【スタゼノ】シークレット・コーヒー

スタゼノワンドロワンライ 第221回お題《年齢指定》「21歳×20歳」
21歳になってすぐに上官にストリップバーに連れて行かれたスタンリーと、それを報告されたゼノの話。

 二十一の誕生日には、それほど真新しいことは起こらなかった。勿論ゼノが作ってくれた偽造IDじゃない本物のそれで酒を買えることになったことは便利だったけれど、でも真新しい褒美を探してもそれくらいだった。幼い頃しゃぶっていた飴の代わりに吸うようになった、今では馴染み深い煙草も十八から大手を振って買えたし、あいつと結婚したければ、とっくの昔に結婚出来ていた。
 強いて言えばストリップバーにも入れるようになったことなんだろうが、俺には十一の頃から首ったけの幼馴染みがいたので、世の男達が憧れる、あの薄暗い中、派手なメイクをした女達がウィンクをしながらトップレスで踊る場所を訪れることは多分ないだろう。――と思っていたのだが、俺が二十一になったと知れるや、上官は祝いだと言って俺をストリップバーに連れ込み、酒を奢ってくれた。とはいえ、ここアメリカでは二十一になってすぐの誕生日には多くの店が一杯サービスしてくれるのが普通だったので、彼の懐はあまり痛まなかっただろうけれども。


 俺はまだ夕暮れ時のストリップバーでランチ・ウォーターを飲みながら、暗い中、派手な照明がライティングされた空間で、この窮屈な時間が早く終われと願っていた。上官には馴染みなのだろうダンサーが二人つき、時折もう新人でもない俺をからかっては豊かな胸を揺らしていた。別にそれが目に毒だとは思わなかった。でも、何というか、とにかく居心地が悪かった。別に俺は女に興味がないわけじゃないのだろうが、やっぱり俺にはゼノしかいないんだろう。柔らかそうな胸やヒップラインを見ても、興奮しなかったんだからつくづくやられちまってる。
「それじゃあ、俺はこれで失礼します」
 奢ってもらったカクテルを飲み干して、ダンサーの下着に申し訳程度のチップを挟んだ後、俺はダンサーや黒服らにからかわれながらバーを出た。上官はまだ刺激が強かったかって笑っていたが、俺にはもっとセクシーな恋人がいたので、特に何も思わなかったってのが正直なところだった。それに何となく恋人を裏切ったような気にもなって申し訳なくなり、俺は結局酒を飛ばしながらバスセンターに行き、そのまま長距離バスのチケットを買った。外出届けは、幸いなことに俺をバーに連れて行った上官が出してくれていたので、ゼノの元に行って、とんぼ返りすればどうにかなりそうだった。本当は実家に帰れってことだったんだろうが、俺は恋人を選んだのだった。それくらい、俺は彼にやれていたから。
 
 
「へぇ、それでストリップバーに行ったって僕に言いにわざわざ来たのかい?」
 早朝、俺は彼が最近買ったというクラフツマンスタイルの家に行き、徹夜明けだろうゼノに(彼はくたびれたスーツに身を包み、首からNASAのIDカードをぶら下げていた)突然の訪問の理由を説明をした。すると彼は楽しそうに笑って、俺のつい先日の経験について目を細め、キッチンに立ち眠気覚ましのコーヒーを出してくれた。別に嫉妬して欲しいわけじゃあなかったけれど、それでも気分を悪くさせるかと少し冷や冷やしていたのだが、ゼノの場合はどうやら違ったらしい。
「それで、いい子はいたかい? 君好みのセクシーな子はいた?」
「あんた以上にセクシーな奴はいないのに?」
 俺は湯気が立つコーヒーを飲みながら、長距離バスに乗ったせいでみしみしいう肩を回し質問を質問で返した。するとゼノは君がストリップバーにね、とまた笑った。何がそんなに面白いのだろう? もしかして、あんたは俺の知らない間に行ってたん? 俺の方が遅れを取ってた?
「もしかして、あんた……
「大丈夫、NASAに入ってからは法を犯してないよ。ストリップバーには行ってないし、君以外とは酒も飲んでないよ」
 ゼノはそう言うと、俺のコップにアイリッシュクリームリキュールを入れ、ホイップクリームとシナモンを振ってくれた。それを飲むと喉が暖かくなり、甘みで頭が動き始める。法を犯してないね、そりゃあそうだろうな、もうNASAに入っちまったんだし、連邦政府の上の方と契約もしてるんだし。
「でも、君が全部自白するとは思ってなかったよ。そんなに僕に隠し事をしたくなかった?」
 ゼノが顔を近づけてくる。真っ黒な瞳、夜明けの空に浮かぶ月のような、銀色の髪の毛。コーヒーの匂いがする、小さな口から覗く綺麗な前歯。
「僕は心が広いから、君がストリップバーに行っても許すのに」
 骨ばった手のひらが俺の前髪をくすぐり、手の甲がこめかみをさする。久しぶりの彼の手は心地良く、そういえば混乱してすっかり忘れていたが、こうやってゆっくり話をするのは久しぶりだったことを俺は思い出した。とはいえ、このコーヒーを飲み終わったら、またすぐにでも長距離バスか飛行機に飛び乗って基地に戻らなくちゃいけなのだけれども。
「俺はあんたがストリップバーに行っても許さねぇよ。俺以外見ないでよ」
「君って、思った以上に嫉妬深いナイトだね」
 ゼノはコーヒーを飲み干し、僕は徹夜明けだから君に付き合えるかなって笑って、ベッドに誘ってくれた。俺はそれに応じるかどうか悩んだものの(外出届けは今日までで、だからすぐにでも基地に戻らなくちゃいけなかったのだ)、すぐに手を取ってベッドルームに行った。するとゼノはくすくす笑って俺の上にのしかかり、君はどんなふうに誘われた? って俺の耳元に囁いた。
 何だ、あんたも結構嫉妬深いじゃんって俺は思って、そっとキスをしてやった。それからは信じられないくらいの快感が襲ってきたのだけれど、それはまぁ、彼特製のコーヒーを飲み干した俺だけの話だ。俺だけが秘密にしている、そんなモーニングコーヒーの後の話だ。だから秘密、俺が二十一になって初めての刺激的なファックは秘密、絶対に誰にも漏らさない、そんな秘密だ。


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