ぽふむん
2025-09-27 22:55:24
1232文字
Public ワンドロ
 

訃報

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「寝癖」
氷柱if

例の事件の後、童磨さんどうやって二十歳まで人間として生きられたのだろう。
明言はされていませんので作品によって年齢はバラバラですが、例の事件の時六歳前後だよなぁ……と
鬼だと長くてえぐくなります。

帰幽というのは神道の言葉です。


見事なものだと思う。
平の隊士だけでは手に負えないという応援要請で駆けつけた氷柱は、たった一人であっという間に鬼を殲滅した。

そして、平隊士達の治療と休息のために屋敷まで貸してくれた。

しのぶは、そこで怪我人の処置に明け暮れた。
気がついたらもう四時だ。
ようやく一息つけた。
治療を終えた隊士たちの穏やかな寝息が広間にさざめく。

あの男は、別室で今頃呑気に寝ていることだろう。
別に腹は立たない。
寝ないことには昼間の活動の為の鋭気が養えない。
それに、五時には本業の早朝の説諭とやらの為支度をしないといけないと言っていた。
尚更仮眠くらい取らない事にはやっていられないだろう。
世襲とは言え、掛け持ちでこんな家業をしていること自体恐れ入る。

場所を貸してもらった礼に、目覚めの茶くらい煎れてやろうか。
いや、そんなことは執事がするだろうか。
そう思いながら童磨の僧坊に向かう。


なにやら衣擦れの音がする。
起きているようだ。
「失礼します。入りますよ」
しのぶが声をかけると
「どうぞ〜」
と、寝起きとは思えないいつもの軽快な声が返ってきた。

だが、襖を開けて見れば元々癖の強い髪が、寝癖でさらにすごいことになった童磨がそこにいた。
先ほどの軽やかな声とは裏腹に、何やら真顔で手紙を読んでいる。

「どうされました」
「俺の両親……厄介な人達だったということは知っているよね。で、俺がおチビの時にやらかした」
幼子だった童磨の目の前で繰り広げたと聞く、無理心中騒動のことを言っている。

「ええ」

「酷いと思わない?自分たちのいざこざで子どもはほったらかして二人だけ、さっさと雲の向こうに旅に行っちゃって……そんな事されて、子どもだけで生きていくことも、こんな組織を維持できるわけもないだろう?」

「ええ、そうですね」
カラ元気なのか、元からそれほど気に病んで居ないのかは分からないが、やたら陽気に告げられるその言葉に、しのぶは短く応えた。
今まで、寝起きとは思えないほど陽気だった童磨の顔色が少し変わった。
ひとつ大きく息を吐いた。
「そんな俺の面倒を見てくれたおじいちゃんがいた。両親が存命の頃は苦言も呈してくれていたそうだ。
その人が帰幽された……

しのぶは息をのんだ。
先ほどまで目を通していた手紙を渡された。
そこには

️⭕️️⭕️僧正逝去 夕刻通夜

とのみ書かれていた

急報に叩き起こされ、その短い一文に何度も目を通していたらしい。

「なんだろう……両親の時は大したことは……ただ臭いとしか思わなかったのに」
童磨の声がつまりだした
はっ
はぁ
呼吸音が荒い。

「僧正様は、あなたと十分に苦楽を共にしてくれた人だから……じゃないですか?もう少し寝てから出立しなさい。あとのことは神山さんが何とかしてくれます」
「寝付けない」
「寝なさい」

しのぶは、やや強引に童磨の頭を自分の太ももの間に横たえさせた。