燈 ともしび
2025-09-27 18:57:24
1327文字
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ぎゆさね版ドロライお題:【窓】

お題をお借りして二人が大学の同級生だったらという設定で書きました。さねさん視点。

「不死川!」
 今日の授業は午前中のみだったから昼飯は家で食べれば良いか。あー、でも冷蔵庫になんか食うもん残ってたか?
 そんなことを考えながら歩いていたら、頭上から大声で名前を呼ばれたので見上げる。太陽の眩しさに目を細めながら見れば、三階の窓から黒髪の見慣れた姿が手を振っていた。
「そんな上から人の名前を大声で叫ぶなァ」
 一応、抗議の返事をしてみるが相手に響くかは分からない。まァ多分響かない。そんなやつだから。
 案の定、響かないやつこと冨岡は全く気にした様子もなく「待っててくれ」と叫んで窓から姿を消してしまった。こちらの返事や都合は考慮されないらしい。相変わらずマイペースな男だった。

 木陰に移動して待つこと数分。冨岡が目の前まで駆け寄ってくる。汗だくで。この暑い中、三階からここまで走って来たのだから無理もない。後ろでひとつにまとめている髪の毛からも汗がひっきりなしに垂れていたので自分のタオルを差し出してやれば「ありがとう」と言って顔まで拭きだしている。
 まァいいんだけど、それ俺も一日中汗拭いてたやつなんだが。どうせ冨岡は気にしないだろうから言わないが。

「不死川は今日は終わりだろう」
「そォ。お前も?」
「終わりだ」
 言いながら冨岡は歩き出してしまったので、俺もその後をついて行く。
「うち来ないか」
「あ?」
「焼きそばを作ろうと思っていたんだ」
「はァ」
 冨岡は何事も気にしないやつだが、言葉も足りない。言葉のキャッチボールをすることを放棄してるのでやり取りも唐突だ。その態度に初めて会った時はなんだコイツって思ったし、顔は良いのに残念なやつだなァなんて思ってた。今は付き合いも長くなったので俺も慣れて呆れることは無いが、俺以外の人間とはどんな会話をしているのか時々心配になる。
「焼きそばの材料は二人分あんのォ?」
「ある。昨日のうちに買い込んだ。不死川が来てくれたら嬉しいと思って。」
 俺が一緒に食べることは返事前から決定事項かよ。これも唐突だし強引だし人の予定を気にしな過ぎィとは思ったが、それほどまでに俺と飯が食いたかったのかと視点を変えれば、目の前の男がなんだか可愛く見えて頭を撫でてやりたくなった。人目があるからしないけど。
……不死川が好きだから塩のやつにしといた」
 前言撤回。やっぱり撫でておくことにする。
 撫でたら途端に分かりやすく嬉しそうな顔をするし、こういうところが憎めないんだよなァ、冨岡。

「なァ、焼きそば俺が作ってやろうか」
 冨岡はあまり料理が得意ではないから俺の手料理を何よりも喜ぶ。俺も機嫌が良くなってサービスしてやろうと思って言ったが、
「いい」
「あァ?」
 んだよ、俺がせっかく。そう言い返そうとした。

「多分、焼きそばを食べたらその後は不死川のことを食べたくなると思うから体力を残しておいてくれ」
 このムッツリ男が。今度は頭を力一杯わしゃわしゃとかき乱してやったが、冨岡はやっぱり嬉しそうに笑うだけだったので俺も一緒になって笑ってしまった。
 なんだかんだこの気にしない、言葉も足りない、おまけにムッツリすけべな冨岡に俺もすっかりハマっているらしい。