癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2025-02-03 20:53:50
4088文字
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tears〜決意〜

ネロが依頼の関係でダンテと共に暫くの間遠くへ行ってしまうことになった。
寂しい想いを胸に、ネロとキリエはそれぞれの決意を抱くお話。

【tears〜決意〜 I】

「俺、暫く家を空けることになった」
寝る前のひと時を二人でソファに腰をかけて過ごしている時、ネロが突然キリエにそう告げた。
「え……
キリエは動揺のあまりハーブティーが入っているマグカップを落としそうになるが、ネロの話を詳しく聞こうと思い、一旦心を落ち着かせるため息を吸うと、マグカップをテーブルの上にそっと置いた。
「暫くって……どのくらい?」
「最低でも一ヶ月、いや、それ以上はかかると思う……
「悪魔絡みのお仕事?」
……あぁ」
そんなに長い期間、家を空けなければならないくらい大変な仕事内容なのだろうかと、キリエは不安げな表情を浮かべた。そんな彼女の心情を察しつつ、ネロは話し始めた。
「昔、ダンテが大仕事をした場所だったらしくて、それ以降は悪魔の出現もなく、長い間平和だったらしい。だけど最近、次元の狭間が現れて、そこから悪魔が大量に流れこんできたらしくて」
……
「その影響で、各地方にも悪魔たちが散らばってしまったらしい」
……
「ダンテは「俺一人でも大丈夫」とは言っているけど、トリッシュが言うには上級悪魔が大量に発生しているらしい。全て倒すには、時間がかかるだろうって」
……
「ダンテには世話になっているし、フォルトゥナで発生した事件の時、助けてもらった礼もしたい」
……
「それに俺、これを機にダンテの元で色々と学びたい。悪魔のことをもっと知って、もっと強くなりたい。フォルトゥナの街を、キリエを守るためにも」
……
ネロの話を黙々と聞いていたキリエは、今にも涙が溢れ出しそうな表情を浮かべながら重くなった口を開いた。
「場所は、どこなの……?」
「詳細はダンテじゃないと分からないけど、フォルトゥナからだと船で三日はかかるらしい」
「いつから行くの……?」
……明日の朝には、出発するよ」
「そんな……!急すぎるわ……!」
ネロが家を出るまでの時間の短さにキリエは憤りを感じ、思わずネロの腕を力強く握ってしまった。ネロの腕には、痛いほど彼女の気持ちが伝わってきた。
「ごめん……。実は、一週間前に決まっていたことだったんだ。荷造りも、終わっている」
「どうして……もっと早く言ってくれなかったの?」
キリエは震える声で、ネロに尋ねた。
「言い訳になるかもしれないけど、ダンテからこの話を聞かされてから、俺も仕事の合間に武器のメンテナンスや自身のトレーニング、ダンテとの打ち合わせや色々やることがあって、キリエに話すタイミングがなかったんだ。……本当にごめん」
「だとしても、急すぎるわ……
「キリエ……
キリエは堪えていた涙を流しながら、ネロの胸に飛び込むように抱きついた。
ネロの仕事が不定期なこと、デビルハンターという危険な仕事をしていることは分かっている。それが自分自身も含め、多くの人々を守るために行っているということも。分かってはいるが、普段からネロに対して心配事が絶えないキリエ。彼のことは信じているが、やはり本音は仕事に行くたびに心配でたまらなかった。
ただでさえそんな日々を過ごしているのに、長い期間、危険な仕事をしなければならない話を急に聞かされてしまっては、気持ちの整理がつくはずがなかった。
キリエはネロの話に頭も心も混乱してしまい、彼の胸で声をあげて泣き出してしまった。
「キリエ……ごめん……
ネロは泣きじゃくるキリエの背中を優しくさすりながら、彼女の震える体を抱きしめた。
本当はこのことを、もっと早く言いたかった。作ろうと思えば、話す時間だって作れた。だけど、今までずっと言えなかった。ネロには、ネロなりの理由があった。
ネロ自身も、悪魔絡みの仕事のことでキリエに毎回心配をかけてしまっていることに気付いてはいた。さすがに今回ばかりは反対されると思い、なかなか言い出せなかった。もちろん、ネロもキリエの側から離れたくはない。だが、自分自身を成長させるためにも、彼女の元を一旦離れる決意をしたのだった。
「キリエ、ちゃんと話せなかったこと、悪いと思っている……
「ぅぅっ……
「だけど、分かってほしい。これ以上、大切な人を失わないために……俺も行かなくてはならないんだ。ダンテと共に」
「っ……ネロ……ぅぅっ」
キリエは涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげると、ネロの顔をジッと見つめた。
「ネロの想い、分かってはいるの。ネロだって色々と悩んで決断したこと、私には話にくかったことも、分かってはいるの。だけど、ぅぅっ……
……
「ただ、寂しい……。行かないでって……その想いがたくさん溢れてしまって……
……
「ぅぅっ……ネロ……
キリエは再び、ネロの胸に顔を埋めて静かに泣き出した。
泣けば泣くほどネロを困らせてしまうことは分かっているが、それでも溢れる涙を止めることが出来なかった。
一定の期間とはいえ、クレド亡き今、ネロがこの家を出て行ってしまうとキリエは独りになってしまう。
ネロ自身も寂しい気持ちでいっぱいだった。可能ならば、キリエの側から離れたくない。
だが、ネロの決意は変わらなかった。ダンテと共にデビルハンターとして生きることを決めた日から、危険が伴うことも、彼女の側を離れてしまう時があることも覚悟していた。それは、自身を強く成長させ、大切な人を守るために必要な試練だった。
「キリエ、約束する」
「っ……
「必ず、君のもとに戻ってくる」
……
「だから、顔をあげて……
「ネロ……
キリエは再び、涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。その瞬間、ネロは彼女の頬を両手で包み込むように触れると、口付けをした。
「俺を信じて、キリエ……
「ネロ……
キリエは、まっすぐ自分を見つめてくるネロの瞳を見つめ返した。その瞳の奥には、何の迷いも感じなかった。
離れてしまうことへの寂しさは隠し切れていなかったが、それでも伝わってくるネロの強い決意を感じたキリエは、涙を袖で拭ったあと、重くなった口を開いた。
「ネロ……分かったわ。私、ネロのこと信じて待っているから……
「キリエ……ありがとう。必ず、君のもとに戻ってくるから」
「うん、絶対よ……
「あぁ、絶対に帰ってくる」
「その代わり、ひとつだけ……わがまま言ってもいい?」
「?」
「今夜は、一緒に寝てもいい……?」
「あぁ、もちろんだよ」
そう言うとネロはキリエを両腕に抱え、リビングを後にして自室へと向かっていった。

