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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2025-03-13 18:44:19
1862文字
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secret……二人のはじまり⑤
依頼から帰ってくるネロを、港までキリエが迎えに行くお話。
ほんのり甘い雰囲気が漂う二人。
【secret
……
二人のはじまり】⑤
短いようで長い日々だった。
この日をどんなに待ちわびていただろうか。
今日は、ネロが依頼を終えて帰ってくる日だった。
自宅で待つのがもどかしかったキリエは、一足早くネロが乗船している船が辿り着く港へと足を運んでいた。
(確か、十六時くらいには着く予定だったわよね
……
)
海風が吹く中、キリエは冷たくなった手をギュッと握りしめて、ネロのことを待ち続けていた。
ネロから連絡があったのは、数時間前のことだった。
久しぶりに自宅の電話が鳴り響き、恐る恐る受話器を手に取ったキリエ。電話をかけてきた相手はネロだった。
電波が悪いせいか少し聞き取りにくかったが、大好きな人の声を間違えるはずもない。
キリエは嬉しさで昂る気持ちを押さえつつ、少しの間ネロと電話で話した。
「多分、早くて十六時くらいに着くと思う」
「うん、気を付けてね」
そんな感じで一言、二言くらいしか話さなかったが、お互い早く会いたい気持ちを更に募らせた。
ネロが依頼の間、気まずい雰囲気のせいで一切連絡を取ってなかった二人だったが、時間と共に互いの気持ちも落ち着いたらしく、久しぶりに会うことに何の抵抗も緊張もなかった。
むしろ、早く会いたくてたまらなかった。
「ネロ
……
」
港にはキリエただ一人。
大好きな人の名前を呟いた声が、静かに響き渡った。
それに応えるように、遠くから船がこちらに向かってくるのが見えた。
時間的に、ネロが乗っている船の可能性が高い。
船が近付くにつれ、キリエの鼓動はどんどん高鳴っていった。
キリエは依頼をこなす度に逞しく感じるネロの体に、触れたくて堪らなかった。
早く早くと、船が到着するのが待ちきれず、キリエは柵から身を乗り出すようにネロが乗っているであろう船をじっと見つめていた。
そして、しばらくすると船は港へと辿り着いた。
それと同時に、キリエは船の乗り場付近へと足早にかけていった。
ネロに早く会いたくてたまらない気持ちを押さえるように胸元をギュッと握りしめ、愛しい人の姿が見えるのを待っていた。
(ネロ
……
?)
しかし、降りてくるのは船員らしき人ばかりで、なかなかネロの姿を確認することができなかった。
(この船じゃなかったのかしら
……
)
そう思い、ため息をつくとキリエは俯いた。
その時だった。
「キリエ」
自分を呼ぶ声にハッとなり顔をあげるキリエ。
その声を間違えるはずもない。
いつの間にか、目の前にネロの姿があった。
久しぶりに会ったからなのか、以前より背丈が高く、肩幅も広く感じた。
また一段と逞しくなったネロの姿に、キリエは言葉が出なくなってしまい、彼の姿をジッと見つめてしまった。
「キリエ?」
ネロは自身を見つめているキリエの姿に、首を傾げた。自分を見た瞬間、胸に飛び込んでくるかと思ったが、想像と違った行動に、少し戸惑っていた。
「キリエ
……
?」
とりあえず名前をもう一度呼んでみるが、キリエは固まったままだった。
その時、急に肌寒い風が強く吹き始めた。
「きゃ
……
」
風はキリエの背後から吹き、キリエはそのまま押されるようにネロの元へとよろけていった。
そして、その勢いのままネロの胸に飛び込み、ギュッとしがみついた。
そんなキリエをネロは優しく受け止め、そのまま抱き締めた。
そこでキリエはハッと我に返り、ネロに抱き締められながらネロの顔を見上げた。
「ははっ
……
。やっと動いてくれた」
ネロはそう言うと、キリエの額に優しく口付けた。
(ネロ
……
)
ぎくしゃくしていた期間が嘘だったかのように、以前のように自身に優しく接してくれるネロの行動に安心したキリエ は、彼に聞こえるくらいの声で「お帰りなさい」と呟いた。
ネロも耳元で小さく「ただいま」と呟くと、キリエを更にギュッと抱き締めた。
キリエもそれに応えるように、ネロの広い背中に精一杯腕をまわす。
その時、先ほどの風が更に強く吹き荒れた。
「っ
……
寒いな」
「そうね
……
」
そんな会話をし、更にギュッと抱き締め合う二人。
寒さのせいか二人はそのまま動けず、離れられず、互いの温もりを感じるようにしばらく抱き締めあっていた。
「早く帰ろうか」
「うん
……
」
そう会話はするが、二人はまったく動かない。
そんな二人が自宅へと帰ったのは、吹き荒れる風が止んだ頃だった。
***
冷たい風が、二人の距離を近付ける。
(俺は覚悟を決めた)
to be continued
……
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