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2024-12-01 21:42:47
2762文字
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燭鶴
右鶴ゆるペーパーラリーに参加させていただいたものです。
初夜のあとの後朝にいちゃついている二人。光忠くんはかわいくて格好いい年下の恋人だと思います。
web用に改行を変更しています。
昨晩、光忠と初めて交わった。
だから今朝は、初めて共に迎える朝だった。これまでは夜を一緒に過ごしても、寝るときは自室に帰っていたからだ。
鶴丸は昨晩の余韻が自分に満ちていたので、その余韻のまま後朝の睦言を交わそうと思い、光忠のほうへ身体を向けた。
さて、光忠はといえば、なんと鶴丸に背を向けて、さっさと布団を出ていこうとしているではないか。
「おいおい、後朝の言葉も交わさず恋人を置いていくのは、ちょっと情緒がないんじゃないか?」
「わーっ! 鶴さん、起きちゃった」
光忠は何やら慌てている。そして、まだ寝てて、布団をこちらの頭まで被せて、再び布団を出ていこうとした。
いったいなんなんだ、と鶴丸は布団を跳ね飛ばして彼を背後から捕らえると、布団に引きずり戻した。こう見えて、自分の力はけっこう強い。
「わぁ、待って待って」
引きずり戻された光忠は、苦し紛れという感じで鶴丸の目を手のひらで覆った。
「どうした、何か見られちゃまずいものでもあるのかい?」
「そりゃまずいよ、寝起きできちんとしてない僕なんて格好悪くて鶴さんに見せられない」
光忠によれば、どうやら支度をしていない自分は格好悪くて、見せられるものではないということらしい。
鶴丸は無理やり視界を覆っている手のひらを剥がして彼に向き合った。寝起きを見るのは確かに初めてだが、本人が言うほど、ひどい寝起きではないと思う。確かに、セットされていない髪の毛は普段に比べるとぺたんとしていて、あどけない印象ではあった。
でも、全然、格好悪いことはなく、いや、そもそも
――
。
「あのな、光坊。きみは何も気にする必要ない。俺にとっちゃ、きみが格好悪い瞬間なんて一瞬もないんだ」
「えっ、それって
……
、いつも格好いいって思ってくれてるってこと?」
ぱっ、と表情を明るくした光忠へ、軽く相槌のように頷いて
――
彼の言葉への肯定というよりは、合いの手のような頷きだ
――
鶴丸は続けた。
「俺にとっての光坊は、『格好いい』か『格好悪い』かの二択じゃない。『かわいい』か、
――
」
「『かわいい』か『格好いい』か、だね」
「いや、『かわいい』か『かわいい』だ」
「えぇ
……
、それって二択じゃなくないかな」
きっぱりと断言した鶴丸の言葉を聞いて、光忠は拍子抜けしたような、あるいは呆れたような、困ったような、なんとも言えない表情を浮かべた。
「だから、きみは俺の前ではどんな状態であれ、格好悪いかもしれないだなんて不安に思う必要はないんだ。光坊はいつでもかわいい」
「僕としては、鶴さんにいつでも格好いいって思われたいけど
……
」
いや、だって、格好いいときもあるでしょ?あるよね?さすがに戦場ではかわいくないでしょ?と光忠は畳み掛けるように食い下がった。
「いや、光坊は戦場でもかわいい。よく頑張っているところがな」
「えぇ
……
。もう、鶴さんには敵わないな」
光忠は照れと苦笑のあいだのような笑みを浮かべて、肩をすくめた。その様子もまた、かわいいなと思いながら、鶴丸はなんとなく尋ねた。
「かわいい、と、思われることは不満かい?」
こちらの質問が意外だったのかなんなのか、彼は目を丸くした。そして、うーん、と首をひねる。
「不満ではないよ。なんていうか、こう
……
、鶴さんにかわいいって言われるのは、本当を言うとなんか、嬉しかったりもするんだ。確かに格好いいと思われたいけど、鶴さんの『かわいい』は愛だなって、僕は勝手に思ってるから」
「そりゃもちろん、愛だぜ。かわいいきみを愛している」
ストレートすぎる言葉だったかもしれない。とはいえ、光忠は鶴丸の言葉に照れ笑いしているので、たぶん嬉しいと思ってくれたのだろう。健康的に、愛されている自信のある、年下の男。かわいい。
「じゃあ、さ、鶴さん、かわいい僕のお願いを聞いてほしいんだけど
……
」
「お、なんだい、鶴さんに言ってみろ」
さっそく己の「かわいい」を武器にしている彼は、なかなかちゃっかりしていると思う。何をお願いしたいのだろう、と鶴丸が首を傾げたところで、不意に軽く口づけを落とされた。
「
……
?」
「あなたを今から抱きたい。だめ?」
「おいおい、昨晩初めてだったところだろう。それに、今日は互いに非番といっても朝っぱらからというのはどうなんだ?」
「だって、ずっと鶴さんに触れたいと思ってたんだから、昨日の一回くらいじゃ足りないよ。それに、まだ早い時間だから朝ごはんまで時間はあるし」
だめ?と、光忠は鶴丸の目をまっすぐ見つめて、小首を傾げた。かわいいじゃないか。あざとい。
「鶴さんに愛されてるなって思ったから、僕もあなたのことを愛してるって、伝えたくて、それを伝えるために触れたいと思ったんだけど
……
」
じっ、とこちらを見る隻眼は曇りがなく、よく懐いた犬のように感じられた。つまるところ、かわいいのだ。
「
……
、俺の負けだ、光坊。だめじゃないぜ」
降参だ、と両手を挙げて見せたら、彼は嬉しそうにしている。存在しないはずのしっぽが喜びで動いているように感じられた。
実際、鶴丸としても今抱かれることはまんざらでもなかった。昨晩の光忠との行為は、想定していた以上に甘美なものだったし(こんなに乱れていいのだろうか、と思ったし、逆にそうして乱れているところを見ていてほしい、とすら思った)、かわいい、愛しいと思えば思うほど、彼に愛されたくなる。抱かれたく、なる。
光忠は一度、鶴丸を抱きしめて、それからゆっくりを布団の上に押し倒した。ふふ、と笑みを漏らして、機嫌が良さそうだ。
「鶴さんもね、かわいいよ」
「
……
?」
「僕に甘いところとか、今そうやって、抱かれるのを期待している目をしてるところとか、かわいい」
そう言って目を細めた光忠は、精悍な男の顔をしていた。彼はかわいい恋人のはずなのだが、しかし、今はどうだろう、ひょっとすると格好いいのかもしれない。
「たくさん愛させてね、鶴さん」
先ほど、「鶴さんには敵わない」、と言われたところだが、自分だって、この年下の男に敵わない、と思う。いくらかわいくても、年下でも、懐いた犬のようであっても、この坊やは男だ。そう思った瞬間に、肌の表面がざわ、と粟立った。期待したのだ、この男に抱かれることに。
鶴丸は自分に覆いかぶさる光忠の頬を手のひらで撫でた。
「とびきりの愛を注いでくれよ、光坊」
期待している、という続く言葉は、触れ合った唇のあいだで溶けていった。舌先が触れ合っただけでも気持ちがよくて、鶴丸はこの先の快感に期待しながら、目を閉じた。触れ合っている部分が、熱を持ちはじめている。
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