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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2021-03-18 19:33:48
5637文字
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2人の春はここから……
スラムダンク。花道→晴子→流川、花道→←晴子
みたいな感じです。
湘北高校卒業式の日の出来事。
雰囲気は切ないけど、初々しくて心がくすぐったくなるような作品にしました。
花道が大人しい気がする?w
細かい設定は大目にお願いします……!
3月。
卒業。別れの季節。
入学してからの高校生活3年間、あっという間だったと誰もが感じるであろう。
もちろん、湘北高校バスケットボール部員である桜木花道や流川楓、マネージャーの赤木晴子もそう感じていた。
今日は、湘北高校の卒業式だ。
式の進みは順調だった。各クラス代表が卒業証書を受け取り、各クラスの担任にお礼の言葉を述べ、歌を歌い、涙しながら体育館を後にし、教室に戻る。
そして、教室で最後の思い出作りをし、その後は仲のいい友達と写真を撮ったり、ご飯を食べに行ったり等、各自卒業式の余韻を楽しんでいた。
一方、部活動に所属している者たちは、後輩の部員や顧問の先生に最後の挨拶をするため各部で集まっていた。
もちろん、バスケットボール部も同様。
桜木花道含め、バスケットボール部の3年生と2年生と1年生、マネージャーや安西先生やその他の顧問が全員体育館に集まっていた。
3年生の卒業に涙する1年生や2年生。一方、湘北高校バスケットボール部と別れる寂しさに涙する3年生もいた。
普段から無愛想な流川も、この日はどこか寂しそうな表情を浮かべていた。
そして、各自別れの挨拶などをし、名残惜しい気持ちを残しつつ、3年生は湘北高校の体育館を去って行った。
体育館を出て校門まで向かおうとした時、花道は晴子の姿が無いことに気が付いた。
(あれ?晴子さん、何処に行ったんだ?ついさっきまで一緒にいたんだけどな)
念のため、一緒にいた同期の元バスケ部員の仲間に尋ねてみたが、他の人達も気が付いたら晴子の姿を見ていないとの事だった。
しかも、流川の姿もいつのまにか消えている。
「流川くんの事だし、とっくに帰ったのでは」
と言われたが、晴子と流川、2人が同時にいなくなるなんて、花道は何処か気が気じゃなかった。
「
……
悪い。俺、ちょっと晴子さん探してくる」
花道はそう言うと、元部員の仲間達に軽く手を振って再び校舎の中へと向かおうとした。
しかしその時、タイミングがいいのか悪いのか、桜木軍団こと水戸洋平達が目の前に現れた。
「あれ?花道じゃねーか。もう、バスケ部の挨拶は終わったのか?」
「洋平
……
。あぁ、それならもう終わったんだが
……
」
「なら、一緒にどこか飯でも行こうぜ?高校卒業したら、流石にこうして5人で集まる事も難しくなるだろうし」
「
……
」
洋平の誘いは嬉しかったが、花道はどこか浮かない顔をしていた。
そんな花道の様子が気になり、他の桜木軍団のメンバーも花道に話しかけた。
「どうした?花道?なんかあったか?」
「その
……
晴子さんをちょっと、探してて
……
」
「え?晴子ちゃん?晴子ちゃんなら、とっくに帰ってたぜ?」
「え?本当か?大楠
……
」
花道は、目を見開いた。
「ああ。急いでる様子で、足早に校門出てった感じだったぜ。何か用事でもあるんじゃねぇか?」
だとしても、バスケ部への挨拶の後、急にいなくなる事に花道は疑問を抱き続けていた。
晴子の事だし、何か一言あってもいいはずだ。
「
……
ちなみに、流川は?アイツの事、何か分かるか?」
「流川?
……
あぁ、アイツならまだ学校にいた気がするけど。なんか、女子達に追われてて逃げてたっけな?」
「そうそう!親衛隊が追いかけてた!」
「流石の流川も、めちゃくちゃ焦った顔して逃げてたよな!」
「いやぁ〜!最後に珍しい物見させて貰った気がするよな!」
「
……
そっか」
桜木軍団のメンバーが流川の話で盛り上がってる中、
花道はやはり浮かない顔をするばかりであった。
そんな花道の様子を察したのか、洋平は他の3人が会話で盛り上がっているのをよそに、花道に話しかけた。
「花道、何か気になってるんだろ。晴子ちゃんの事」
「
……
」
花道は、静かに頷いた。
「なら、行けよ。卒業してから暫くは時間ある訳だし、飯はまた今度ゆっくり行こうぜ」
「洋平
……
」
「ほら、早く行けよ」
「
……
サンキュ」
花道は洋平に軽く頭を下げた後、相変わらずワイワイ騒いでいる桜木軍団のメンバーをよそに、校門を出て走り去って行った。
「
……
頑張れよ、花道」
花道が出て行った校門を暖かい眼差しで見つめながら、洋平は静かに呟いたのだった。
***
湘北高校を後にした花道は、思い当たる場所をひたすらまわり、晴子の事を探していた。
「晴子さん、もう帰ったのかな
……
」
湘北高校の卒業生が集うファミレスを覗いたり、2人でよく行ったバッシュの店も覗いたりしてみたが、晴子の姿は見当たらなかった。
卒業式が終わってから時間も経ったことだし、もう家に帰ったのだろうかと、花道は軽く肩を落とした。
(また今度、ゴリの家に行くついでにでも晴子さんに会えたらいいな
……
)
花道はそう思うと、ギュッ
……
と苦しくなる胸を抑え込みながら、重たい足取りで帰路を歩き始めた。
***
(少し、遠回りして帰ろう)
帰宅し始めて暫く経ったが、花道は気持ちを落ち着かせたい事もあり、のんびり寄り道をしながら帰路を歩いていた。
トボトボと歩いている途中、花道は公園の前へと立ち止まった。
(そういえばここで、リョーちんと色々話して、それで色々和解したんだっけな。そう、あそこのブランコに座って
……
。
……
ん?)
