Shall We Dance?〜ドレス選び編〜

数年に一度、不定期に開催されるフォルトゥナ城の舞踏会に向けて、ダンテ、ネロ、トリッシュ 、レディ、キリエがお店にドレス選びに来たお話。
ネロキリ話だけど、みんなでワイワイちょっとギャグあり👗⭐️

 数年に一度、不定期に開催されるフォルトゥナ城での舞踏会。
 その舞踏会に向けてのドレスを選ぶため、ダンテ、ネロ、トリッシュ、レディ、キリエは、フォーマルウェアを扱う店を訪れていた。
「それにしても、フォルトゥナの住民じゃない俺たちも参加してよかったのか?」
「ああ、問題ないさ。招待状もちょうど、ダンテたちの人数分余っていたし。あのときだいぶ世話になったから、そのお礼も兼ねてさ」
 今回の舞踏会は、悪魔騒動で崩壊した街の復興を記念して開かれるものだった。
 だからこそ、ネロはダンテの事務所宛てに三人分の招待状を送ったのだ。
「しかし、こうした舞踏会に参加するなんて久しぶりだな」
「俺は、幼い頃以来かな。キリエの両親に連れて来られたことがあって、そのときはキリエとフロアの端で踊ったっけなぁ……
 その頃を懐かしむように、ネロの口元がふっと緩む。
「それにしても、女性陣は大変だよなぁ。俺たち男はスーツとかで済むけど、ドレスは種類が多いからな」
 ダンテは、先ほど何着ものドレスを抱えて試着室へ消えていった三人の姿を思い出していた。
「まぁ、仕方ないさ。久しぶりの舞踏会で、キリエも張り切っているみたいだし」
 彼女はどんなドレスを選ぶのだろうか——そんな期待がネロの胸をよぎった、その瞬間だった。
 着替え終わったトリッシュが、試着室の扉を開けて姿を現した。
「ダンテ、どうかしら?」
 トリッシュは、胸元と背中が大胆に開いた黒のドレス姿で現れた。光沢のある生地が、照明を受けて艶めいている。
 いかにも彼女らしい——ダンテとネロは二人してそう思った。
「うーん……もうちょっと脚のスリットが開いててもいいと思うが。それじゃあいつもと変わらねぇな」
 ニヤつきながら、ダンテはからかうようにそう言った。
「なに言っているのよ。これ以上露出したら、舞踏会から追い出されてしまうわよ。次のドレス着てくるから、今度はちゃんと選んでよね……
 トリッシュは呆れたようにため息をつくと、そのまま試着室に引き返した。
「まったく……ああ言いつつ、最初から露出多いの選んでるじゃねぇか。こういうときくらいはおしとやかな格好すりゃいいのにな」
「そうだな……
 それをトリッシュに伝えたところで、意味がないことをわかっているダンテとネロ。二人は視線を交わすと苦笑いした。
(キリエも、そろそろ着替え終わったかな?)
 ネロは店内のソファに腰を下ろすと、試着室のほうへ視線を向けた。
 そのとき、慌ただしい音と声が聞こえてくる。
「きゃあ! レディさん……! そんなところ触らないでぇ〜!」
「ほら、じっとしてて! こうしないと胸を寄せられないでしょ!」
(胸を寄せ……? ……え?)
 試着室から聞こえたレディとキリエの会話。
 レディがキリエの着替えを手伝うため、二人は一緒の試着室へと入っていたのだった。
(一体、何をしているんだ……?)
 中の様子が気になり、ネロは試着室の扉をじっと見つめる。
「あら〜! 似合うじゃない! ほら、早速見せて来なさいよ♪」
「ええっ!? ちょっと……レディさ……きゃっ!」
 レディに背中を押されたキリエは、試着室から飛び出す勢いでダンテとネロの前に現れた。
「ん゛ん゛っ゛?!」
 目の前に現れたキリエの姿に、ネロは思わずむせた。
 キリエが着ていたドレスは、胸元も背中も脚も大胆に開いた、体のラインがはっきりとわかるようなタイトなデザインの赤いドレスだった。
 着替えの際にレディが手を添えたこともあって、彼女の豊かな胸は中心に寄せられ、谷間もくっきりと作られている。
「ダンテ、ネロ、どうかしら?」
 キリエに続いて試着室から現れたレディは、両手を広げるようにして、キリエのドレス姿を堂々とお披露目した。
「ほほう……♪ なかなかいいじゃないか? 嬢ちゃん、赤色も似合うな♪」
「もう! ダンテさんまで、何言っているんですか! こんなの着ていけるわけないじゃないですか!」
「大丈夫よ♪ そのドレスなら、ブラジャーつけなくてもパッドがしっかりしているから安心だし」
「もう! そうじゃなくてぇ〜!」
 キリエは顔を真っ赤にし、思わず声を張り上げた。
「ごめんごめん! そんなに怒らないで? ほら、今度はちゃんと真面目に選んであげるから、ねっ♪」
「もう……お願いしますよ、本当……
「ということで、また着替えてくるわね〜!」
 レディはくるりと背を向けると、キリエの背を押すようにして、試着室へ戻っていった。
 
