癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2024-06-14 20:47:56
1331文字
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初代DMCダントリ短編。
突然降り出した雨。何気ない二人の日常の一部。

雨の日は別に嫌いじゃないさ。
街を行き交う人達は傘を差しながら足取り悪く歩いていて、見るからに機嫌が悪そうに見える。
(そんなにカッカと怒りを露わにしたところで、余計に気分が悪くなるだけだぜ)
俺は喫茶店の入り口の屋根で雨宿りしながらふと思った。
それにしても、急にこんなに降り出すなんてな。
今日、天気予報で雨だなんて言ってたか。テレビ見てないから、知らなかったな。
そもそも俺って、テレビ持ってたか。あぁ……そういえば、この前壊れて電源が入らなくなったんだっけ。
まあ、そんな事はどうでもいい。
雨の日は嫌いじゃないと言ったが、びしょ濡れになって帰るのも少し気が引ける。
雨が止むまで喫茶店に入ってお茶の一杯くらい飲んで休んでいくのもありだが、情けないことにお茶の一杯飲む金さえも、今は持っていない。
(最悪、濡れて帰るか)
びしょ濡れで帰ったら、相棒に怒られるのが目に見えているが。
通り雨ならいずれ止むだろうと思う、俺はしばらく喫茶店の入り口の屋根で佇むことにした。
喫茶店の客や店員たちの中には俺のことを店内から気にかけているやつもいたが、金を持ってないからには店の中に入るわけにはいかない。
(今頃アイツは、事務所で温かいコーヒーでも飲みながら寛いでいる頃か)
雨に濡れたせいか、俺は少しばかり身体が冷えて来るのを感じた。
(寒いな……
少しでも暖まろうと、身体を抱えるように腕を摩り始めたその時だった。

「ダンテ」

地面に落とした視線の先に、見覚えのある真っ黒のブーツが映り込んだ。
少し気怠い雰囲気を漂わせながら、俺はゆっくりと顔を上げる。
……トリッシュ」
真っ黒のブーツに真っ黒のスキニーパンツ。真っ黒のジャケットを羽織りブロンドのロングヘアをなびかせている女。そう、目の前に現れたのは俺の相棒のトリッシュだった。
「何でお前が……
「急に雨が降り出したでしょ。ダンテ、傘持っていないと思って、迎えに来たのよ」
そう言うとトリッシュは、自身が差してきた傘の持ち手を俺に強引に押し付けてきた。
「ほら、早く帰りましょ?一本しかないから、あなたが持って。あなたの方が身長高いし」
「持って……って、お前、傘一本しか持って来なかったのか?」
「ええ。そもそも、あなたの事務所にはこの傘一本しかなかったわよ」
そういえばそうだった。長年、事務所には俺一人しか住んでいなかったし、雨が降ったところで傘なんてまともに使った記憶がなかった。
それならなぜ、さっさと歩いて事務所に帰らなかったのかというと、今日は流石に人通りが多い街中だったせいか、雨に濡れて帰る姿を晒すことに気が引けてしまったのだった。

いや、もしかしたら心のどこかで期待していたのかもしれない。
お前が、迎えに来てくれることを。
「ダンテ?どうしたの?」
……ん、いや」
俺はトリッシュから傘を受け取ると、彼女の肩をそっと抱いて引き寄せた。
そんな俺の仕草に、トリッシュは首を傾げた。
「ダンテ?」
「お前が雨に濡れないように」
「あら、お気遣いありがとう」
トリッシュが俺の腕に自身の腕を絡み付けたと同時に、俺たちは雨が降り注ぐ街へと歩き出していった。


END