三毛田
2025-09-24 14:26:02
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25 025. 笑った顔が見たいだけ

25日目
君の笑顔が好きだから

 憂いを浮かべた顔も、時折一瞬だけ見せる冷酷な表情も。
 別段嫌いではなく。
 けれども、どうせならば笑った顔が見たい。
 笑顔が彼に似合うから。
 光に向かって咲き誇る花のような、大輪の笑顔。
『丹恒!』
 名前を呼ぶと同時に笑顔を向けられると、胸が苦しくなる。
 その感情を、俺はなかなか認められなかった。
 認めてしまえば、彼が望む関係では居られなくなってしまうから。
 仲間として、友として。とても大切だから。そう、自分に言い訳をして。
 だから、どうしてこんなことになっているのかわからず困惑している。
「穹?」
 パーティー車両二階。穹に与えられたスペース。
 そして、そこの真ん中に鎮座するベッドに、穹によって押し倒されている俺。
 真剣な表情のはずなのに、苦しそうで。さらには、今にも泣き出しそうだ。
 そんな顔をするなと手を伸ばしたいのに、少し動かしただけでシーツに縫い留められる。
「ごめん、丹恒。嫌だったら、暴れて」
 苦しそうな声で告げると同時に、顔を近づけてきて。
「ふえぇん。丹恒の服、脱がし方分かんない……
 唇、頬、それからシャツのチャックを下ろして首へと口づけた彼は俺の服を脱がそうとして。腰回りの装飾を外せずに泣き出した。
 体を起こし、顔を覆って泣く穹の背中を優しく撫でる。
「俺は嫌がらないから、せめて同意を得てから脱がせろ」
 ポンポンと撫でてやると、鼻をすすりながら強く抱きしめてきて。
 落ち着いてから、どうしてこんな事をしようとしたのかを問いただす。
……丹恒が」
「俺が?」
「好きだから。でも、お前が俺のことを好きなのかどうかまでは、わからないから……
 言い分は何となくだが、理解できる。
 だが、彼が他者が嫌がるようなことを無理矢理するとは思えない。誰か唆した人物がいる筈だ。
「穹。誰がお前にこんな行動をするように告げた?」
「わ、わからない。夢の中で、ずっと耳元で囁かれていたから……
 彼の表情を見るに、事実なのだろう。
「穹」
 目尻の涙を拭い、頬を撫でる。
「ふあぁ……
 たったそれだけなのに、彼は耳まで顔を真っ赤に染め上げ。
「おれは、お前が笑顔で居てくれるのであれば何でもするつもりだ」
「へ?」
 俺の言葉は想定外だったようで、きょとんと黄金色を丸くする。
 ああ。ひどく愛らしい。
「お前が望むのであれば、口づけを交わすことも、体を差し出すことも厭わない」
 唇を指で撫で、下腹部を撫でればまた真っ赤に。
「た、丹恒?!」
「恋はないが、愛はあるからな」