endoftheyo
2025-09-26 12:36:17
4384文字
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okb誕(西大)

今まで書いてた二人とは別の西大。制限はいらないくらいだけどちょっとえっちにな雰囲気にはなるかも。


「大久保サン、明日は誕生日であいもそ?」
 
 きっかけは黒田からそういった声がかかったからであった。黒田は大久保の生まれた日などどこから聞いてきたのやら。大久保に誕生日を祝う習慣などはないため、明日が誕生日などということは本人が忘れているほどだった。
 大久保が確かそうだったと答えれば、「じゃあ明日は祝い酒にしもそ」などと勝手に話を進めはじめた。これは酒の口実にされたな……、と思いはするが、そろそろ気晴らしも必要だろうと潔く口実となってやったのである。
 
 
 翌日、江戸の上屋敷の一室にて一人で業務を行っていると、ど、ど、ど、と大きな足音が聞こえてきた。その足音の主は部屋の前で止まると声をかけることもなく、ざらりと突然襖を開けた。
「おはん、いつまで仕事しとっどか」
 襖の向こうに現れた大男……西郷隆盛は襖を締め切る前にそう告げる。
 大久保は開け放たれた窓の外を見るが、どうみても日は空の中心より少し傾いた程度。八つ時の鐘が鳴ったばかりだ。
「祝いごつん日くらい、はよ終わらせやい。もう店ん向かうど」
「早すぎっとじゃろ」
「いや、そいが明るいうちに初めにゃならん理由が出来たとじゃ」
 そう言うと西郷は、その理由も告げずに片付けを急かして大久保を部屋から連れ出したのだった。


 西郷に連れられて到着したのは、屋敷からそう遠くない場所にある料理屋だった。二階に上げられ、急な階段を登り切ると、座敷のある襖の向こうから声が漏れ出ていた。
 既に集まっているのか、と襖を開ければ、そこにいたのは声の主である黒田の後ろ姿。その横に中村。そして、奥に女浪人の姿と上座には篤姫が座っていた。
「あ、篤姫様。なぜ……
 驚いて崩れ落ちるように膝をついた大久保に篤姫はくすくすと笑う。
「ちょうど屋敷に顔を出したら、そなたの誕生祝いをやると聞いてのう。面白いと思うて、顔を出したのじゃ」
「そういうこっじゃ。お忍びじゃっで、夜道を歩かせる訳にはいかん。そいでこん時間になったとじゃ」
「お気遣い痛み入ります」
 大久保が頭を下げると、西郷が大久保に頭を上げるよう促して席に着かせた。


 黒田は乾杯の音頭をとって盃を掲げ、まずは一杯飲み干す。そして、
「大久保サン、せっかくの祝いの席じゃっで、皆贈り物を用意しもした。おいからは……
と言って、大久保の横に移動した。己の懐をまさぐって小さな小包を取り出して、大久保に渡す。
「煙草であいもす。これが一番間違いなかち思いもした。大久保サンがいつも江戸で買うてるんとは違ご店ん煙草じゃっで、吸い比べてくいやんせ」
「ああ、ありがとう」
「ちゃーんと、産地は薩摩ん国分もんじゃっで」
 大久保が礼を言うと黒田はそう付け足して、席に戻る。すると今度は中村が大久保の元へと来る。その表情は少し浮かないようだ。
「すいもはん、被りもした」
 大久保の元に座ると、そう謝って包みを取り出す。黒田の持ってきた包みとは少し色が違うようだ。
「黒田んとことはまた違ご店じゃっで……。国分ん葉を使ったもんで江戸で評判の調合の店であいもす」
「よい。煙草はいくらあっても困らぬ。ありがとう」
「すいもはん」
 中村はもう一度謝って席に戻った。
 中村が席に戻ると西郷と女浪人が目を見合わせる。西郷が顎でくいと合図をすると隠し刀は立ち上がり、大久保の元に向かった。
「すまん」
 そう言って隠し刀は座ることもなく、大久保の目も見ずに小箱を差し出した。小箱には〝Cigarette〟の文字。西洋煙草の箱である。
「お前は……これが、一番……喜ぶから」
 隠し刀は歯切れ悪くぽつりぽつりと話し、そそくさと元いた場所へ戻って行った。
「ありがたいことだ。気遣い痛み入る」
 大久保は隠し刀の方に身を向けて、胸の前に軽く小箱を掲げると礼を言った。