花道が公園のブランコへと視線を移した時、見慣れてる後ろ姿が目に入った。
ブラウンのミディアムヘア、湘北高校の制服を着た1人の女性が、ブランコに座っていた。
(あれは
……
もしかして晴子さん?)
ずっと探していた彼女
……
晴子かは確信しきれてないところもあるが、恐らく晴子であろう。
花道は、高鳴る鼓動を必死に抑えながら、その人物の元へと歩み寄って行った。
そして、花道は顔を俯かせながらブランコに乗っている彼女へと、そっと声をかけた。
「あの
……
晴子
……
さん?」
「!
……
ぇ、あ
……
ぇ
……
さ、桜木くん?」
その女性はやはり、晴子だった。
声をかけられたことにより一瞬ビクッと身体を跳ねさせたが、相手が花道だった事を知ると、ホッと胸を撫で下ろした。
「桜木くん、どうしたの?こんな所で
……
」
「こんな所で
……
って。帰宅してる途中というか、その
……
晴子さんの事探してたんですよ」
「え?私の事を
……
?」
「はい
……
。だって晴子さん、挨拶もなしに急にいなくなったので
……
。晴子さんこそ、なんでこんな所に
……
」
花道がそう言うと、晴子は再び俯いた。
「
……
桜をね、見たかったの」
「桜?」
「うん。ここの公園、この時期になると桜が咲き始めるの。他の桜より少し早くね。まだ咲き始めたばかりだけど」
そう言うと晴子は、公園の隅にある桜の木を指差した。
それにつられて、花道も桜の木に視線を移した。
「桜が散る時って、凄く綺麗でしょ?沢山の花吹雪が舞って。でも、どこか切なくて
……
。だから私、咲き始めたばかりの桜が好きなの。咲いたばかりで、これから精一杯満開になって
……
!
……
そんな感じが好きなの」
「
……
」
「
……
でも、結局最後は散ってしまうのよね」
そう言うと、晴子は再び俯いた。
そんな彼女の様子が気になったのか、花道は晴子が座っている隣のブランコに自身も腰をかけた。
そして、俯いている彼女の横顔をジッと見つめた。
(晴子さん
……
目が腫れてる
……
)
何かあったのだろうか。
晴子の事が気になった花道は、彼女に話しかけようとした。
しかし、花道が話しかける前に、晴子が話し始めた。
「桜木くん、私ね
……
」
「
……
」
「卒業だし、最後だし
……
。流川くんに、告白したの。
……
そしたらね」
「
……
」
「
……
振られちゃった」
「
……
」
「
……
」
「
……
そうだったんですか」
晴子の話を聞き、花道はようやく理解した。
バスケ部への挨拶の後、晴子と流川の姿が見えなくなったのは、晴子が流川を呼び出して告白してたからだった。
流川の事だ。きっと、冷たく振ったに違いない。
花道は流川への怒りが込み上げて来そうだったが、今はそれをグッと抑えた。
「
……
分かってはいたの。流川くん、私になんて興味ないって」
「流川、バスケしか興味ないって感じだったすからね
……
」
「あはは
……
そうね。それが流川くんらしいもの」
「
……
」
「でも
……
流川くん、優しい人なのよ」
「ぇ?そうすか?」
「うん
……
。告白して、断られちゃったけど、
「ごめん。でも、サンキュー」って」
「
……
それだけ
……
すか?」
「うん。それだけ」
「何だ
……
。俺はてっきり、あのキツネがもっと酷いことを晴子さんに言ったもんだと
……
」
「やだ
……
そんな事ないよ」
「だって晴子さん、凄い目腫らして
……
」
「そりゃぁ
……
片想いの期間が長い分、いざ振られるとショックが大きいもの」
「
……
そう、ですよね」
何か、もっと励ましの言葉をかけてあげたかった花道だったが、大分泣いたであろう彼女の顔を、横から見つめる事で精一杯だった。
そんな花道の視線に気づいたのか、晴子は花道の方へ顔を向けると、力無い笑顔で微笑んだ。
「桜木くん、ありがとうね。話聞いてくれて」
「晴子さん
……
」
「1人でいたいなぁ
……
って思っていたけど、本当は誰かに聞いて欲しくて、寂しかったの」
「
……
」
「そんな時、桜木くんが現れてくれたから、私
……
凄く嬉しかった。
……
本当に、ありが
……
っ
……
ぅぅ
……
」
晴子はそこまで言うと、再び涙を流して俯いてしまった。
声を押し殺すように泣き、肩を小さく震わせていた。
そんな晴子の様子を見て、花道は思った。
自分は、彼女の笑顔が見たい。
出来る事なら、悲しんだり泣いたりしないでほしい。
