえたら手を離して下さいね」
「なるほど、理解したぞ」
「おっと
…」
DIOが手を離そうとすると同時に、魚を求めて足元に集まるペンギンを避けようとしたおれの身体がぶつかった。
「承太郎ッ!?貴様ァァアアア!!!!」
結果、魚から手が離れず、手まで食われたのだった。
――館内で一番大きい水槽をベンチに腰を下ろし、眺める。
「散々だった
…貴様のせいだぞ、承太郎」
「おれは何もしてねーぜ。テメーが手を離さなかったのがわりーんだろ」
「いいや、貴様がぶつかったせいで
――」
クドクドと話を続けるDIOの話を聞き流しながら、ゆっくりと泳いでいく煌めく魚達を見つめる。
夕飯は秋刀魚がいい、などと風情の欠片もない事を考えながら。
「承太郎、今貴様が何を考えているか当ててやろう」
「あ?」
「夕食は秋刀魚がいい、そう思っているなッ!」
「
……まぁな」
「全く
…風情も何もない男よ」
それでも、横目で見たDIOは楽しそうだった。
――帰路の電車の中。
瞼が重い。ちとはしゃぎ過ぎたな。
瞬きの度に睡魔がのしかかって閉じていく瞼を必死になってこじ開けていたが、これ以上は耐えられなさそうだ。
睡魔に負けたおれの身体は、重力にも負けて隣の男の肩へ寄りかかる。
「これだから
――」
嘲笑の中に、どことなく慈愛の滲むDIOの呟きが、聞こえた。
↓スペシャルサンクス☆銅さんのツイートはこちら(/ω\)
↓シーンだけをまとめた私の引用はこちら
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