癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2022-12-18 23:33:58
5336文字
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怯える二人に愛の贈り物を③

ダンテがネロとキリエにプレゼントした物とは……?


ダンテからネロとキリエへ贈られた物。
それが一体何なのかと二人は一緒に確認するまでの間、互いに待ち遠しい気持ちでいっぱいになっていた。



【怯える二人に愛の贈り物を】③


ダンテがフォルトゥナを去った頃、キリエは孤児院での仕事を済ませ、日が落ちる前にネロが待つ自宅へと帰っていた。
「ネロ、ただいま。昨夜、ダンテさんがいらしたみたいね。ダンテさん、帰る前に孤児院に寄って行ったの。少しだけだけど、そこでお話したわ」
「お帰りキリエ。ったく、ダンテの奴、来て早々コレだもんな。俺が起きないうちにさっさと出て行っちまって……
そう言うとネロは呆れたように小さく溜め息をついたが、何処か寂しげな表情を浮かべていた。
「あんまり無駄に長居しないところが、ダンテさんらしいわね」
「だな。まぁ、キリエも会えたならよかったよ」
「うん。それと、料理がお口に合ったようで嬉しかったわ。でも、私の料理だけじゃ少なくなかった?男の人2人分も作ってなかったから……
「あぁ、それなら心配ないよ。余ってる材料使って、俺が追加で色々作ったから」
「そう、それなら良かったわ。ありがとうね、ネロ」
キリエはネロに軽くお礼を言った後、ネロの頭を優しく撫でた。
そんな彼女の仕草に、ネロは恥ずかしさから目を静かに閉じた。
「そんな、大した事ねぇよ。適当に材料炒めただけだし」
「ううん、いいの。余ってる材料使い切りたい所だったから。本来ならば私が家に帰って色々とやらなければいけなかったのに……
「いや、キリエは孤児院の方で忙しかっただろ?そんな時は変に家の事を気遣わなくていいし。家事とかだって、ある程度俺がやっとくし」
だから心配すんな、と言うように、ネロはキリエの肩にそっと手を触れた。
その時、キリエの手に小袋が握られてるのが目に入った。それが何かと疑問に思い、ネロは彼女に尋ねた。
「キリエ、それ……どうしたの?」
「ん……?え、ぁ、コレ?この小袋の事?」
「あぁ」
「ぇっとね……、ダンテさんから頂いたんだけど……
「ダンテから?」
「うん。何か、「出来ればネロと一緒に見てほしい。ネロと同じ物をあげてるから」って……
「俺と一緒に……俺と同じ物……
キリエの言葉に、ネロはハッとした。
「そういえば……
そして、ソファーの背もたれにかけてあった自身のコートのポケットを探った。
そこには、キリエが手に持っている物と同じデザインの小袋が入っていた。
「あら?ネロもダンテさんから何か貰ってたの?」
「あぁ。俺も、「キリエと一緒に見てくれ」って、置き手紙に書いてあったんだ」
「そうだったのね。一体、中身は何なのかしら」
「さぁな。ダンテの事だから、イタズラで変な物が入ってる可能性も無くは無いけど」
「まさか。いくらダンテさんでも、そんな事しないと思うわ」
……だといいけど」
「とりあえず、一緒に開けてみましょう?」
「そうだな」
二人は小袋を結んであるリボンを指で摘むと、それをそっと解いた。そして、小袋の中から中身を取り出した。中には更に、小さな箱が入っていた。小さな箱だが生地の素材が良く、どこか高級そうな雰囲気を漂わせていた。
「何かしら……
「箱を開けたら更に箱……なんて事はないよな……
ネロのその言葉に、キリエは苦笑いした。
「ネロ、ダンテさんの事そんなに疑わなくても」
「ハハ……つい」
「でも、もしかしたらダンテさんの事だから……
「キリエこそ、多少疑ってるじゃないか。ダンテの事」
「ふふっ。今のは内緒にしてね」
「うーん、それは分からないな」
「ええっ……?」
「ハハ、冗談だよ。言わないって」
「もぅ……
「それより、早く箱の中身見てみないか?ダンテに文句言うのは確認してからにしようぜ」
「うん、そうね」
そして二人は、互いに手に持っている箱の蓋を掴むと、そっと開いていった。
そこには……
……コレって」
「ぇ……指輪……?」
そう。箱の正体は指輪用のケースだった。
開けた瞬間、指輪に付いている小さな宝石が二人の瞳をキラッと照らした。
「綺麗……凄く高級そうな指輪ね」
「こんな高そうなもの、今のダンテが買えるとは正直思えないんだが……
一体どう言う事なんだろうと思った矢先、ネロが持っている指輪のケースの裏側に小さな紙が畳んで貼り付けられている事に気付いた。
ネロはそれをそっと剥がすと、紙を広げた。確認するとそれは、ダンテからの手紙であった。ネロとキリエは何が書いてあるのだろうと思い、二人で一緒に手紙を覗き込むように読んでいった。



