三毛田
2025-09-27 22:31:25
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28 028. 指先から溶けてしまいそう

28日目
君と触れ合うと、いつもそう思う

 触れた指先は、相変わらず俺よりも体温が低く。
 だからといって、底冷えするようなものてもない。
「ふふふ」
「嬉しそうだな」
「そりゃもう! 丹恒と二人きりだからな!」
「俺も、久しぶりにお前と二人きりで……嬉しい」
 互いに、依頼、論文の締切、取材、護衛と忙しくて。
 こうして二人きりで過ごせるのは、実に一ヶ月ぶり。
『前に寄った時にもらった割引券の使用期限が、もうすぐなの。ちょうど航路の途中だし、補給がてら寄る予定なんだけど、一枚につき二人までなのよね』
  と、姫子に渡されたのはレストランの割引券。
 正装が必要な店舗なので、慌ててパムに手配してもらった。
 丹恒のは、クリーニングが必要だったので列車内クリーニングサービス行きだったとか。
 なのと姫子に正装に合うようヘアアレンジをしてもらい、いつもより多めのお小遣いをもらってレストランへ。
 どうやら、俺がこなした依頼の追加報酬がいくつかまとめて数日前に列車宛に振り込まれたらしく、そこから渡してくれたのだとか。
「お前一人で抱えても良かったんだぞ」
「列車宛に振り込まれたんなら、みんなで使わないと。美味しいものに使うのも正解だし、趣味に使うのも正解。整備費や、食材費になるのも、衣服のために使われるのも正解。俺のお金だからこそ、みんなのために使ってもらうほうが嬉しい」
 指先に触れる。と、優しくこちらを見て微笑む。
 ああ。嬉しすぎて触れた場所から、溶けてしまいそう。
 予約してくれた姫子の名前を受付で告げ、案内してもらう。
 案内された先は、個室。ビクビクしながら、入って席に着く。
「お待たせいたしました」
 どうやら、姫子が料理のコースも一緒に予約してくれていたようで。すぐに料理が運ばれてきた。
「前菜?」
「そのようだ」
「俺、テーブルマナーとか知らないんだけど」
「カトラリーは外側から使う。落してしまったら、店員に声をかける」
「ふむふむ」
「そこのボウルの水は、指を洗うための水だ。飲むな」
「わかりました」
 食べ始めた時は緊張で味がよくわからなかったけど、コースが進むにつれてきちんと美味しいと想えるようになっていき。
「あー、美味しかった」
「ああ。デザートも美味かったな」
 食事を終え、料金も払い店を出て。
 二人で、列車までの道をゆっくり進む。
 もちろん、手を繋いで。
「すごくたまーになら、ああいう料理もいいな。でも、パムのご飯が、緊張しなくて一番!」
「ああ、俺もそう思う」
「だよな?」
 と、二人頷く。