癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2025-01-05 16:29:23
4525文字
Public
 

Wedding photo

DMC5のネロキリ。キリエのウェディングフォトをネロが撮るお話。

フォルトゥナの街に佇む教会。ここは昔から結婚式場として、フォルトゥナの住民によく利用されている場所だった。
その敷地内に写真スタジオとして使われている建物があり、ネロは一人、カメラを抱えながら撮影用の部屋に置いてある椅子に腰を掛けていた。
(やっと、この日を迎えることができたんだな)
今日は、待ちに待ったネロとキリエの結婚式の前撮りの日。
ネロはその場から立ち上がり、カメラを椅子の上にそっと置くと、光沢のあるシルバーのタキシードを身に纏った自身の姿を鏡に映した。
(キリエのドレス姿、楽しみだな)
鏡に映る見慣れない自分の姿に照れつつ、ネロは純白のドレスを身に纏ったキリエの姿が待ち遠しくてたまらなかった。
ネロの要望により、結婚式場の従業員やカメラマンが撮影の準備を終えるまでの間、空いている部屋を使ってネロがキリエを撮影する時間を設けてもらっていた。
最愛の人の綺麗な姿を、自身の手で写真におさめたい。ふと思い浮かんだ要望だったが、結婚式場の従業員一同、快く承諾をしてくれたのだった。
カメラの使い方や撮影のコツは、機械に強いニコやプロのカメラマンにネロは教えてもらっていた。
前撮りの日にキリエを自身の手で撮影したいことをニコに相談したところ、「やるならとことんやれ!」と背中を思い切り、強く叩かれ、そこからは約一ヶ月間、カメラや機材を使いこなすため猛特訓の日々だった。
「ははっ。忙しくて、大変な日々だったな……
だが、そんな日々のおかげでプロのカメラマンに褒められるくらいの撮影技術を身に付けたネロ。堂々と最愛の彼女の写真を撮ることが出来るようになったことを思うと、練習や特訓に付き合ってくれたニコとカメラマンには感謝でいっぱいだった。
(少し、緊張するけど)
ネロは、純白のドレスを身に纏ったキリエの美しさに、自分の撮影技術じゃ物足りないのではないかという不安が多少あった。しかし、この日のために猛特訓してきた日々を無駄にはしたくない。
ネロは深呼吸をしたあと、鏡に映る自分と再び向き合い、「よし」と軽く意気込んだ。
その時だった。扉がノックされる音と共に、結婚式場の従業員がネロに呼びかける声が聞こえ、ネロはそれに答えると扉の正面へとまっすぐ体を向けた。
(キリエ……
緊張で鼓動が高鳴るネロ。そして。目の前の扉がゆっくりと両側に開かれていった……


