癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2025-02-04 19:07:30
1750文字
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tears〜覚悟〜

依頼場所へと向かう船でのダンテとネロのちょっとした会話。

船に乗り込み、フォルトゥナの街が見えなくなった頃、ダンテは黙ったまま水平線を見つめているネロに話しかけた。
「それにしても、嬢ちゃんの側を片時も離れないようなお前が今回の依頼に同行してくれるだなんて、正直驚いたぜ」
……
「だけど、助かったよ。本当はトリッシュを連れて行く予定ではあったんだが、場所が訳ありでな。昔、魔帝とやりあった場所の跡地だったから、アイツを連れて行くわけにはいかなかったんだ」
……
「ああ見えてトリッシュは、繊細な奴でな。心の奥底では、いまだに魔帝に対しての恐怖心が残っている。心が乱れてしまうようなことがあったら、危険だからな」
……
「まぁ、大丈夫だとは思うけどな。念のためってことで、今回はトリッシュを連れて行かないことにしたんだ。その代わり、嬢ちゃんの護衛を頼んだけどな」
……
ネロはダンテの話を黙々と聞きながら、ただ、水平線を見つめていた。
ダンテの話を聞き、今回の仕事はお互い大切な存在を守っていくための大仕事だと、改めて実感した。
(キリエ……大丈夫だろうか)
船に乗り込むとき、キリエが何か言いたげな様子でネロに向かって手を伸ばしてきたことを、ネロは気付いていた。
だが、振り返ることはせず、彼女に背を向けたままネロは船に乗り込んでいった。ここで振り返って彼女の体を抱きしめたりでもしたら、お互い心が揺らいでしまう。
今回ばかりは心を鬼にして、ネロはキリエに接したのだった。
だけど、本当はすごく辛かった。その感情が今になって溢れ出してきたのか、ネロは柵にしがみつくと肩を震わせた。唇を噛み締め、今にも溢れそうな涙をグッと堪える。
そんなネロの様子を見て、ダンテは隣にいるネロの肩に手をまわした。
「大丈夫さ。お前が思っている以上に、嬢ちゃんは強い子だぜ」
「っ……だけどキリエ、すごい泣いてたんだ……
……
「「信じて待つ」って言ってくれたけど、ずっと「寂しい」「行かないで」って……。夜、ベッドの上でずっと……俺にしがみつきながら……
「なるほど。昨夜はお楽しみだったってことか」
今にも泣きそうになっている状態だというのに、昨夜の出来事をダンテに見抜かれてしまい、ネロは恥ずかしさから顔が熱くなるのを感じた。そんなネロの様子を見て、ダンテは口元を緩ませた。
「まぁ、からかうのは後にするとして……。そりゃあ、寂しくて当然だろうな。お前のことだからどうせ、今回の仕事の話をしたのも昨日の夜だったんだろ?」
ダンテの言葉に、ネロは静かに頷いた。
「やっぱりな。尚更、気持ちの整理をするのに時間はかかるだろうぜ。だけど、心配しなくても大丈夫さ。彼女の側には、トリッシュやレディもいるし」
……
「嬢ちゃんのことが気になる気持ちは分かるが、今回の仕事を引き受けたからには、覚悟して挑まなければならない」
……
「お前が今やるべきことを、しっかりこなす。それだけだよ」
ダンテの言葉に、ネロは重たくなった口を開いた。
「だけど、あんなに彼女を泣かせて悲しませてまでこの仕事を引き受けた俺の選択は、間違ってたのかなって……思ってしまって……
……
「俺だって、やるからには気を引き締めて今回の仕事に挑みたい。俺自身を強く成長させるためにも、ダンテと共に戦いたいと思ったんだ。それで……
「それがお前の答えなら、それでいいんじゃないか」
……
「どちらを選択したにせよ、必ず迷いや後悔は生じてしまう。だからこそ、お前が選び抜いた答えが正解だと思う」
……
「大丈夫だよ、ネロ。何も心配することはない。今回の仕事のことも、嬢ちゃんのことも、お前自身のことも」
「ダンテ……
「まぁ、時間見つけた時に嬢ちゃんに手紙くらいは書いてやれよ」
そう言うとダンテはネロの頭をクシャッと撫で、部屋で休むことを告げるとその場を後にした。
……
昨夜、キリエを抱いたことを思い出しながら、ネロは自身の悪魔の右腕を見つめる。戦うためだけではなく、大切な人を守るための右腕を。
(キリエ、必ず帰るから。君のもとに、必ず……
ネロは新たな力を手に入れ、この先もずっと大切な人を守るために、戦う覚悟を決めたのだった。


END