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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2025-04-17 18:24:54
3899文字
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月夜の恋
ネロキリ、吸血鬼パロです。
2016年作品を書き直したものになります。
二人が出会ったのは静かな満月の夜だった。
小さな町に佇む一軒家に、心優しく美しい少女キリエと、その両親が暮らしていた。
ある日の夜、両親は知人のパーティーに呼ばれ、キリエを一人残して出かけていった。
その日の夜はやけに月が光り輝いていて、その光に魅了されるように、キリエは窓を開けて月を眺めていた。
「綺麗
……
」
いつにも増して光輝く月を見つめながら、そう呟くキリエ。
こんな夜は、なにか不思議なことでも起こりそうだ。
キリエがそう思ったと同時に、誰かの気配を背後から感じた。
その気配に、キリエは慌てて振り返る。
「
……
あなたは?」
振り返った視線の先。そこには、銀髪の青年が佇んでいた。
物音を立てず、突然現れた青年。
不思議なことに、キリエはその青年に不信感を抱くことはなく、ただ、月明かりに照らされている白銀の髪に見とれていた。
「こんばんは、お嬢さん」
「あなたは一体
……
」
「俺か?俺は
……
ネロ」
ネロと名乗る青年は、ゆっくりとキリエに近付く。
「吸血鬼さ」
「吸血鬼
……
?」
吸血鬼なんておとぎ話でしか聞いたことないキリエは、その言葉を信じられないでいた。
そんな様子のキリエを見て、ネロは怪しげに微笑む。
「信じられない
……
って顔をしてるな」
「だって、吸血鬼だなんて、本の中でしか聞いたことないもの」
「それなら、証拠を見せてやろうか」
そう言った瞬間、ネロはキリエの首元に勢いよく噛みついた。
「?!」
キリエの首元がチクッと痛む。突然の出来事に、キリエは声が出せず、動けずにいた。そして、その痛みにただただ、耐えていた。
「なかなか上等な血だな。うまかったぜ」
ネロが首元から離れると、キリエは血を吸われたショックからか腰を抜かしそうになった。そんな彼女を、ネロが優しく支える。
「おっと、大丈夫か?悪い、ちょっと吸いすぎたな」
そう言うと、ネロはそっとキリエの顔を覗き込んだ。
「
……
!」
その瞬間、ネロの鼓動が体の奥深くで強く脈打った。
(なんなんだ
……
)
キリエの赤く染まった顔、涙目で潤んだ瞳、それを一瞬見ただけなのに、ネロの鼓動は高鳴るばかりであった。
「
……
どうしたの?」
そんなネロの様子を心配そうにうかがうキリエ。
ただでさえ倒れる寸前だというのに、自身のことを気にかける彼女。
そんな優しいキリエのことを、ネロは愛おしく感じてしまった。一目惚れというやつだろうか。
「君、名前は?」
「キリエ
……
」
「キリエか
……
。素敵な名前だな」
そう言うとネロは、キリエを抱えてベッドに寝かしたあと、窓を開けて外へ出ようとした。
「待って
……
」
その時、キリエはネロが羽織っている漆黒のマントを弱々しく掴んだ。
「また、会える
……
?」
キリエのその問いにネロは優しく微笑むと、彼女の頬にそっとキスをした。
「また、満月の夜にな」
そう言って、ネロは窓から飛び降りていった。
「あ
……
!」
キリエは慌ててベッドから起き上がり窓の外を見たが、そこには何もなく、ネロは既に暗闇と共に消えていた。
「満月の夜
……
」
約一カ月後、キリエは高鳴る鼓動を押さえつつ、眠りについていった。
突然目の前に現れた、青年のことを想いながら。
***
あの夜からどれくらいの時がたったのだろう。
ネロは一向に、キリエの元に現れなかった。
それには理由があった。
ネロは吸血鬼のため、定期的に様々な女性の血を吸い続けながら生きている。キリエも、その一人にすぎなかった。
しかしあの夜、ネロはキリエに惚れてしまった。
惚れた女性の血が極上に感じるのは、吸血鬼の性質であった。
そして、その極上さ故に、全ての血を吸い尽くしてしまう可能性もあった。
あの晩、少し血を吸っただけでもフラフラになったキリエのことを思うと、ネロはキリエの元に行くことができなかった。
だが、彼女とまた会う約束をしている。
その約束を果たすため、ネロは高鳴る鼓動を抑えつつ、キリエの元へ向かうことを決めた。
***
「ネロ
……
」
あの夜から、何回満月を見届けたのだろう。
月夜が綺麗な夜に、キリエは必ず窓を開けて空を見上げていた。
「早く、会いたいわ
……
」
今夜はやけに、静かすぎる夜だった。
キリエの両親も寝静まっており、キリエの部屋は月明かりで照らされていた。
「
……
」
数ヶ月前、突然目の前に現れた銀髪の青年。
こんな夜遅くに少女の部屋に現れるだなんて、普通ならば身の危険を感じ悲鳴をあげて助けを求めるだろう。しかも、彼は吸血鬼だという。