*** Nero side


あぁ……なんて美しいのだろう。
扉が開かれ、目の前に現れたキリエの姿を見た瞬間、時が止まったような感覚に陥った。
純白のドレスを身に纏い、純白のブーケを両手に握りしめながら俺に微笑むキリエ。笑顔も何もかも、眩しすぎるくらいだった。
俺はキリエの元に歩み寄り、彼女の手をそっと手にとると、室内へと誘導した。
俺たち二人が室内に完全に入りきったのを確認した従業員の人たちは、俺たちに頭を下げたあと、扉をゆっくりと閉めていった。それに続くように、俺たち二人も従業員の人たちに向けて軽く頭を下げた。
二人きりの空間。長年ずっと一緒にいて慣れているはずなのに、妙に緊張する。
俺は軽く息を吸ったあと、キリエに話しかけた。
「キリエ、凄く綺麗だよ。ドレス……似合ってる」
頬が赤く、熱くなるのを感じながら、俺は彼女にそう伝えた。本当は、もっと伝えたいことがたくさんある。だけど、上手く言葉が出てこなかった。
(本当に、凄く綺麗だ……
ドレス選びの時に、試着した姿を何度か見てきたはずだが、今目の前にいる彼女の姿があまりにも綺麗すぎて、俺は胸の鼓動を抑えることが出来なかった。
(落ち着け……俺)
だが、俺にはこのあと、彼女の綺麗な姿を写真におさめるという重大な役目がある。
俺は一旦気持ちを切り替えようと、大きく深呼吸をした。
「キリエ、そろそろ……始めようか?」
俺がそう話しかけると、キリエは静かに頷き、優しく微笑んだ。
俺は彼女の手を取りながら、撮影場所へと誘導した。
カメラ初心者でも撮影しやすいという理由もあるが、彼女だけを撮りたいという想いから、飾りも何もないシンプルな白いホリゾントを、俺は選んだ。
「ちょっとカメラの準備するから、そこに立ってくれる?」
俺にそう言われたキリエは両手でブーケを握ると、立ち姿でポージングをし始めた。俺はカメラの設定をしつつ、その様子を微笑ましく見つめていた。
(キリエ、楽しそうでよかった)
緊張しているかと思いきや、彼女の表情を見る限りリラックスしている様子だった。
……俺も、精一杯楽しまないとな)
俺はある程度設定をし終わったカメラを両手に抱えながら、彼女のもとへと近付いていった。
「キリエ、ちょっと試しに撮るよ」
俺はカメラのファインダーを覗きながら、キリエに話しかけた。そして、彼女がレンズの方に視線を向けて微笑んだ瞬間、カメラのシャッターを押した。
(どうかな……
俺は試しに撮った一枚の写真を確認するため、カメラの液晶モニターを見た。
(よし、大丈夫そうだな)
写真が程よい明るさで綺麗に撮れていることを確認した俺は、このまま撮影を続けていこうと再びカメラを構えた。
「キリエ、そのポーズのまま、全身を何枚か撮っていくよ」
俺の呼びかけにキリエは静かに頷くと、再びカメラのレンズに視線を向けて微笑んだ。その瞬間、俺はシャッターボタンを押す。そんな感じで、俺は彼女の全身写真を何枚か撮っていった。途中、撮影した写真を液晶モニターで確認しつつ、俺は彼女が微笑んだ瞬間を狙ってシャッターボタンを押し、純白のドレスに身を包んだ彼女の全身を写真におさめていった。
(そろそろ、構図変えようかな)
全身写真を十枚ほど撮り終わった頃、休憩も兼ねて俺はキリエに話しかけた。
「キリエ、大丈夫?疲れてない?」
「ええ、大丈夫よ」
「そしたら、少し構図とか変えて撮影しようか。撮ってほしいポーズとかある?」
「そうね。そしたら、無難にバストアップの写真がいいかな?ブーケ握ったままで」
そう言うとキリエは、固まった身体を軽く動かしたあと、ブーケを握ってポージングをし始めた。
楽しそうな様子の彼女を微笑ましく思いながら、俺はカメラを握り直すとファインダーを覗いて被写体の構図を確認した。
(バストアップで撮るなら、キリエの顔にもう少しピントを合わせたほうがいいかな……
彼女の眩しい笑顔をメインに撮りたい。そう思った俺はピントを顔に合わせつつ、ドレスが白飛びしないように明るさなどを調整したあと、試しにシャッターを押した。
「ネロ、どうかな……?」
試し撮りをした写真を確認している俺に、キリエがソワソワした様子で話しかけてきた。
「うん、大丈夫そうだよ」
俺は撮った写真を、カメラの液晶モニター越しにキリエに見せた。
「凄い綺麗……!ネロのカメラの腕前、プロのカメラマンみたいね」
俺が撮った写真を見たキリエはパァッと明るい表情になり、俺に精一杯の笑顔を向けてきた。
正直今でも緊張はしているが、少しでも彼女に気に入ってもらえたようならよかった。
「一ヶ月間、猛特訓してきたからな。キリエのドレス姿を、綺麗に撮るために」
「そうね。本当、嬉しいわ。ネロが私のために、ここまでしてくれたこと」
そう言うとキリエはブーケを握り直し、再びポージングをし始めた。
「ネロ、たくさん撮ってね」
「あぁ、もちろん」
俺はカメラを握り直し、キリエのバストアップの構図の撮影を再開した。全身を撮る時よりも彼女の顔が大きく写るため、笑顔を向けた瞬間を逃さないようにと、じっくりとカメラのファインダーを覗いた。
(キリエ、本当に楽しそうでよかった)
最高の笑顔を向けた一瞬を逃さないようにと、俺は彼女の表情やポージングを気にしつつも、次々と夢中になってシャッターを押し続けた。
こうして何枚か撮ったあと、俺は撮影した写真を確認するため、カメラの液晶モニターを操作した。
(キリエ、本当に綺麗だ……
液晶モニター越しに見る彼女の写真と、被写体となっている実物の彼女を交互に見つめている最中、俺は胸の奥から様々な感情が込み上げて来た。
キリエとは幼い頃から一緒にいて、家族として、姉と弟として、ずっと一緒に過ごしてきた。だけど、時間が経つと共に、俺の中で彼女への想いは家族愛ではなく、一人の女性として愛していることに気が付いた。だけど、素直になれない俺はその感情を認められず、ましてや女神のような彼女に恋心を抱いていいものなのだろうかと、自分の気持ちを抑え込んで過ごしてきた。
そして、フォルトゥナで起こった悪魔絡みのあの事件。あの出来事がきっかけで、俺は彼女への想いを再認識した。誰よりも、愛していると。もう、自分の気持ちに嘘はつかないと。
悪魔の血が流れている俺の全てを受け止めてくれた彼女のことを、生涯守り抜くことを誓った。
そんな彼女が今、世界一美しい姿で俺の目の前にいる。優しく微笑んでくれている。
俺は、なんて幸せなのだろうか……