[坊やと嬢ちゃんへ

ちゃんと二人で一緒に中身を確認してくれたか?
まぁ、もし我慢出来なくてどちらかが先に中身を見てしまった時は、しょうがないって事で。

中身は見ての通り、指輪だ。
指輪と言っても、その辺に売ってるような物じゃないぜ。

ちなみに、俺が買った物でもない。
分かっているとは思うが、俺にはこんな高級そうな指輪買えないからな。
それならなぜ、指輪をプレゼントされたか疑問に思うだろうな。

この指輪はな、俺の母さんと父さんの婚約指輪なんだ。

結婚したあとは結婚指輪を指に着けていたから、
婚約指輪を外した後、箱に入れて大切に保管していたらしい。

ちなみに何で持ち歩いてたかというと、形見の品なので定期的にメンテナンスをしてもらっている店があるんだが、フォルトゥナに寄る前に受け取りに行ってたからなんだ。
ま、この話はいいか。

俺の家が悪魔に襲撃された後、俺は少しでも母さん達の遺品が手元に欲しくてな。
荒れ果てた我が家を探索していたところ、母さんと父さんの寝室から見つかったんだ。

それで、いつか俺に婚約者が出来た時にでも使わせて貰おうかと思っていたんだが、どうやら俺にはそんな予定が無さそうでな。
それで、お前達二人にプレゼントって訳さ。

大切にしてくれよ。
何せ、俺の母さんと父さんの指輪だからな。
お前達二人なら、大切にしてくれるって信じているからな。

それと、坊やの方には母さんの指輪、嬢ちゃんの方には父さんの指輪を渡してある。

意味は、分かるよな?

それじゃあ、いつまでも末永くお幸せに。


ダンテ]


ダンテからの手紙を読み終えたあと、ネロとキリエの間には暫くの間沈黙が流れた。

その沈黙の後、ネロはダンテからの手紙を丁寧に畳んでテーブルの上に置くと、キリエの左手をそっと握った。
「ネロ?」
ネロの仕草に、キリエは首を傾げた。
……なぁ、キリエ」
「?」
「分かってると思うけど、コレさ……互いに指輪をプレゼントしてくれ……って事だと……思う」
そう言うとネロは、キリエの左手を握りながら指先で彼女の薬指を撫でるように触った。
そんなネロの手触りに、キリエは指先から熱が身体中に伝って来るのを感じた。
「うん……そうね。私もそう思う……
「全く、ダンテにしてはロマンチストというかなんていうか……
しかし、そんな所もダンテらしいなと思ったネロは、ダンテから授けられた指輪を慎重に手に取ると、キリエと向き合った。
「ほら、せっかくだし、アイツの期待に応えようぜ」
「そうね。でも……
……?」
「もし、薬指にサイズ合わなかったらどうしよう……って、ちょっと不安で……
「それはそれでしょうがないさ。何せ、ダンテの母さんの指輪な訳だし。もし薬指に合わなくても、他の指に着ければいいさ。それに……
……
「薬指の指輪は、その時が来たらその……俺がちゃんとプレゼントするよ」
そういうとネロはどこか照れ臭くなったのか、指先で鼻の頭を軽くかいた。
そんなネロの様子を見たキリエは、嬉しさと恥ずかしい気持ちが溢れ出し、両手で大きく包み込むようにネロの大きな身体に抱きついた。
「ありがとう、ネロ。その時を……今は待っているね」
……あぁ」
2人は見つめ合い触れるだけの口付けを交わすと、
互いの気持ちを感じ合うように強く抱きしめあった。
……ネロと触れ合うの、なんだか久しぶりな気がする」
「そうだな。キリエも俺も、街の復興とかで色々忙しかったもんな。やっと色々落ち着いてきた……ってところだな」
「そうね。こうして2人でゆっくり過ごす時間がやっと……
キリエはそういうと、更にネロに強く抱き着いた。
一緒に住んでいるため、決して2人きりの時間がない訳ではなかった。しかし、あの事件以来街はボロボロに壊れ、教団も崩壊。親を亡くした子供たちもいた。
街自体の復興が忙しかった事もあるが、何よりフォルトゥナの人々の心のケアの方が大変だった。
キリエは孤児院にほぼ毎日通い、朝早くから夜遅くまで、時には泊りがけで親を亡くした子供達と接して、母親の代わりを務めていた。
ネロは街の復興を手伝いつつ、教団が崩壊して行き場を無くした人達を励ましたりなどする日々だった。時には厳しい言葉をかけ、疎まれる事もあった。
そんな心身ともに忙しかった日々も落ち着いてきて、今、2人だけでゆっくりと過ごせる時を少しでも噛み締めようと更に強く抱きしめ合った。
そして、ある程度互いの温もりを感じた頃、2人は指輪の存在を思い出した。
「ぁ、そういえば指輪……
「ハハ。危うく忘れるところだったぜ」
強く抱きしめ合ってたネロとキリエは一旦離れると、それぞれ指輪を手に持った。
……どうしよっか」
「ダンテさんのお望み通り、しましょうか?
……指輪交換」
「そうだな」
ネロがそう言ったあとお互い照れ臭くなったのか、一瞬俯いた隙に2人して笑みを浮かべた。
「何か、恥ずかしいな」
「ふふ、そうね。でも……
キリエはネロの左手をそっと手にとった。
「この恥ずかしさを、乗り越えないといけない時が必ず来るわ。ネロも、そして私も……
そう言うとキリエは、ネロの左手の甲にしっとりと吸い付くように口付けをした。
そして、ネロの左手の薬指をそっと掴み、手に持っていた指輪をそこに着けていった。

