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狛乃
2025-09-26 18:55:05
1244文字
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【ロゴまほ】彩月の前日譚
シュリアリ。アリンカ卒業後、シュリアくんの卒業少し前の話。アリンカサイドってあんまりかいたことなかったので。ほんとはシュリアくんの誕生日に間に合わせたかったやつ、全然間に合ってない。
***
魔法学校を卒業して、やらなくてはならないとしていたことも存外呆気なく終わり、一つの街に腰を下ろしたのが春の頃。
四季の移り変わりが大きくないそこでは、9月になったとはいえ日差しは暖かく、開けた窓からは軽やかな風が入る。
この窓辺から送った手紙と、その返事はまだ多くなく。
どれも宛先は互いの名前のみ。けれど確かに、友人たちとの繋がりは続いている。
バサリ、と大きく羽ばたく音がアリンカの耳に届いた。
バルコニーに出て、その主を迎える。
「ごくろうさま、ヴィロー」
緩く魔法を纏った左腕を差し出すと、大きな脚がそこに止まった。丁寧に赤い翼を折りたたむその躯体は、細腕には重すぎるのだが、魔法のおかげでそんな様子は全く伺えない。
「ちゃんと届けられた?」
そう言う彼女の頬に、ヴィローと呼ばれた大鳥は喉を鳴らしながら擦り寄った。
いい子、と撫でる首元には、革の鞄が下げられている。手紙や荷のやりとりをする時は、大小問わずここに収納される。そうしてこの鳥が宛先の元へ運ぶのだ。
当事者の居場所を記憶させたり、或いは転移魔法を発動させたりする、なにやら高性能な魔道具がヴィローには付けられている。「メンテナンスしてやったからしばらくは問題ないでしょう」と、アリンカが師から言われたのは早春の頃だったか。
配達鳥が小さく鳴いて、かばんの端を咥える。何かが入っている、と言いたげな様子に気づいたアリンカが留め具をパチリと外すと、一通の封筒が見えた。
するりと手にとる。見慣れた封蝋に思わずアリンカの瞳に輝きが増したのを、ヴィローは見ていた。
部屋に戻り、愛鳥を止り木に寄せ、机に向かう。すこし早る気を抑えながら、封をゆっくりと開いた。
ふぅわりと淡い香りが鼻をくすぐる。どの手紙にも決まってこの香り
…
あの人が時折付けていた香水と同じそれ。声や温もりも、連なるように目の前にあらわれる気がした。
(ええ、大丈夫。ちゃんと覚えているわ)
夏が終わる頃になったら、
…
あの日、自分がつけた約束を思い起こしながら、綴られた文字をなぞる。
『俺にとっては地図でしか見たことない地方です。知らない街、きっと貴女が気に入るものがあるんでしょう。たくさん案内してください』
いつもより少しばかり急いだ筆跡に小さく笑みがこぼれる。
『待ち遠しいです。早く、貴女に会いたい』
そう締めくくられた便箋を胸に抱え、「私もよ」と独りごちる。
別に、約束していた拠点の所在を知らせる手紙に返事を求めてはいなかった。けれど、間に合うようにしたためてくれたのだろう。普段なら返事を持たされたヴィローの帰還は、もう少し日にちがかかっている。先ほどはあまりにも早い帰りに、てっきり届けただけと思い込んでいたのだ。
そういう訳で、アリンカは思わぬ恋文に暖かくなるのだった。
ーー夏が終わる頃になったら、居場所を知らせるから。
きっと迎えに来てくれたら嬉しいわ。ーー
待ち望んだ日まで、もう少し。
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