……ネロ?」
「っ……
「!やだ、泣かないで?ネロ……
キリエと過ごした年月を思い出しながら、彼女への想いが込み上げてきた俺は感情が抑えきれなくなってしまい、顔を片手で覆いながら涙を流してしまった。
「っぅ……ごめん、キリエ……
キリエは椅子に置いてあったハンカチを手に取ると、俺の側に寄ってきた。
「このあと、プロのカメラマンさんに二人の写真たくさん撮影してもらうのよ?だから……ね?今は涙堪えて……?」
「っ……そうだな」
キリエは俺の頬に伝う涙をハンカチで拭ったあと、俺の首に腕をまわして触れるだけの口付けをしてきた。
「これで、涙止まったかしら?」
「あぁ。もう大丈夫だよ。……ありがとう」
「ふふ。よかった……
そう言うとキリエは、俺の手を引いて扉の方へ歩き出そうとした。
「そろそろ、教会の方へ移動しましょう?カメラマンさんも、準備が終わっている頃だと思うわ」
「そうだな」
俺は一旦カメラの電源を切り、椅子の上にそっと置いた。二人での撮影が終わったあと、またお色直しのドレスを撮影するのが楽しみだ。
「結婚式の日は、また違うドレスなんだよな」
「うん。お互い、楽しみね」
「そうだな」
そんな会話をしつつ俺とキリエは扉を開け、撮影用の部屋を後にした。


***


部屋を出たあと、ネロはキリエの手をとり、左手の薬指に光る指輪に唇を落とした。
「さぁ、行こうか……
ネロの言葉にキリエは優しい笑みを浮かべながら静かに頷くと、彼の腕に自身の腕を絡めた。
「なんだか、結婚式当日の気分になっちまうな」
「ふふ、そうね」
……
……
「なぁ、キリエ……
「ん?」
「幸せにするから」
「ありがとう、ネロ……
二人は再び口付けを交わすと、長く続く廊下をゆっくりと歩き始めた。向かう先は、二人が永遠の愛を誓う場所。
その場所でたくさんの思い出を写真におさめる楽しみを胸に、二人は輝かしい未来へと踏み出し始めたのだった。


END