 一方ネロは、片手で顔を覆ったまま、うずくまるようにソファに沈み込んでいた。
 キリエのドレス姿の刺激が強すぎたのか、耳の先まで真っ赤になり、じわじわと熱が広がっていく。
 その様子を見て、ダンテは隣に腰を下ろした。
「ハハッ。ああいう格好って、裸より刺激的だったりするよな」
 そう言ってダンテは、ネロの肩にポンと手を置いた。
……
「ネロ、大丈夫か?」
……
「お前、まさか——
「頼む。それ以上……何も言わないでくれ」
……わかった」
 ダンテは男同士にしかわからない事情を察し、何も言わずにネロの背中を軽くさすり続けた。

「ダンテー?」
 しばらくすると、試着室からトリッシュの声が飛んできた。
「ちょっと来てくれない? ファスナーが上げにくくて」
「ああ、今行くよ。……ってことで、俺は相棒の着替えを手伝ってくるな」
「あぁ……
……まぁ、落ち着くまで外に出て風にでもあたってな」
……そうするよ」
 ダンテがソファから立ち上がると同時に、ネロも腰を上げる。そしてそのまま、店の外へと出ていった。

 それから数分後——トリッシュ、レディ、キリエが普段着で試着室から出てくるのが、店の外から見えた。皆、無事にドレスが決まったらしい。
 三人はダンテのツケで会計を済ませたあと、紙袋を持って店の外へ出てきた。
「ネロ、お待たせ! ごめんなさい、遅くなってしまって」
「あぁ……大丈夫だよ」
「? ネロ、顔が赤いけど……大丈夫?」
「大丈夫……さっきよりは……
「?」
 ネロの事情を知らないキリエは、彼の様子に首を傾げる。
「さてと、皆ドレスを選び終わったことだし、飯でも食いにいくか?」
「あら、いいわね」
「もちろん、ダンテの奢りでしょ?」
「お前ら、ドレスといい飯といい……
「決まりね♪」
 ダンテの返事を待たずに、トリッシュとレディは近くのレストランへと入っていく。
「まったく、アイツらは……
「ダンテも、色々大変だな……
「まぁ、いつものことだけどな……俺たちも早く行こうぜ」
 ダンテは小さくため息をつくと、ネロとキリエの肩を抱えるように歩きながら、レストランの中へ入っていった。

***

 それから五人は夕食を楽しみ、遅くなる前にそれぞれの帰路へとついた。
「楽しみね、舞踏会。何年ぶりかしら?」
 キリエは買ったドレスを胸に抱え、弾むような足取りでネロの隣を歩く。
「ネロは、当日どんな服装なの?」
「俺やダンテはシンプルに、黒いスーツだよ。それに蝶ネクタイつける感じかなぁ……
「そうなの。楽しみね!」
 キリエは満面の笑みを浮かべながら、ネロの腕にしがみつく。
「ダンスの練習、たくさんしましょうね?」
 小さく頷きながらも、意識はダンスではなく、別のところにあった。
「ところでキリエ……
「ん?」
「結局、どんなドレスにしたんだ?」
「ふふっ。当日のお楽しみよ」
……まさか、あの赤いドレスじゃないよな」
「!」
 その一言で、キリエは思い出した。あの場には、ネロもいたことを——
(あのドレス姿を……ネロにも見られて——
 気づいた瞬間、キリエの頬がみるみるうちに赤く染まっていく。
「そんなわけないでしょ! もう、ネロったら!」
 声を張り上げながら、キリエはネロの背中を力強くバシッ!と叩いた。
「痛っ!」
「もう! ネロのエッチ!」
 言い捨てるようにして、くるりと背を向けると、キリエはそのまま駆け出していった。
「ちょ、キリエ! 待って……!」
 そんな彼女を、ネロは慌てて追いかける。

 こんな調子で、当日は大丈夫なのだろうか——と、ネロは赤いドレス姿のキリエを思い浮かべながら、ひたすら走り続けたのだった。



to be continued...