Unシル
2025-09-28 13:19:14
1534文字
Public
 

第41回狛恋版深夜の真剣創作一本勝負

2025/9/19参加
お題「柘榴」「無防備」「うつらうつら」
採用:「柘榴」
小説タイトル:凍てついても
CP表現:猗窩座恋雪
⚠️ちょいグロ


 山の主らが跋扈する深き山々を、赤や橙色の紅葉樹が鮮やかに彩り、渇いた落ち葉が山肌を覆うころ――
 腐る直前に木から落ちた果実が、そこらじゅうに転がる。
 ――食の宴が始まる、合図だ。
 柿、梨、アケビ、びわ。
 それらは獣たちの、秋の馳走。熟れた果実に露霜は覆うことなく、瞬く間に獣が平らげる様子を……大木の枝へ腰掛けた孤高の鬼が見下ろす。
 闇夜に溶けてはいるが、鬼は奇抜な風貌だ。
 蘇芳色の頭髪、琥珀色の瞳の周りを藍に染めたまなこ、顔、盛り上がった筋肉を晒した肢体に紋様の如き入れ墨が這う。
 唇の端に、あかい汁が滴る。手には、ひとの拳ほどの大きさの肉塊……とある益荒男の、心の臓を。
 鬼は獣らを倣うように、人肉を喰んでいた。
 持主を思い返して、虚空に呟く。
「疾く、疾く、……すばしっこい男だった。脚力然り、心の臓が強くなければ、ひとの身でああは動けまい……!」
 故に。
 ――敬意を表し、心の臓を引き抜いて殺したのだった。
(猗窩座は強くなる。強きを求め、人を喰らう……ずっと)
 鬼の名は、猗窩座という。
 永らく武を極めるため、ひとを喰らう。喰らうひとは、選り好みしなければならない。それは、鬼自身が認めた強きもので、共に武を極めんと鬼へ転じるよう誘ったひとでなければならない。心の臓のみとなった益荒男は、これを断ったのだ。
 鬼の腹は満ち足りて、でも、ひどくむなしい。
 鬼と成りもう百年と経つが、――未だ、猗窩座の誘う強きひとの子は、悉く猗窩座の血肉となり果てる。
 口の端から顎をつたい滴った血が、腐葉土に落ちるのを目で追っていたら。
……ん?)
 眼下、きらりと光る赤い粒を猗窩座はとらえた。
 米粒よりか大きいが、果実の残りだろうか……心の臓の喰い滓であれば、残さず食べなければならないので、飛び降りる。
(違うなら、吐き出せばいい)
 ひょいと口へ放って、ソレを噛んだ直後果汁が口内に飛び散って……
 ――なつかしい、かぐわしいにおいが。
 鼻腔を突き抜け脳天へ直撃した。
(!?)
 直ちに、悪寒が、腹の底から這いあがる。四肢が千切れそうな激痛、しらない幼い女がシクシクと啜り泣く幻聴が、錯覚が、猗窩座を襲う――耐え難い拒絶だった。
 ひとの子の雌の血を嗅いだり、おんなと知らずに肉を口にしたときと、おんなじ苦痛に苛まれる。
 赤い粒は――柘榴の果実だった。
「!うっ」
 たまらず、吐き出す。
 尊き益荒男の心臓が、吐瀉物になってしまった。
 
……また、また、くらおう)

 ――何も思い出せないまま。

 猗窩座は山を降り、また強きひとの子を求めた。







   あとがき

 ちょうどこの時期、Xのタイムラインに猗窩座×恋雪のCPをみかけるように。私も書いてみたいなあでもどんなシチュエーションでどんな設定だとしっくりくるの書けるかな……と悶々としていたところ。
 一週間前にお題の開示があった、投稿タイトルの通り、狛恋タグで、メロメロラブリーな甘々小説を書きたーい、が、その方面で二次創作が出力できないのです困っていました。「柘榴」に纏わる神聖な逸話が素敵で、それを元に話を暗くするか、明るい方面にするか。それとも「無防備」や「うつらうつら」で狛恋の日常のふとした瞬間をきりとろうかなど。
 結局。
 人肉=柘榴の果実という、逸話の断片を採用して、熟した果実は恋雪を連想させる(いろんな意味で)、彼女がタヒんだ際の辛さなどがごちゃ混ぜになって、猗窩座自体のひとの雌が殺せない喰べられない発作が柘榴の実を食べておきちゃった話がお風呂の最中に降りてきましたやったー暗いなあ好きだなあ。
 おしまい。