***

【tears〜愛情〜】※R18

R18作品となります。
読みたい方はこちらのURLへ……

https://privatter.net/p/11388237


***

【tears〜決意〜 II】

早朝、目が覚めた二人は身支度を整え朝食を軽く済ませたあと、家を出て港へと向かった。
少しでも長く、お互いを感じ合えるようにと、家を出てから二人は指と指をしっかりと繋ぎ合わせて歩き続けた。
……
……
港に着くまでの間、二人は一言も会話を交わさないまま、繋いだ手からお互いの温もりを感じ合っていた。

***

「お、来たな」
港にたどり着いた時、そこには既にダンテとトリッシュがいた。ちなみにレディは、ダンテの事務所で留守番役をしているとのことだった。
「ダンテ、待たせたな」
「さてと、早速だが行くとするか」
……あぁ」
ネロはキリエの手をゆっくり離していくと、ダンテの背中を追うように、そのまま船へと乗って行った。
「ぁ……
その時、キリエがネロの背中に手を伸ばして声をかけようとした。だが、思うように言葉を発せず、船に乗り込んでいく彼の背中を見守ることしか出来なかった。

ダンテとネロは船に乗ったあと、柵からキリエとトリッシュに向かって手を振ってきた。
(ネロ……
それに応えるように、キリエも精一杯手を振り返した。その瞬間、船が出航する汽笛が鳴り響いた。船は動き出し、手を振り続けている二人の姿は徐々に小さくなっていく。
キリエは、ダンテとネロの姿が見えなくなるまで、手を振り返し続けていた。
「っぅ……ネロ……
ダンテとネロを乗せた船が見えなくなったと同時に、キリエは涙を流した。トリッシュは、肩を震わせて泣いている彼女を自分の胸にそっと抱き寄せた。
「大丈夫よ。ネロなら必ず無事に帰って来るわ。真っ先に、あなたのもとにね」
「ぅぅっ……
「それに、ダンテも一緒だから心配いらないわ。あなたが想像している以上に、ダンテもネロも強いから」
「っ…………
「ネロがいない間は、私とレディが交代でフォルトゥナに滞在するわ。この街とあなたのことは、私たちが守る」
……
「だから、信じて待ちましょう。ダンテとネロを。大丈夫よ、私たちが側にいるから……ね?」
「トリッシュさん……
キリエは涙を拭いながらそっと顔をあげると、トリッシュのことをジッと見つめた。トリッシュはまったく不安げな表情を浮かべることなく、優しくキリエに微笑んでいた。
トリッシュの瞳の奥から彼らを信じ切っている強い想いを感じたキリエは、彼女の胸元から離れると、涙を拭い切って深呼吸をし、水平線をまっすぐ見つめながら話し始めた。
「トリッシュさん、ありがとうございます。側にいないのは正直寂しいけれど、ネロをもっと信じることにします。私が信じていないと、一番不安になるのはネロだから……
キリエはあの日、ネロから貰ったネックレスにそっと口付けると、再び水平線を見つめた。
「そうね。あなたが今できることは、ネロを信じて待つこと。それだけで十分よ」
トリッシュのその言葉に、キリエはネックレスを胸元でギュッと握り締めると、静かに頷いた。その姿を見たトリッシュは、彼女の隣に並んでそっと肩を抱き寄せた。
(信じて、待っているから)
水平線を見つめながら、二人は共に大切な人の帰りを信じて待つ決意を抱いたのだった。


END