三毛田
2025-09-28 21:28:56
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29 029. せめて夢の中だけでも

29日目
仲良く過ごしたいという願い

 夢を見る。
 それは、寝るまでに得た情報を整理するための、脳の行動。
 自然現象だから身構えなくてもいいと告げたのは、列車の先輩でもあり、今は少しだけ友と呼べる人。
「うーん……
「まだ慣れないか?」
「まあな」
「ベロブルグでは、ちょくちょく眠っていたみたいだが、そのときは見なかったのか?」
 思い出そうとするけれど、何分日が経っているので覚えていない。
 ので、素直に首を横に振る。
「それもそうか。そろそろ一月は経つからな」
「衝撃的な出来事だったら覚えてるけど、日常の些細なことって覚えてないなぁ。というか、ネットで調べてみたら、夢って見たことを忘れているのがほとんどだってあったぞ」
「だが、印象的なものであれば、起きた時に覚えていることもある」
 正論で返されてしまうと、何も言えない。
「丹恒は、覚えているのか?」
……どうだろうな」
 あ。これはちゃんと覚えているな。
 意外とこの人は、誤魔化すのが下手だ。
 根が真面目だからというのもあるのだろう。
「嫌な夢だったら、俺も一緒に背負うから。そういうのは……迷惑か?」
「わからない。そうやって、気遣ってもらえたのは、ここに来てからだから」
 少々困ったような表情を浮かべ、俺を見る。
「じゃあ、少しずつ慣れていこう。俺と一緒に」
 笑いかけると、目を丸くして。その後、小さく頷く。
 それから、二人でぽつぽつと話をして。
「眠くなってきた……
「それなら、眠ればいい。俺が部屋まで運ぶ」
 彼の声色は、ひどく優しい。まだまだ仲良くなれる余地はある人。それなのに、こんな優しい声色を向けられたら。
 俺は単純だから、好きになってしまう。
 優しい声色に抗えず、気づいたら眠っていて。起きたら、自室のベッドだった。
 夢を、見た。丹恒と手を繋ぎ、どこかの街を回る夢。
 きっと俺の願望。
 いつか叶えたいと願っているもの。
……
「起きたか」
「たん、こう?」
「本当に寝るとは思っていなかった」
「寝てもいいって言ったの、お前だろ」
 体を起こして拗ねたように唇を曲げると、本を閉じて俺の前までやってくる。
「おはよう」
「ん。おはよう」
 あんな夢を見たのは、せめて夢の中だけでも、いつもより仲良く過ごしたい。そんな、想いを抱きながら眠ったからだと思いたい。
「パムからおやつを預かっている。一緒に食べるか?」
「食べる!」
 一緒に煮と誘ってくれたのが、すごく嬉しい。
 丹恒は、あまり気にしなそうだけど。
 彼を少しずつ好きになっていっているから。