 篤姫は飛び入りで参加したので贈り物の用意はないだろう。そのため、皆必然的に西郷の方を見た。すると西郷は懐から小包を取り出して大久保の方に差し出した。
「いつも吸っとるやつじゃ」
 そう言うと西郷は決まりが悪そうにガリガリと後頭部を掻いた。
「ああ。すまぬな」

 全員が煙草を用意してしまい、皆一様に気まず気に押し黙った。そんな中、上座から「ぷっくく……」と笑い声が漏れ出てくる。
 皆が声の出所を見れば、篤姫は堪えきれぬとばかりに扇子の下でくすくすと笑っている。
「そなたら、気が合うのう。というより、大久保が吸いすぎなのじゃ」
「お恥ずかしいところをお見せしました……
 大久保は「んん」と咳払いをして黙礼をする。
「では私からも大久保に一つ祝いの品をやろう」
 篤姫は「ほれ」と手招きをした。大久保は即座に篤姫の方に近づくと、篤姫が差し出した細長い木箱を頭を下げたまま受け取る。
「開けてみよ」
「はっ」
 大久保が小箱を開けるとそこには黒の漆で塗られた棒が一本入っていた。
「これは……
「簪じゃ。その長い髪は食事をする時には邪魔であろう? そなたは器用に食べておるが……気になるのじゃ」
 篤姫の言葉に大久保は再び苦い顔をする。
「見苦しいでしょうか?」
「いや、別にそなたが気にならないのであればかまわぬ。じゃが、顔を洗う時などいちいち括るよりは楽であろう? 傾奇者のようにいつも付けておれというわけではない。たまに活用してくれたらよい」
「ありがたき幸せ」
 大久保は手をついて深々と頭を下げた。

「そいにしても篤姫様、簪などいつご用意されもした?」
 篤姫は藩邸に顔を出してすぐ宴席の話が持ち上がり、店に移動したので簪を買う時間はなかったはずである。皆が思っていた疑問を黒田が尋ねた。
「猫が使いに行ってくれたのじゃ」
 そう言って篤姫は女浪人の方を見た。
「飾り気のない簪と言われてな。馬を走らせて買ってきた」
 女浪人はそう言うと大久保の背後ににじり寄る。
「せっかくだ。付けてみるといい。こうやってねじって……
 簪などつけたことのない大久保の手を取って、付け方を教えながらその長髪をくるりと簪でまとめ上げた。
「たしかに、括るより早いな」
 大久保は感心しながら、僅かに露わになった生え際を片手でなぞる。
「じゃろう? まあ、あまり付けたままにすると髪に跡がつくからの、今は外しておけ」
「はっ。大切に使わせていただきます」


