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らぎ
2025-09-27 22:32:13
923文字
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モノノ怪
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離坤ドロライ二期 第三回「金魚」「育てる」
両片思い。
坤の薬売りが白猫になった。
そんな嘘のようだが本当の話が起こり得るのが蒐我一帯だ。そのうち元に戻るとの見立てだったがそれがいつなのかは判然とせず、その間坤の薬売り、もとい坤猫は一先ず離の薬売りの預りとなった。およそ剣より柔いものなど持ったことが無かったであろう坤の神儀に、大層おっかなびっくりと言った様子で抱えられてやって来たふわふわの坤猫は現在、その苅安色の双眸でもって池の金魚を追いかけている。癖のある白毛に覆われた尾は朱色の先端だけがはたはたと揺れ、そうしている様子はまるきり現世の猫と変わりがなかった。
「まったく
……
また妙な事に巻き込まれて
……
。」
離の薬売りは縁側から白猫の背を眺めてひとつ、嘆息する。彼はここ数年、着々と、そして密かに坤の薬売りへの思慕をその心のうちで育んでいた。そんな彼にとっては堂々と想い人と居られる此度の出来事は役得と言っても良かったが
…
諸手を挙げて歓迎するには少々、相手のなりが毛玉すぎた。
「坤、坤や」
そう呼んでも坤猫はまるで聞こえぬとばかりに金魚に夢中だ。何だか自分ばかり気を揉んでいるような気がして面白くなく、離の薬売りはごろりと畳に寝転がった。
……
寝転がっていくらも立たぬうちに、背に温もりと、耳に届く唸るような音を感じる。背を向けると追ってくる所まで猫になっているのか、元々の坤の薬売りの性分なのかはわからないもののこれ幸いと離の薬売りが仰向けになれば、薄い胸に坤猫がのっそり這い上がって来た。
「
……
まったく。」
ゆっくりと微笑うように瞬きを繰り返す瞳の少し上、朱の間の白い眉間に戯れに唇を落とす。坤とは言え猫に何を、と自嘲が口をつきそうになったが、その口が開く前に胸上の重みが突如増大した。
「
……
ハ?」
訳がわからぬのは離の薬売りとて同じだがこの声は離のものではない。しばらく聞いていなかった、愛しき男の声だ。と、いう事は。
「
……
戻った
……
」
端的に状況を表す離の薬売りの言葉に我に返ったらしい坤の薬売りが、離の薬売りの上からもんどり打って転げ落ちる。常ならば大屋根から飛び降りても華麗に着地して見せる男のいつになく慌てふためいた様子に、離の薬売りの口端からは思わず笑みが溢れた。
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