癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2021-02-06 23:54:39
3739文字
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眠れる女神に口付けを

ネロキリ。
ちょっとだけ夜這いネタ的な。
キス魔風なネロ。

【眠れる女神に口付けを】


シャワー後、髪の毛を乾かし終わったネロは、リビングのソファに腰をかけると水を一杯飲み干した。
時刻は日付が変わる頃。キリエは、とっくに眠りについていた。
一方ネロは目が冴えている状態で、眠りたくても眠れないでいた。
「仕事帰りで疲れてはいるんだけどなぁ。逆に体を動かしすぎたせいか……
疲労が溜まり過ぎると、逆に眠れなくなる場合がある。ネロは正に、その状態だった。
明日は依頼も何も予定がないのが幸いだったが、できることならなるべく早く眠りにつきたい。
「とりあえず、部屋に戻るか」
ネロはソファから立ち上がりコップを台所に置くと、リビングを後にした。

***

(やけに足取りが重い……
ネロは二階の部屋に向かう途中の階段で、疲労困憊な自分に苦笑いした。
(まったく、こんなんじゃデビルハンターなんて名乗ってられねぇな……
悪魔の血が流れているため、普通の人よりは体力や戦闘力があるネロだが、ごく稀に疲労が自身の体を襲うことがある。
(基礎体力のトレーニング、もっと取り入れるか)
ネロはそう考えているうちに自室の前へと辿り着き、扉を開こうとした。その時、向かいにあるキリエの部屋の扉が、少し開いているのが目に入った。
ネロはその扉を閉めようと思い、キリエの部屋の扉へと手をかけた。だが、ネロの手元が狂ってしまい、扉を閉めずに逆に大きく開けてしまった。その勢いで、ネロはキリエの部屋の中に踏み込んだ。
(うわ……やべ)
物音を立ててしまったことに内心焦ったが、恐る恐る寝ている彼女の様子をうかがうと、幸いにもぐっすりと眠ったままだった。
……よかった)
ネロはそのことに安心すると、小さく息を吐いた。
(それにしてもキリエ、珍しく寝相悪いな)
普段は規則正しい姿勢で大人しく眠っているキリエだったが、珍しく横向きの体勢で眠っており、布団をまるで抱き枕のように両手、両脚でガッシリと掴んでいた。
(ちゃんと布団かけないと、風邪引くぜ?)
そんなキリエの姿を見たネロは、彼女が眠っているベッドへとそっと近付いていった。
そして、起こさないように慎重に彼女を布団から引き離すと、ベッドに仰向けで寝させ、体に布団を掛け直してあげた。
その行動のせいか、一瞬モゾモゾと動くキリエ。
ネロは起こしてしまったかと思い一瞬焦ったが、キリエは再びぐっすりと、大人しく眠りについた。
(それにしても、よくこんなふうにぐっすり眠れるよなぁ……キリエ)
そう思いながらネロはベットの横にしゃがむと、キリエの顔を見つめながら優しく頭を撫で始めた。
(寝顔も可愛いな、キリエ。髪の毛も柔らかいし……
天使……いや、正に女神。
ネロは愛しい彼女の寝顔を見つめながら、そう思った。
(まつ毛も長いし、肌も綺麗だし、唇も……
ネロは指先で彼女の唇にそっと触れた。
……キスくらい、してもいいよな)
これだけぐっすり眠っていれば、触れるくらいの口付けならそう簡単には起きないはず。
ネロはベッドの横でしゃがんでいた体をそっと起こすと、キリエの顔を覗き込みながら彼女の唇に自身の唇を重ねた。
一秒ほど、触れるだけの口付け。
しかし、これだけでは物足りなくなったのか、ネロは再びキリエに口付けをした。今度は、先程よりも少し長めに。
……本当に、起きねぇな)
さすがに今ので少しくらい起きるそぶりを見せてもいいだろうと思ったネロだったが、キリエは相変わらずぐっすりと眠っているままだった。
そんな彼女の様子を見て、ネロは悪戯心に火がついたのか、今度は唇以外にも瞼、頬、そして首筋へと口付けをして、様子をうかがった。
だが、それでも起きるそぶりを見せない。
こうなったら、深く長い口付けでもしてしまおうか。
ネロはそう思うと、キリエが眠っているベッドの上へとそっと乗り、布団の上から彼女を組み敷いた。
ネロの重さが加わったことによりベッドが軋む音が部屋に響いたが、それでもキリエは起きなかった。
……こんなことバレたら、キリエに叱られるだろうな)
そうは思いつつ、彼女への悪戯心を抑えられないでいるネロ。
(もしコレで起きたら、キスの続きでもするか……なんて)
ネロは、再びキリエに口付けをするため、ゆっくりと顔を近付けていった。