 それから、日が落ちる前に篤姫は女浪人を護衛に薩摩屋敷に帰って行った。大久保たちも送ると言ったのだが、水を差したくないと固辞し、少し落ちるのが早くなった日を恨めしそうに店を出た。
 そして月が高くに昇ったころ、黒田が手をつけられなくなった。陽気に酔っ払っているのだが、身振り手振りが大きくなったせいで盃は薙ぎ払われるわ、つまみを乗せた膳を蹴飛ばすわと大暴れである。
 見かねた中村が、
「おはん、ちっとはじっとしとらんか!」
と、黒田を押さえ込んだのが結果的に悪かったのだろうか。
「なんじゃ! 喧嘩は買うど!!」
 などと言って、黒田は抑え込む中村を突き飛ばして反撃に出た。
 皆、遅くまで飲んでいた時点で、この展開は覚悟はしていた。大久保はどうしたものかと息を吐く。
 中村がうつ伏せにさせた黒田にのしかかって声を上げる。
「祝いの席にすいもはん。こいは、おいがどうにかすっでお二人とも帰っぶッ……〜〜〜!!!」
 中村が喋りきる前に黒田の裏拳が顔面に直撃した。怯んだ中村に、黒田はすかさず体を起こして正面から組み付く。
「ええ加減にしやい!」
 それまで押さえ込むだけにしていた中村が頭突きをかまして、とうとう殴り合いに発展していく。その合間にも中村が大久保と西郷に帰れと手で示した。
「頼んだど」
 西郷は中村にそう言って、大久保を部屋の外に出そうとする。
「いや、あれは全員で押さえ込んで置いた方が良くないか?」
「時間がかかっで。中村もああ言っとるし、よかじゃろ」
 大久保は西郷に押されて、ギャアギャアも騒いでいる二人に後ろ髪をひかれながら店を後にした。


 西郷はそのまま近場の宿へと大久保を連れ込む。藩屋敷からそれほど離れていない宿なので、大久保は少々の抵抗を見せたが西郷の前では全く意味をなさなかった。
 中に着ているとっくり服を脱ぎ、長着だけになって二人で布団に寝そべる。
「そうじゃ、おはん。さっきん簪、もう一回付けてくれんかの」
 西郷は思い出したかのように起き上がるとそう言った。
「簪? 突然なんじゃ」
 大久保はそう言いながらも、まとめて置いておいた手荷物から簪を取り出す。先ほど女浪人の言っていた手順を思い出しながら、髪を束ねてねじり簪でくるりと纏めた。
「こいでよかか?」
 大久保は西郷の方を見ると、西郷は「よか……」と呟く。そして、大久保の肩を掴んで後ろを向かせると、露わになったうなじをべろりと舐め上げる。
「ひっ……! なにすっどじゃ」
「髪を上げるんも色っぽか……。さっきはとっくり服でよく見えんかったが、今はよう見える」
 大久保はまずい、と思って首元を両手で覆う。すると西郷は大久保の背を押してのしかかった。
「のう、こんまませんか?」
 大久保は両手が首元にあるため、床に手をつけず尻を突き出す形で大久保が伏せることになる。その尻に西郷の硬くなった熱が布越しに擦り付けられた。
「い、嫌じゃ。篤姫様にもらったもんをそんなことに使いたくなか」
「別にもうおはんのもんじゃろ。使い方なんぞ好きにしてよかはずじゃ」
「おいが嫌なんじゃ!」
 大久保は片手でうなじを守りながら、もう片方の手を床につく。そして足を伸ばしながら、西郷に背を向けて仰向けになるようにしながら距離をとった。
 上向きで伸び上がった大久保の膝の裏に、西郷が手を差し入れて引っ張り上げる。もともと体を片手で支えており不安定だったため簡単に布団に引き倒されて、頭を強かに打つ。
 と、ともにバキリ……と嫌な音が頭の裏から響いた。
「「あ……」」




 翌日、篤姫の前に床に頭をつけて縮こまる大男が二人。簪を送った覚えのない西郷まで共に謝っているのを見て篤姫はしょっぱい顔をする。
「申し訳ございません。如何なる処罰も甘んじて受け入れるつもりです」
 大久保が畳の目を至近距離で見つめながら言った。
「ほう。如何なる処罰ものう……

 大久保は篤姫と同じ髪型で側仕えをするよう命じられた。
 その日一日、薩摩の上屋敷では髪を綺麗に飾り上げ眉間に大きな溝を作った大久保。そして、篤姫の機嫌取りであるかのように、大福だの茶だのとあれこれ持ってきては、大久保の姿を何度も見ようとする西郷の姿があった。