でも、その悲しみを自分なら受け止める事が出来る。
自分なら、彼女を悲しませない。
彼女の事を、笑顔に出来る。
彼女の事を、守る事が出来る。
彼女の事を
……
(晴子さん
……
)
花道の決意は、固まった。
「晴子さん
……
俺じゃ、ダメすか
……
?」
「
……
」
「
……
」
「
……
ぇ」
一瞬、何を言われたか分からなかった晴子。
理解した後は驚きを隠せず、目を見開いて花道の方へと視線を移したが、花道はそのまま話し続けた。
「俺、ずっと晴子さんの事見てきたんです。晴子さんの事
……
大好きなんです」
「桜木くん
……
」
「最初はその
……
晴子さんに好かれたくてバスケ始めたけど、そのうちそんなの関係なくバスケが大好きになったんです」
「
……
」
「俺、高校卒業してもバスケやります。これからもずっと。一生やります」
「
……
」
「晴子さんが大好きなバスケを、俺も大好きになれた事、誇りに思ってます」
「
……
」
「バスケが上達する度に一緒に喜んでくれた晴子さんがいたからこそ、俺はここまで来れたんです」
「
……
」
「だから、もっともっと上手くなって、俺は晴子さんを喜ばせてあげたい。晴子さんの笑顔が見たい」
「桜木
……
くん
……
」
「晴子さん
……
俺じゃ
……
ダメですか
……
?」
「
……
」
晴子は、花道の熱い視線から逃れる事が出来なかった。
それどころか、どんどん彼の瞳に心も身体も吸い込まれていくような感覚になっていた。
(桜木くん
……
こんなにも
……
)
晴子は、花道と出会った時から今までの事を思い出していた。
がむしゃらに、初心者なりに一生懸命バスケに熱中する姿。
そんな彼が、いつも側にいてくれた。
それが当たり前だったためか、晴子は花道の存在の大きさに今まで気が付いていなかった。
いや、気が付かない振りをしていたのかもしれない。
自分は、流川にずっと片想いをしていて、いつも自分を見つめてくれていた花道の想いを無意識に避けていたのかもしれない。
花道との心地良い関係を、壊したくないばかりに。
だけど、今は違う。
こうして、真っ正面で彼と向き合う事が出来る。
彼の気持ちを、感じ取ることが出来る。
(私の、本当の想いは
……
)
晴子は、自身が座っているブランコからそっと立ち上がり、花道の正面へと移動した。
「桜木くん、私
……
」
そして、花道の手を取ってその温もりを感じるようにギュッと握りしめながら、彼の瞳をジッと見つめて、声にならない声と共に熱い想いを吐き出した。
***
花道と晴子が公園で過ごしてから暫く経ち、辺りが暗くなって来たため、花道は晴子を自宅へと送っていた。
「いやぁ
……
それにしても、卒業まであっという間でしたね」
「そうね。桜木くんも、まさか高校3年間でこんなにバスケが上達するなんて、ビックリでしょ?」
「ハハハ!いやぁ〜俺は天才ですから!」
そう言っていつもの調子で笑い狂う花道を見て、晴子はクスクス微笑んでいた。
そんな他愛ない会話をしているうちに、晴子の自宅前へと辿り着いた。
「桜木くん、送ってくれてありがとうね!
……
あ、花道くん
……
の方がいいかな?」
「え!?ぁ
……
そ、その、ど、どちらでもいいっすよ
……
!は、晴子さんが呼びやすい方で
……
!」
「
……
ぅん、慣れるまで時間かかるかもしれないけど
……
ゆっくり
……
ね?」
「そ、そうですね
……
ゆっくり
……
」
「うん。ここまで来るのもゆっくりだったから、焦らず
……
ね?」
「は、はい
……
焦らず
……
」
「
……
」
「
……
」
「じゃ、またね。さ
……
じゃなくて
……
は、花道
……
くん
……
!」
「あ、はい
……
!また
……
!」
花道は、晴子が自宅に入って行くまでを見届けたあと、名残惜しい気持ちを感じつつ自身の帰路を
歩き始めた。
***
(
……
)
嬉しすぎて言葉が出ないとは、こう言う事なのだろうかと、花道は思いながら歩いていた。
(
……
明日、電話してみようかな)
だけど、晴子の兄であるゴリが電話に出たらどうしよう。だが、それはそれで良しとしよう。
(
……
っ!晴子さん
……
!)
高鳴る鼓動を抑えきれず、花道は全身でその想いを溢れ出させるように全力で走りだした。
了
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