……うん。よかった」
キリエからネロへと送られた指輪。元々はダンテの父スパーダの物だったが、ネロの指のサイズにピッタリとはまった。
「素敵よ。ネロ」
キリエは再び、ネロの左手の甲に口付けをした。
流れ作業のように指輪を装着された事に少しばかり戸惑ったネロだが、自身の指に光る指輪を見つめて幸福感に満たされた。
そして、その流れに続くようにネロもキリエの左手を手に取ると、彼女と同じように手の甲に口付けを行った。少しばかり、吸い付くように。
……っ」
先程、自身が行った行為と同じ事とはいえ、ネロの唇の感触にキリエは恥ずかしさのあまり息が止まりそうになった。
恥ずかしさを乗り越えないといけないと口に出したばかりだったが、身体が熱くなるのを抑えることが出来なかった。
しかし、それを何とか抑え込もうと、キリエはギュッと目を瞑りながら俯いた。
「キリエ、大丈夫?」
そんな彼女の様子を少しでも落ち着かせようと、ネロは優しく背中を摩った。
ネロのその行為によってキリエはハッと我に帰り、ネロの方を見つめ直すとゆっくりと深呼吸をした。
「ハァっ……。ごめんなさいネロ 、大丈夫よ」
「うん、ならよかった」
……
「あのさ、キリエ……
……
「俺は、恥ずかしがるキリエ……大好きだよ」
……ぇ」
「確かに、恥ずかしさを乗り越えて勇気を出さないといけない事もあるかもしれない。だけどその……上手く言えないけど、恥ずかしがるキリエが可愛いから……その……
そう言葉を発しているネロの顔が赤く染まっていくのを、キリエはジッと見つめていた。
「俺はさ、キリエの全ての感情を受け止めたいというか……我慢しないで欲しいかな、色々と。その、声に発して色々伝えて欲しい。……その時が来たら」
その時……。その意味を、キリエは直ぐに理解した。いつか、ネロと繋がる時。
キリエはネロの想いをしっかりと受け止めると、澄んだ瞳で彼を見つめ、静かに頷いた。
そんな彼女の様子にどこか安心したのか、ネロは優しく笑みを浮かべながら再び彼女の左手を取り、手に持っていた指輪を薬指へとそっと着けた。
……うん、ピッタリだな」
ネロからキリエへと送られた指輪。元々はダンテの母エヴァの物だったが、キリエの指のサイズにピッタリとはまった。
「綺麗だな」
彼女の細くて繊細な指に光る指輪もだが、何より薬指に光る指輪を嬉しそうに見つめている彼女の微笑みが美しかった。
「キリエ……
そんな彼女を心の底から愛おしく思ったネロは、包み込むように抱きしめた。
そんなネロの想いに応えるように、キリエもネロの広い背中に手をまわした。
再び強く抱きしめ合う2人。片時も離れたくない想いが募り、指先にギュッと力を入れる。
……愛してる)
窓から差し込む夕日の光によって指輪の輝きが増したと同時に、互いを想う気持ちが一筋の雫となって頬を伝った。




to be continued……