今度は少し長めに、自身の体重と共に唇を押し付ける。
すると、何か違和感を感じたキリエが声を漏らしたのが聞こえた。
ネロはさすがに起きただろうと思い、体をゆっくりと起こすと彼女の様子をうかがった。
だが、キリエは再び規則正しい寝息をたてて眠りについた。
……マジで起きねぇ)
こうなったら、もっと激しく濃厚な口付けをするべきか。
起こすのは悪いと思いつつ、起きてほしいような起きてほしくないような。
しかし、ここまで来たら己の悪戯心には敵わないネロ。
(さてと、どこまでイケるのだろうか……
ネロは指先でキリエの唇に隙間を作ると、そこに自身の唇を押し付け、彼女の口内へと舌を挿入していった。
すると、ヌルッとした感触と共に息苦しさを感じたのか、キリエは呼吸を整えようと無意識に口を開いた。
ネロはその隙を狙い、更に深く口付け、舌を濃厚に絡めた。
「んっ……!っ……はぁ……
(やっと起きたか……
ネロはキリエが起きたことを確認すると、ゆっくりと体を起こしていった。
「はぁ……はぁ……。え、ネロ?な、なに……?」
キリエは状況を理解していないらしく、自身の体に跨っているネロを見上げるので精一杯であった。この息苦しさは何だろうと、疑問を感じながら。
「おはよう、キリエ」
「おはようって……まだ夜中じゃない。もう、一体どうしたの?」
キリエは寝ている体をゆっくりと起こし、ネロと向かい合うようにベッドの上に座った。
「何か、怖い夢で見たの?」
「いや、そういうわけではない」
「なら、どうしたの?」
「別に。キリエにキスしてただけ」
「そう。……え?今、なんて……
「だから、キリエにキスしてただけ」
……
……
……眠っている、私に?」
「うん」
……何回くらい?」
……百回とか?」
「?!もう……!この際、数なんてどうでもいいけど、こんな夜中に……
キリエは起こされたことに対して、少々不機嫌な表情を浮かべながらため息をついた。
そんなキリエの様子見たネロは、一言「ごめん」と謝ると、彼女の額に唇を落とした。
「あ……今ので百一回目?」
……!ネロったら……!」
今のは無意識とはいえ、実際何回目か分からない口付けに、キリエは声を上げた。
別に、ネロの行為が嫌というわけではないが、夜遅くに何の理由もなく起こされてしまったことに、少々腹を立ててしまった。
そんな彼女の様子を見て、さすがに申し訳ない気持ちが湧いたのか、ネロは両手を合わせた。
「ごめん……。ちょっと、調子に乗りすぎた」
「いくら何でも、悪戯が過ぎるわよ。もう、せっかくいい夢見てたのになぁ……
そう言うとキリエは、布団をかけながらベッドに体を倒した。それに続くように、ネロも布団の上から彼女の隣に体を倒す。
「だから、ごめんって……。悪かったよ、本当……
……うるさい、早く寝て」
そこまで本気で怒ってるわけではないが、キリエは少し拗ねるように首を横に向けてネロから視線を外した。
そんな彼女の様子を見てネロは小さく息を吐いた。
「はいはい。もう寝るから、明日までには機嫌直してくれよ……
そう言うとネロは、ベッドからゆっくりと体を起こし、そのまま立ち上がって自室へと戻ろうとした。
だがその時、キリエがネロの服の裾を指先でそっと掴んだ。ネロはどうしたのかと疑問に思い、首を軽く傾げると彼女の方へと向いた。
……ねぇ、ネロ」
キリエはネロの服の裾を掴んだまま、彼の瞳をジッと見つめた。
「私が見てた夢……聞いてくれる?」
キリエの言葉に、ネロは静かに頷いた。
「夢の中でね、私……深い眠りについていたの」
……
ネロは真っ直ぐと自身を見つめてくるキリエの瞳に吸い込まながら、彼女の話へと耳を傾けた。
「深い森の奥にベッドが置いてあってね、そこで私……眠っていたの」
……
「でも、意識はあった。なのに、目覚めることが出来なかった。……凄く、怖かった」
……
「そしたらね、誰かが近付いてくる気配を感じたの。私の側に近寄って、私の髪の毛をそっと撫でて……
……
「目を閉じていたから分からなかったけど、その人の顔が私の顔に近付いてくるのを感じたの……
……
……きっと、キスしようとしたんだわ」
キリエがそこまで話すと、ネロは再び布団の上から彼女の上に跨った。
「昨日孤児院でね、王子様のキスで目覚めるお姫様のお話を読んだの。その影響かな……って」
……かもな」
……ねぇ、ネロ」
「ん……?」
「夢の続き、してくれる?」
……
「そしたら、許してあげる……
「あぁ、もちろんさ」
ネロのその言葉に、キリエはそっと目を閉じた……


(仰せのままにお姫様。……いや、女神様)



END