だが、キリエは一目見た瞬間から銀髪の青年、ネロに惹かれてしまった。月明かりに照らされた彼の銀髪が、あまりにも美しかったからだろうか。
(ネロ
……
どうしているのかしら)
いつ会えるか、居場所も分からない彼に想いを寄せて数ヶ月。
会えない寂しさに、キリエは心がチクッと痛むのを感じた。
(今夜も
……
来ないのかしら
……
)
そう思い、キリエは諦めてベッドに入ろうと窓を閉めて振り返った。だが、その時だった。
「
……
!」
「久しぶりだな、お嬢さん。いや、キリエ
……
」
そう、振り返った先にはずっと会いたくてたまらなかった青年、ネロがいた。
「遅くなってごめんな。ちょっと訳ありでね
……
」
「いいの。来てくれて嬉しいわ」
キリエはそう言うと、ネロの元へと歩み寄った。
「待て。動くな」
しかし、それをネロが阻止する。
「
……
?」
ネロの言葉により、キリエはその場に立ち止った。
「キリエ、そのまま聞いてくれ」
「うん
……
?」
少し重たい空気の中、ネロが話し始めた。
「キリエ、俺は吸血鬼だから、人間の血を吸わないと生きていけない。そして、血を吸われる人間の体にはどうしても負担がかかってしまうんだ。簡単にいうと、貧血を起こしてしまう」
キリエは黙ってネロの話を聞いていた。
確かに、初めて血を吸われた夜、今まで感じたことのない鼓動、息苦しさを感じていた。そして、ネロが血を吸い終わったあとに酷い立ちくらみもあった。
「それに、どうやら俺は君に惚れてしまったらしい。惚れた女の血は極上でな
……
」
「ネロ
……
」
「君の血を吸うことによって、君のことを苦しませたくない」
だから
……
とネロが続ける前に、キリエはベッドへと向かっていった。そして、ベッドの上に自身の体を寝かせた。
「ネロ、あなたに私を差し出す覚悟なら、あの夜とっくにできているわ。だから
……
」
キリエは自ら襟元のボタンを外した。
「我慢しないでネロ。私は、大丈夫だから」
キリエのその一言により、ネロは理性の糸が切れた。
「キリエ
……
」
ネロは、襟元のボタンを外してベッドに横たわっているキリエに静かに覆い被さった。そして、彼女の首元に己の八重歯をたてた。
「っ
……
!」
キリエの首元にチクッと痛みが走る。
そして、今まで感じたことのないような熱が体中をかけ巡っていた。
「っぁ
……
」
痛みなのか快感なのか、よく分からない感覚に、キリエはただ耐えていた。
「っあ
……
!」
ドクドクと鼓動が高鳴るキリエ。そんな彼女の様子を見つつ、ネロはただ血を吸い続けていた。
「っ
……
ネ
……
ロ
……
」
そして、しばらくすると、キリエは苦しそうに彼の名を呼んだ。
そんな彼女の様子を気にかけ、ネロは首元から離れた。
「悪い、止まらなくて
……
」
ネロは申し訳なさそうに謝ると、キリエの頭をそっと撫でた。
「はぁ
……
はぁ
……
」
キリエは血を吸われたことにより、貧血状態になっていた。
そんなキリエの姿を見て、一人悩むネロ。
自分は吸血鬼だから、人間の血を吸わなければならない。しかも、愛しい人の血なら尚更欲しい。
だが、やはり苦しそうにするキリエの姿を見たくはなかった。
彼女の血も、心も体も求めたいが、その度に苦しませるのは凄く辛かった。
ネロはキリエの唇にそっと口付けをすると、何も言わずに部屋から出ていこうとした。
「ネロ
……
待って
……
」
そんな彼を、苦しそうにしながらも呼ぶキリエ。
弱っている体をなんとか起こし、フラフラしながらもネロの元へと歩み寄った。
「ネロ、行かないで
……
。ここに
……
」
そう言って必死にネロの背中にしがみつくキリエ。
ネロは今すぐにでも振り返って彼女を抱きしめたかった。だが、これ以上は何が起こるかネロでも分からない。
キリエが欲しくて欲しくてたまらない想いを、これでも必死に抑えている。そんな状態で彼女の方を向いたら、本当に止まらなくなってしまいそうだった。だが、先ほどの行為でフラフラになっている彼女を放っておく訳にもいかない。
ネロは自分の想い、欲望を必死に抑えながら、キリエの方に振り向く。そして、彼女をそっと抱き上げた。
「ネロ
……
?」
キリエの呼びかけには応じず、ネロはそっと彼女をベッドへ寝かせた。
「ネロ、私
……
」
キリエが何か言いかけた途端、ネロは彼女の瞳にそっと自分の手を被せた。
「今はゆっくりお休み
……
キリエ
……
」
ネロがそう言うと、キリエは不思議な眠気に襲われた。そして、そのままゆっくりと眠りについた。
「
……
」
部屋に静寂が訪れる。
ネロは眠りについたキリエの呼吸が規則正しくおこなわれていることを確認すると、安堵の息を漏らした。
「キリエ
……
」
どこか物欲しそうに彼女の名を呼ぶネロ。
(また、満月の夜にな
……
)
ネロは心でそう呟くと、暗闇と共に消えていった。
満月の夜。それは、禁断の恋の時間。
了
(満月の夜
……
。遠いな
……
)
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